冷蔵庫の梅干しと、夏
今朝、長女のお弁当を作っているとき、冷蔵庫の奥に梅干しの入ったタッパーが目に入った。
ああ、そろそろ梅の季節だな、と思う。
朝の台所はまだ少し眠くて、お弁当用に焼く卵焼きの甘い匂いと、炊きたてのご飯の湯気が混ざっている。
その中で、梅干しだけが静かにそこにある。
この梅干しは、義実家から毎年やってくるものだ。
毎年夏になると、畑で採れた野菜やお米を持たせてくれる。
きゅうりやじゃがいも、茗荷やかぼちゃ。
その時々で違うのに、必ず変わらず入っているものがある。
それが自家製の梅干しだ。
小粒で、皮が薄くて、驚くほど塩っぱくて酸っぱい梅干し。
子どもたちはあまり好まないので、少しずつ冷蔵庫に残っていく。
ちょっと消費しようかな、と思いながら、結局まだ冷蔵庫の奥にいる。
そう、それなのに、去年の梅干しはまだあるのに、
次の夏はちゃんとやってくる。
その梅干しの種を取り、梅肉ペーストにしたことがある。
みりんと砂糖と、ほんの少しの醤油を加えて、
ネットで見たレシピを頼りに作っただけのものだけれど、
きゅうりに付けたり冷奴にのせたりすると、
思った以上に出番が増えた。
梅グミみたいだと、梅干しが苦手な娘たちにも好評だった。
それでもタッパーの中には、半分以上の梅干しが残っている。
さて、どうしようかと思いながらも、ちょっと遠い夏の気配が戻ってきた。
袋いっぱいの野菜、帰り際に渡される重さ、車の中の少し青い匂い、夏の日差しに揺れる娘たちのワンピースの裾。
帰り道の後部座席では、少し日に焼けた娘たちがうつらうつらしていた。
梅干しを見るたびに、その景色まで一緒についてくる。
昨日は「夏が来た」と書いたのに、タッパーの梅干しを見ながら、「もうすぐ夏が来るんだな」と思った。
台所の中で、季節だけが少し先を歩いている気がした。
