風まかせ文芸部 【白紙】
風まかせ文芸部のお題に初投稿しました。よろしくお願いします。
数学の証明問題の最後の展開がわからないまま、テストの時間が終わろうとしていた。何を思ったか、彼は消しゴムを持つと勢いよく途中まで書いた数式を全部消してしまった。キンコンカンコンと終業を知らせるチャイムがなった。タイムアップ。彼の名前以外、何も書かれていない薄汚れた答案用紙が最後尾の生徒によって回収され、先生の机の上に置かれた。途中まで書いたままであれば、おこぼれ点がもらえたはずだが、それを良しとしない彼は、正解が導き出せないなら 0点の方がふさわしいと思ったのだ。
返って来た彼の答案用紙には、大きく 0 の赤文字がアンダーラインと共に書かれてあった。筆圧の強い彼の途中までの格闘がうっすら見えてはいるのだが、容赦なく、いや当然のごとく白紙と見なされ、彼の希望通りの結果であった。それから彼は、夢を見るようになった。テストが始まるやいなや、彼はひとり席を立つと、白紙の答案用紙を誰よりも先に提出して教室を後にする。その夢の中で、そんな彼を上から見て潔いなと眺めているもうひとりの彼がいるのである。
夢判断によると、白紙の答案用紙が何を意味するかには様々な解釈があるが、一番ポジティブな解釈は「白紙は自由と可能性を象徴しており、あなたが未来に対して前向きな気持ちを持っていることを示している」というものだ。結果は0点でも、未来はまだこれからどう変わるかわからない。つまりは、夢見る夢子ちゃんの大器晩成型でハハのん気だねな気質ということだろう。だからきっと死ぬ時も思うのだろう。天国でこそ100点を取ると。まあそれもありか。え? ない? 言葉遊びが過ぎるだろうって?
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