#3つのお題に空想のひらめきを「ごめんね話」
第34回 3つのお題
お題①:「名前を呼ぶと光る、古い街灯」
お題②:「忘れ物を預かる小さな雲」
お題③:「朝になると消えてしまうベンチ」
とある田舎町のスーパーの、正面右端にベンチがあった。そのベンチに三々五々集まり座って、よもやま話をして帰るのは老人達ばかり。やがて誰も座らなくなり、そのベンチは撤去され、分別ごみ箱が並べられた。
ある夏の雲ひとつない月夜。分別ごみ箱の前にベンチが現れ、かつての老人達が青白い輪郭を纏いながら、座って話をしているらしいと噂がたった。スーパーの前の道路を走る車からその様子を見たという目撃談が寄せられたのである。
月夜に現われ、朝になると消えてしまうベンチと老人達。幽霊スーパーと呼ばれてしまうことを恐れた店長は、限られた予算の中、自分で灯りを設置した。中古の安いレトロな街灯を買い求め、その中に電池式の人感センサーライトを入れた簡易なつくりのもので、ノラ猫以外の誰も来ない深夜は相変わらず暗いままだった。
ある月夜、恐る恐る一人の女性がスーパーにやって来た。
「亀ばあちゃん、そこにいるの?」
近づくとセンサーライトが点灯して光った。分別ごみ箱の背後、店舗のガラスに映るおぼろげな人影。それは自分なのだが、女性は驚いて叫んだ。
「うわっ、出た! 亀ばあちゃんのへそくり盗んだの私なの。ボケたんじゃない?って、しらばっくれてごめんなさい」
名前を呼ぶと光る、古い街灯のある深夜のスーパーは、いつしか懺悔の場所となっていた。
「出たっ!菊ばあちゃん。世界一短い天国の話は?って聞いてごめんなさい。あのよ~て言ったら、次の日に逝っちゃったから、後悔してるの」
「熊じいちゃん。若いやつにはまだ負けんって言うから、相撲して投げ飛ばして骨折ってごめんよ。いつかあの世で投げ返していいから」
月には、ごめんね話の忘れ物を預かる小さな雲がかかっていた。
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