【ハムカツさん企画】 月にかえらぬ、かぐや|宙の鏡
お久しぶりです😊
まだ少しエンジンはかかりきらないのですが、気分一新して
ハムカツさんの
創作企画no2 にチャレンジします。
※期間は、5月24日23時59分までなので皆さんチャレンジしてみましょう🎈
では
はじまり、はじまり~☘️🐾
月にかえらぬ、かぐや|宙の鏡

月の使者たちは、草原の生える丘に集まっていた。
夜なのに、丘はほのかに明るかった。
草の先には月の光が宿り、風が吹くたび、銀色の波のように揺れている。
その丘の上に、かぐやが立つ。
そばには爺と婆さん。
少し離れたところには、五平の姿もある。
月の使者のひとりが、静かに口を開く。
「時が来ました」
婆さんは、かぐやの袖をそっとつかむ。
「本当に、行ってしまうのかい」
かぐやは、婆さんの手に自分の手を重ねる。
「はい」
その声は、泣いているようで、笑っているようでもあった。
「でも、月へ帰るのではありません」
月の使者たちが、わずかに顔を上げる。
五平も、はっとしてかぐやを見た。
かぐやは空を見上げる。
そこには、まんまるの月があった。
遠く、静かで、美しい光。
けれど、かぐやの目は、その月を故郷として見ていない。
「むかし、地球は自分の姿を知りたいと思いました」
かぐやは、ゆっくりと言う。
「けれど、自分で自分を見ることはできません。
だから、はるか遠くに水を張り、映し鏡をつくったのです」
丘の草が、風に揺れる。
「それが、月です」
爺は、月を見上げる。
婆さんも、涙をこぼしながら空を見る。
五平は、何も言わず、足もとの土を見つめた。
太陽の光は、草を伸ばし、花を開かせ、人の肌を温めてきた。
それは地上を照らす光であり、月の光には、少し違うものがあった。
月は、むかし地球が自分を見るために、遠くへ張った水の鏡。
そこに映って返ってくる光は、ただ明るいだけではなかった。
地球が忘れていた、自分自身の記憶を含んでいた。
だから、太陽の光では通路は開かない。
太陽は、地上を育てる。
月は、地球の奥を思い出させる。
かぐやが取り込んだのは、その月の光だった。
かぐやは爺の前に立つ。
「お爺さん。竹を大事にしてくれて、ありがとうございました」
爺の肩が、静かに震えた。
「わしは、ただ見守っていただけじゃ」
かぐやは、やわらかく首を振る。
「それが、うれしかったのです」
かぐやは、婆さんの前に立つ。
「お婆さん。ごはんの湯気も、縫ってくれた着物も、夜にそばで眠ってくれた手の温かさも、全部、持っていきます」
婆さんは、声をこらえきれずに泣いた。
「そんなもの、いくらでもやるから、行かないでおくれ」
かぐやは、静かに首を振る。
「行くのではありません。帰るのです」
最後に、かぐやは五平の前に立つ。
五平は、唇をかんでいた。
「俺は、何もしてやれなかった」
かぐやは、少し笑う。
「いいえ。五平さんは、教えてくれました」
「何を」
「地上にも、こんなに温かい人間がいるのだと」
五平は、何も言えなくなる。
月の光が、草の上で静かに揺れている。
「それだけで、私はこの地上を好きになれました」
五平の目に、月の光がにじんだ。
五平は、かすれた声で言う。
「月へ行くなら、見送れる。でも、地球の中心なんて、どこを見ればいい」
かぐやは、足もとの草をそっとなでる。
「ここです」
丘の土が、淡く光りはじめる。
草の根の奥から、青白い光がにじみ出した。
炎のように静かに揺れているのに、熱くはない。
むしろ、裸足の裏に、深い水へ触れたような冷たさが伝わってくる。
それは月明かりではなかった。
月の光によって呼び起こされた、地球の奥の光。
かぐやは、その冷たさを怖いとは思わない。
胸の奥で、ずっと閉じていた場所が、静かに開いていく気がする。
これは、落ちるための穴ではない。
地球が、帰ってきた光を迎えるためにひらいた道だった。
かぐやの足もとに、小さな円が広がる。
月の使者たちは、一歩ずつ下がる。
彼らの輪郭が、青白い炎のように揺れはじめた。
顔も、衣も、指先も、はっきりした形を失っていく。
燃えているのではない。
月の光に戻っているのだ。
彼らは、かぐやを連れ去る者ではなかった。
地球の奥へ帰る光を、月の鏡の側から見届けるために現れた、淡い記憶たちだった。
かぐやは爺と婆さんと五平を見る。
「どうか、月を見上げるたびに、遠いところを思わないでください」
風が、丘を渡る。
「月は、地球の映し鏡です」
かぐやの姿が、淡くほどけはじめる。
「私は、空の向こうではなく、この星の中心へ帰ります」
婆さんが叫ぶ。
爺が手を伸ばす。
五平が、一歩踏み出した。
けれど、かぐやはもう、青白い光の中にいた。
最後に、彼女は笑う。
「さようなら。けれど、私は遠くへ行くのではありません」
青白い光が、土へ沈んでいく。
同じように、月の使者たちの姿も、空の光へほどけていった。
かぐやは、地球の中心へ。
使者たちは、青白い光へ。
丘には、爺と婆さんと五平だけが残った。
月だけが、少し暗くなる。
まるで鏡から、ほんとうの光が戻っていったように。
その夜から、満月のたびに、あの丘の草は淡く青白く光るという。
人々はそれを、月明かりだと思っていた。
けれど爺と婆さんと五平だけは知っていた。
それは、地球の中心へ帰ったが、まだここにいる者たちへ返してくれる、小さな別れの光だった。

ハムカツさん、楽しい企画をありがとうございます😊
今回は、「月へ帰るかぐや」ではなく、
「月を映し鏡として、地球の中心へ帰るかぐや」として書いてみました。
おまけに、ぷくぷくシール推進派として、
蒼芽乃輝夜(あおめのかぐや)のミニキャラ・ノーマルバージョンも添えてみます。
※クリエイターマーク付き
推進派の方は、note内での使用OKです。


こちらの企画は 5/17 23:59(訂正済)までのことなので、
ご興味のある方は、ぜひのぞいてみてくださいね⛱️🐾
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