見出し画像

#3つのお題に空想のひらめきを「詩人の叫び」☆萩原朔太郎


  第32回 3つのお題

  お題①:「狼の守り人」
  お題②:「満月の記憶」
  お題③:「運命を書き換えるペン」

 
 満月に向かって吠える狼のように、かつての人間も凍てつく冬の満月の日に狼に変身し、遣瀬やるせない声で吠えていた。ネイティブ・アメリカンには、そんな満月の記憶があるという。

 ダーウィンは「種の起源」で進化論を説いたが、人間の進化については触れていない。人間は空を眺めてこんなに空が恋しいのは昔、鳥だったのかも知れないと思い、満月に照らされて叫びたくなる時には狼の鳴き真似をしてしまう。人間は他の生命の魂をも引き継いで、進化して来たのではないか。
 ただ人間が狼と違うのは、2足歩行によって重力の束縛から解放された脳が必要以上に発達し、概念や観念の使い手となったことだ。それゆえ「脳」の月が心となって「悩」みが増えたともいえる。
 そこに生れたのが「詩」である。
 
 私の心の「かなしみ」「よろこび」「さびしみ」「おそれ」その他言葉や文章では言ひ現はしがたい複雑した特種の感情を、私は自分の詩のリズムによつて表現する。しかしリズムは説明ではない。リズムは以心伝心である。
 詩は人間の言葉で説明することの出来ないものまでも説明する。詩は言葉以上の言葉である。(萩原朔太郎「月に吠える」より抜粋)

 詩人は、狼に変身して吠える人間の想いをリズムで表現する。共感を呼び覚まし、人間を孤独の闇から救い出す。いわば、狼の守り人なのだ。

 月に吠えるのは、自分の影に怪しみ恐れて吠えるのである。疾患する心に、月は青白い幽霊のやうな不吉の謎である。
 私は私自身の陰鬱な影を、月夜の地上に釘づけにしてしまひたい。影が、永久に私のあとを追つて来ないやうに。(同、抜粋)

 詩人とは、心に自ら人間の運命を書き換えるペンを持つ人でもある。
 
 「今日は月がきれいですね」
 「私は満月より三日月が好きなの。ごめんなさい」
 「わお~~ん」
 詩人も時に書き換えに失敗し、釘づけしたい自分を増殖させる。書き換えるべき運命が詩人の背中を押すのである。これを黒歴史ともいう。



いいなと思ったら応援しよう!

安&堵 サポートありがとうございます! いまだサポートってよくわかっておりませんw