Photo by
sabinekoland
曼珠沙華は恋をする
幸手権現堂に群生する曼珠沙華の道を歩いている美沙の耳に、母親がよく口ずさんでいた流行歌がリフレインする。
曼珠沙華 恋する女は曼珠沙華 罪作り
白い夢さえ 真っ紅に染める
道ならぬ恋は燃えてすぐに焼け落ちた。残骸がまだくすぶって重く痛い。
どうしてここへ来てしまったのか。花の赤が美沙の心身に突き刺さるようだった。
「あんたも好きねえ」
母親は美沙を笑った。母子家庭で育った美沙の恋は父性をも求めてしまう。成就するのはムズイのだ。
「でも確かに私の子だわ」
「あれ?」
赤一面の中に白い一群が咲いている。白い曼珠沙華だ。なんとすがすがしく、凛としているのだろう。
生殖によりできる種と違って、曼珠沙華などの球根花は無限にクローンとして分身を咲かせ続ける。その赤の中に白。滅多にないが、種による成長開花は種の進化をうながすという。
真っ紅な今さえ 白い夢に変える
美沙は替え歌を口ずさみながら、足取り軽く権現堂に別れを告げた。
(了)
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