門番レイン 第二十七話 よう、ブラザー

※🎯第二十五話「はいよ、息子」から続くお話です。(note内リンク)未読のかたはどうぞ🐾
後半おまけがあるのでちょっと長めです🎁

第二十七話「よう、ブラザー」

レインがなんとか亭に入ったのは、少し遅い時間だった。

寝過ごした。

店の中は、すでににぎわっている。

「レイン、今日は人が多いよ。相席でもいいかい」

店主が、皿を運びながら声をかけた。

「はい。大丈夫です」

案内された席には、すでに男がひとり座っていた。

頬が赤い。

だいぶ、できあがっている。

「よう、ブラザー。ひっく」

男は片手を上げた。

(えっ、だれ?)

「レインです。……ところで、どこかで会いましたっけ」

「あれだ、あれ。所属はちがうけど、札見回りだ」

「札見回り」

レインは反射的に、ポケットの通行札へ手を伸ばす。

「いらねぇ」

ジョッキを持ったまま笑う。

「野暮なことはするな。今は飯時だぜ」

「でも」

「同じ兵士だろ。いろんな村を、月に二回ほど見回ってる。よろしくな、ブラザー。ひっく」

「そうなんですか。はい、よろしくお願いします。えっと……」

「ハンドだ、プレイン」

「レインです。さっき言いましたよね。……飲みすぎでは」

「それより食おうぜ。ここの料理と酒を楽しみに来てんだからよ」

ハンドは、はっはっはっと笑う。

(やっぱ、できあがっている。)


「はいよー、今日はロールキャベツだよ」

運ばれてきた皿には、金色のスープが張られていた。

その中に、淡い黄緑の俵が、ころんと浮かんでいる。

夕日の中に置かれた、小さな荷物みたいだった。


レインは、向かいの皿へ視線を落とす。

魚料理だった。

ほとんど、骨だ。

「ロールキャベツは食べないんですか」

「いや、まあ、あれだ。たまには魚だ」

レインは、ロールキャベツをひと口食べる。

やわらかい葉の中から、肉のうまみがほどける。

「……おいしいですね」

「だろ、ブラザー」

ハンドは得意そうに言った。

「俺は魚だけどな」


レインは、少しだけ笑った。

それから、門のことや、札見回りのことを少し話した。

「この村は暇でいいんだがな、変なことだけは多い」

「それは、少しわかります」

ハンドは笑ったが、しだいに言葉の間が空いていった。

「それでな……」

「はい」


「……」

レインは顔を上げた。

ハンドは、ジョッキを持ったまま、こくりと揺れていた。

そのまま、静かに寝息を立てはじめた。

「……寝た」

腹いっぱいになって、眠ったのだろう。


ぽろん。

ぽろん、ぽろん。

(きた)

レインは、すっかり忘れていた。

思わず、すっと手を上げる。

(あっ)

さっき、ハンドが「ブラザー」と言ったときの格好だった。

「さぁさぁ皆さま〜! 夜の門番、吟遊詩人オル!」


「本日の新曲は――『すっと呼ぶ』」

ぽろん。

八百屋の前で 春キャベツ♪
すっと呼ぶのは 母ちゃんでー♪

笑って返した はいよ、息子♪
笑いそびれりゃ 用件へー♪

思い出したる 春キャベツ♪

誤称、親愛~♪


「ぎゃは、あるあるー」

「ぶふっ、先生にいうやつ!」

「だは、だはっ」

オルは、右手をレインへ向けた。

レインは、肩の力を抜いて言った。

「誤称、親愛」

客たちも、かぶせる。

「誤称、親愛!」

笑いと拍手が、店の中を流れていった。

そのとき、店の扉が開く。

「すみませんね、うちの息子、来てないかい」

八百屋の女主人だった。

笑い声が、すっと薄くなる。

女主人は、かかとをゆっくり上げ、店内を見渡した。

ハンドの席のほうで動きを止めると、そのまま歩き出す。

「こら、ハンド。起きろ」

「……んあ」

「起きろって言ってるだろ」

女主人は、ハンドの耳をきゅっとつねった。

「いででで、母ちゃん」

客のひとりが、笑いながら言った。

「八百屋、レインも息子だろ」

レインは、ロールキャベツの皿を前にして固まった。

八百屋の女主人は、片眉を上げた。

「勝手に増やすんじゃないよ」

その声に、ハンドが片目を開ける。

「……え。母ちゃん、俺に弟いるの?」

「なに、ばかなこと言ってんだよ。帰るよ!」

客の笑いが、どっと濃くなる。

女主人は、ハンドの腕をぐいっと引っぱる。

「歩ける、歩けるけど、母ちゃん、そこも痛い」

客たちの笑いが、もう一度濃くなる。

レインも、少し遅れて笑った。

ハンドも、にやにやしながらレインに手を上げる。

レインも、そっと手を上げ返す。

あたたかな、親愛。

店々の灯りの下を、女主人とハンドの影が、連れ立つように門前通りへ流れていく。

荷が下りたような春の風が、門を静かに揺らした。

ギィ。

第二十八話へ続きます。
※現在作成中です。

総目次はこちらへ(ひと言コメントあり、日々更新中です🦜)NEW🎯
総目次


初めてAI音楽つくってみた🎁

Geminiで作った挿入歌です。
吟遊詩人オルの歌場面です。出来は40%くらいですが、
声質、ゆっくりさ、滑舌、ヤジも入れたかったです🐦

こちらはSuno版エンディング曲😊
まだよくわからないので、リンクだけ置きます🎁🐾
門番レイン終曲にできそう。70%くらいかな⛱️

挿入歌とエンディング曲、門番レインに合いそうでしょうか?
よかったら感想をお願いします😊

聴いてみてください
→🎯押す 【sunoリンク】

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アマドリウシロ お読みいただき、ありがとうございます😊時間をかけてひとつの記事を書くスタイルです☘️「続きも読みたい」「応援したい」と思っていただけましたら、目指せnote小説家。その今後をチップでそっと応援いただけると励みになります🐦プライバシーを尊重し、気楽に交流できる世界へ🌏