#3つのお題に空想のひらめきを「北斗七星」
第31回 3つのお題
お題①:「空にしまい忘れたもの」
お題②:「魔法が遅れて届く日」
お題③:「思っていたより、やさしい世界」
古来から日本では、こぐま座の柄杓を小びしゃく、おおぐま座の北斗七星を大びしゃくと呼んでいた。こぐま座のしっぽの先にあるのが北極星で、海に漕ぎ出す者の道標である。
「昔の話だが、オレの爺さんがある朝早く小舟で漁に出て、突然の荒波にもまれて海に投げ出されたことがあってな」
すでに爺さんになっている釣りの師匠が話し始めた。
「漁師のくせにカナヅチだった爺さんは死を覚悟したらしいが、急に体が海から救い出されて、浜に海水もろとも落とされて助かったそうだ」
「へえ~いったい何だったんですかそれは」
「爺さんが言うには、夜空にあるはずの小びしゃくが朝の空にしまい忘れたもののようにきらりと現われて、海水ごとすくって浜に戻してくれたというんだよ」
「ふしぎな話ですねえ」
「オレ最近知ったんだが、小びしゃくの星々をこぐま座というらしいな」
「そうです。同じひしゃくでも北斗七星は大びしゃくと云って、それはおおぐま座の一部ですね」
「爺さん、その不思議な体験をする前に、山でイノシシの罠にかかったこぐまを助けたらしいんだよ」
「ということは・・こぐまの恩返し?」
「そう思うだろ? 空のこぐまの魔法が遅れて届く日、それがあの海に投げ出された日だったわけだよ」
「地のこぐまが空のこぐまになって恩返しをしたわけですか」
「そうだと思う」
師匠は遠くを見つめる目で、独り言のようにつぶやいた。
「そのことを爺さんに教えてやりたかったなあ」
その後、師匠の友人に聞いた話だが、師匠は昨今の熊の街への出没に心を痛めて、山にどんぐりの木を植えるボランティアにいそしんでいるらしい。
「山は海の恋人なんだよ。山が豊かであればその栄養が海に流れるんだ」
熊の為に。そして海の為に。思っていたより、やさしい世界が師匠の心には広がっている。もしかしたら、もしもの時は、おおぐま座の北斗七星が師匠をすくってくれるかもしれない。
いいなと思ったら応援しよう!
サポートありがとうございます!
いまだサポートってよくわかっておりませんw