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オープンキャンパス

次女と大学のオープンキャンパスに行ってきた。

長女が通うことになるかもしれないと思い、私も行ってみようと思った。

受験生の長女からは「私は1人で行くから」とすげなく返されたので、普段出かけることの少ない次女を誘う。

行ってもいいよ、との返事だったので、早速私はネットから参加の予約をした。

参加する日時を登録し、確認メールが届く。

メールのURLをクリックすると、アプリ画面のようなページが出てきて、受講証や参加証が提示され日時が確認できた。

「今は何でもスマホだね、私やパパの時代、オープンキャンパスなんてあったかな」なんて娘たちに自分の時代を話そうとすると、長女が私からお説教の匂いを感じ取って、すかさず「ジェネギャ」と返してきた。

当日、大学のある駅に着くと、車内アナウンスが「本日は〇〇大学のオープンキャンパスがございます。ご参加の方はこちらでお降りとなります」と流れた。

自分の受験までに、まだ余裕のある次女と、普段入りにくい場所に赴く期待でいっぱいの私は、さながらテーマパークに向かうような軽い足取りで電車を降りた。

駅から大学までの道のりは、私たちのような親子二人連れがチラホラいた。
次女と、みんな同じところに向かいそうだねと、話しながら大学に着いた。

まるでオシャレなオフィスビルのようだった。
ここに入っていいのかな?と、ちょっとたじろいでしまう。

入り口の脇に並んでいた、お揃いのポロシャツを着た大学生たちが、爽やかに「こんにちはー!」と私たちを出迎えた。

私と娘は、キラキラと眩しく見える大学生に少し気後れしながら、おずおずとキレイで立派な校舎に入っていった。

デザインを感じる高い吹き抜けのロビー。

受験候補の一つくらいに考えていた大学だったが、いいんじゃな~い!とロビー一歩目で、母はもう気持ちを掴まれてしまった。

母の心は、すぐに揺らぐのだ。

ロビーに圧倒されながら、スマホの参加証を呈示し受付を済ませ、大学名が入ったペットボトルの水と、同じく大学名が入った不織布のトートバッグに入った大学案内を受け取った。

そうした訪問者への配慮を嬉しく感じて、また好感度が上がった。

そして、訪問者でなく、ちょっぴり保護者気分にさえなった。

次女と私は、校舎内をきょろきょろしながら、予約していた出願説明会へ参加するために、渡された構内マップを広げて、開催される教室へ向かった。

家を出る時から別行動していた長女は、希望する学部の模擬授業や、学食体験ツアーに参加するようだった。

出願説明会では、受験の日程や、出願の仕方などの説明がされた。

司会の女子学生が
「複数の学部を受けることもできます。A日程とB日程の両方も可能です。
総合型受験も他大との併願ができます。
また、2学部以上受験する方には、出願料の値引きがある“ 出願パック ”がありますのでご活用ください」
と説明した。

“ 出願パック ”の提示額は、とてもお値打ちだった。

前の席に座っていた男子高校生のお父さんは、パンフレットのその箇所が説明されたところを指でトントンとたたきながら、すかさずメモをとった。

それを見て私も、慌てて“ 出願パック ”とメモした。

まるでマクドナルドのバリューセットのような、お得な出願パック。

すっかり合格が約束されてる気になって、長女は一般受験希望にもかかわらず、この早く合否が決まる総合型選抜試験に気持ちが傾いた。

母はすぐにブレるのだ。

もう、長女がここの学生になった姿が目に浮かぶ気がした。

 説明会も終わり、長女が学食体験に参加するという学食にも行ってみた。

私と次女は学食体験はしないけれど、せっかく来たからには、いろいろと見て回ろうと考えていた。

学食のある校舎に行くと、ガラス張りになった階段ロビーから、学食が見渡せるようになっていた。

白を基調とし、全面の窓からは光が入り、そこで昼食を取ったらとても気持ちよさそうだった。

解放感があって、まるでIKEAみたいだった。


また、学食とは別に、大学のカフェも近くにあった。

表参道の裏へ一本入った通りにありそうなカフェの佇まいは、これまたおっしゃれーな感じだった。

「ここで食べてみた~い」と私は思わず言った。
保護者目線でなく、もう、主語は母になっていた。

「ムリでしょ」次女が冷ややかに言い放った。
「予約してないと食べれないから、ママ」
はいはい分かってます。ちょっと言ってみただけですからね。

次女は、この大学に自分の希望する学部が無いことから、今日はずっと塩対応気味だった。

そのあと、近未来を感じる図書館や、手厚くサポートしてくれそうなキャリアセンターなどを見て回り、次女と私は大学を後にした。

オープンキャンパスの後に塾に行った長女と、仕事を終えた夫と、夕食時に家族が揃った。

私は受験の圧をあまり与えてはいけないと思い、まずは学食の感想を尋ねた。

長女は「カレー、からっ」と下手なダジャレのように一言で終わらせた。

いつもは、流行りのカフェのエモく撮れた写真を見せてくれながら、こちらが訊いてもいないのに、隣のお客さんの服装まで細かく話してくれるのだけど。

今日、学食で体験できるメニューはカレーとパスタしかなかったらしく、まして行くかどうか、合格するかしないかもわからない大学に、気持ちを乗せるつもりはないようだった。

模擬授業は、自分が興味あることとは少し違った、とのこと。

塾の後で疲れているのもあるだろうが、あまり話したいようすではないようだった。

実際の大学を訪問して、受験をより現実的に感じてるようにも見えた。

「きれいだったよね~!大学」とテンション高めの母が、ひどく鬱陶しかったのもあるだろう。


受験まで後8か月。

まだ8か月もあるのか、もう8か月しかないのか。

親の一方的な期待を乗せないように、長女を応援していこうと思った。

どうか、娘の希望が叶いますように。

そして、半年前、不登校だった次女は「どこにも行きたくないし、何もしたくない」と言っていた。

その半年後に、今日のように、少しでも未来を想像するようになるとは考えることもできなかった。

半年前には想像もしなかった帰り道だった。

あの大きなロビーは、娘たちの未来への入口みたいだった。


#創作大賞2026
#エッセイ部門

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