屋上遊園地と迷子の記憶。
みなさんこんにちは。
小野 千花といいます。
今回、『大星百貨店跡地』というタイトルで、福岡の老舗百貨店を舞台にした、全5部・約4万5千字の中編ミステリー小説を書かせていただきました。
この物語を書いていると、なんだか遠〜く、遠くから懐かしい匂いがしてくるような気がしました。
忘れている事すら忘れているような記憶が、ぽつりぽつりと戻ってくる。
そんな感じ。
たとえば、幼い頃のデパートの喧騒。
地下の食品売り場の匂い。
エスカレーターのゴウン、ゴウンという音。
なぜか少しだけ緊張するエレベーターの扉。
幼稚園生くらいの頃だったと思います。
母と、3つ下の妹と3人でデパートへ出かけました。
地下二階の売り場で、私は母を見失いました。
ビデオ売り場だったのか、本屋さんだったのか。
背の高い棚が何列にも並んでいたような気がします。
記憶は曖昧だけれど、「あれ? お母さんがいない」という心細さだけは、今でもはっきり覚えています。
まだよちよち歩きの妹の手を引いて、私はなぜか「私がなんとかしなきゃ」と思ったらしい。
今考えると、幼稚園児にしては責任感が強すぎたのかなんなのか、
私はなぜか、その場から動こうとしてしまいました。
なんとかエスカレーターに乗り、地下一階へ。
今考えると、妹に怪我させたりしなくて本当に良かった……恐ろしい。
食品売り場の通路の両脇に、試食のおばちゃんたちがたくさんいて、
「あら、かわいいねえ」
「迷子になっちゃったの?」
と声をかけてくれました。
手を繋いで歩く妹と私に向けて、たくさんの大人たちから「かわいいね」と言われました。
そのことに私は「えっへん!」みたいな気持ちになっていたような気がします。
呑気すぎる。
そして、脇の休憩スペースみたいな所に座らせてくれて、いろんな試食を食べさせてくれました。
当時の私はたぶん、
「迷子になると、おいしいものがいっぱい食べられるんだ」
くらいに思っていた気がします。
呑気すぎる。
母、ごめん。
今の私はちゃんと反省しています。
そのあと迷子放送が流れて、母が迎えに来てくれました。
あの瞬間の安心感は、何年経っても忘れられません。
大丈夫だった、
ちゃんと見つけてもらえた。
子どもの頃の世界って、今よりずっと小さいのもあって、少し迷うだけで途方もなく広く感じますよね。
屋上遊園地も大好きでした。
小さな観覧車。
ゲームコーナー。
百円を入れるとゆっくり動き出す乗り物。
大人になって久しぶりに思い出した時には、もうなくなっていました。
なくなったことに気づいた頃には、寂しいと思う気持ちさえ薄れていて。
それが、少しだけ寂しかったのを思い出します。
そういえば、エレベーターガールもいました。
懐かしい。
何をする人なのか分からなかったけれど、あまりにも丁寧で、少しロボットみたいに話すのが不思議に思っていました。
「七階、催事場でございます」
あの声を聞くだけで、特別な場所に来た気ような気がしていました。
『大星百貨店跡地』を書きながら、そんな忘れていた記憶が次々と蘇ってきました。
もう二度と戻れない場所。
もう会えない景色。
だけど、記憶の中には、ちゃんと残っている。
この物語を読んでくださった方にも、それぞれの「あの頃」があると思います。
もしよければ、あなたがふと思い出した懐かしい記憶をコメントで教えてください。
みなさんの思い出を聞いてみたいです。
よかったら、コメントで教えてください。
