単なるスラップ訴訟ではない——裁判所が一蹴した「日本保守党」の言論圧力と自作自演の全貌
国政政党・日本保守党の党首や幹部らが、元候補者の飯山あかり氏らを相手取って起こした一連の名誉毀損訴訟。その判決が相次いで言い渡され、原告側(保守党側)の敗訴や請求棄却が続いています。
ネット上では「スラップ訴訟(嫌がらせ目的の提訴)ではないか」という声も多く聞かれますが、裁判所が下した一連の判決文を読み解くと、問題は単なる「裁判の勝ち負け」や「嫌がらせ」にとどまらないことが分かってきます。
そこに見えてくるのは、「自らデマや過激な言動、激しいネット攻撃の場を作り出し、相手が反論・抗議すると被害者ぶって提訴する」という歪んだ言論構造です。
本記事では、公的な判決文の事実認定に基づき、彼らの攻撃手法の本質と構造的問題を5つのパターンに整理して解き明かします。
判決文から解き明かす「5つの問題構造」
1. ドキシング訴訟:支持者を煽る「犬笛」と法的圧力の二重構造
最初の問題は、SNS上の集団攻撃(ネットリンチ)と法的圧力を組み合わせた手法です。
百田代表がSNSで激しい言葉を用いて攻撃を開始したことを皮切りに、熱狂的な支持者らが飯山氏本人やその家族の個人情報(ドキシング)を収集・公表する動きが広がりました。さらに裁判所の認定事実(第3の1(1)等)においても、百田氏や有本香氏らがこれを制止するどころか、自ら拡散・関与して攻撃を扇動・増幅させていた構造が明記されています。
恐怖を感じた飯山氏がその凄惨な実態を配信で告発すると、驚くべきことに保守党側は「党の名誉を毀損された」として飯山氏を提訴しました。
【裁判所の判断と本質】
裁判所はこの請求を棄却し、飯山氏の告発には真実性および真実相当性(正当な批判)があると認めました。
幹部らが自らSNSでターゲットを暗黙的に示し、それに応じた支持者(犬笛構造)が情報を拡散し、恐怖を訴えた被害者に対して国家機関である裁判所を使って追い打ちをかける——集団的威圧と法的威圧を組み合わせた極めて悪質なパターンです。(※1)
2. 抜刀訴訟(①・②):「脅し」の自作自演とチャット欄の放置
百田尚樹代表による「抜刀パフォーマンス」をめぐる一連の訴訟です。
百田氏はライブ配信中、飯山氏への法的措置を示唆した直後、「母親の病魔退散」などと称して日本刀(真剣)を抜刀して振り回しました。チャット欄には「めし山を試し切り」「飯山、震えて眠れ」といった殺伐としたコメントが並び、飯山氏は身の危険と恐怖を訴えました。これに対し、百田氏側は「名誉を傷つけられた」として飯山氏らを相次いで提訴しました。
【裁判所の判断と本質】
本件をめぐる裁判(抜刀訴訟①)において、地裁は「一般視聴者から見れば百田氏の抜刀行為は飯山氏に向けられた脅迫行為にあたり、飯山氏の発言は真実である」として百田氏の請求を全面棄却しました。
続く別の訴訟(抜刀訴訟②)では、書籍内の表現について一部名誉毀損が認められ33万円の支払いが命じられたものの、百田氏側が求めた330万円・謝罪広告掲載という巨額の請求は9割以上が棄却されました。さらに同判決で裁判所は、配信チャット欄のコメントを「極めて卑劣・悪質」と断罪。「悪意の発露の場たる配信を主宰する百田氏に対し、被害者である飯山氏が極めて厳しい感情(恐怖)を抱くに至ること自体は理解できる」と、恐怖の原因を作った百田氏側の配信環境の異常性を重く認定しました。
自ら刀を振り回し、支持者の悪質な加害コメントが飛び交う場を作り出しておきながら、恐怖を訴えた相手を巨額訴訟で追い詰めるという、完全なる「自作自演と被害者化の構造」が浮き彫りになっています。
3. ゴーストライター訴訟:「デマの拡散」と「反撃への不当提訴」
党幹部らによるデマの発信に端を発した訴訟です。
昨年の衆院戦後、自民党の東京都連に参院選の公認申請をしたと聞いています(真偽のほどは不明)。
— 百田尚樹(作家/日本保守党代表) (@Hoshuto_hyakuta) January 18, 2025
その話を聞いた時は、さすがに驚きましたが、半信半疑ながら、もし事実だとしたら
「ああ、そういうことやったんかい」
と、全てが腑に落ちました😅 https://t.co/dLaSG4H0Ex
日本保守党の島田洋一氏や百田氏らが、名指しこそ避けたものの**「執拗に日本保守党を誹謗しつつ、自民党の候補者公募に応募。しかしハネられ、『保守党のせいだ』と一層恨みを募らせる」**という根拠のないデマを拡散しました。特に百田氏は、「真偽のほどは不明」「もし事実だとしたら…」と言いながら相手の嫌がる噂を流し、勝手に納得してみせるという、いわゆる“百田論法”を用いてデマを広めました。
これに対し、飯山氏がまったく同じ論法を用いて百田氏のゴーストライター疑惑を皮肉交じりに反論したところ、百田氏側は飯山氏を名誉毀損で訴えたのです。
【裁判所の判断と本質】
裁判所はこの請求も全面棄却しました。自らデマや邪推を撒き散らして攻撃の口火を切っておきながら、相手からのカウンター(皮肉や批評)に対してだけは「名誉を傷つけられた」と被害者ぶって訴訟を起こすという、著しく不相当な姿勢が裁判所によって一蹴されました。
4. 子宮摘出発言訴訟:暴言の「正当化」と批評の口封じ
世界的にも大炎上した百田氏の「30歳を超えたら子宮摘出」という過激発言をめぐる訴訟です。
有本香事務総長や伊藤純子氏ら党幹部がSNS上で「過激な例え話に過ぎない」「発言の本質を見てほしい」と百田氏の発言を擁護・補強したことに対し、飯山氏がその姿勢を批判する動画を投稿。これに対し、有本氏らは「虚偽の事実を広められた」として飯山氏に損害賠償を求めました。
【裁判所の判断と本質】
東京地裁は、飯山氏が実際のSNS投稿を提示しながら批評を行っていたことを確認し、「恣意的に歪めた悪質なものではなく、正当な政治的批評・論評の範囲内である」として原告らの請求を棄却しました。過激発言やそれを擁護する党幹部への適法な批評すら、裁判という圧力で封じ込めようとした事例です。
5. 政策批判記事への訴訟:言行不一致と「個人狙い撃ち」による言論封殺
この訴訟には、言論機関・政党としての致命的な「ダブルスタンダード(二重基準)」と、特定個人を狙い撃ちにする悪質性が表れています。
日本保守党や百田代表は、日頃から自分たちへの批判に対し「人格攻撃や暴言の切り取りばかりせず、堂々と『政策批判』をしろ」と支持者と共に一貫して主張してきました。
それにもかかわらず、飯山氏がまさに彼らの要求通り「政党の政策(LGBT理解増進法への党の対応)に関する正当な批判」を月刊誌に寄稿した途端、彼らは「事実無根の誹謗中傷だ」として即座に裁判所へ駆け込み、330万円もの高額な損害賠償を請求したのです。さらに、本来議論の場であるはずの発行元(出版社)ではなく、執筆者個人である飯山氏だけを狙い撃ちにして提訴しました。
【裁判所の判断と本質】 裁判所はこの請求を一蹴し、「政党に対する批判は受忍すべきであり、言論には言論で返すべき」という民主主義の大原則を突きつけました。
「政策批判をしろ」と自ら口にしながら、いざ政策批判をされると論争(言論)から逃げて法的な力で口封じを図る——言行不一致の姿勢と、公的政党でありながら自由な政策論争を拒絶する体質が浮き彫りとなった事例です。
政策批判記事への訴訟:言行不一致と「個人狙い撃ち」による言論封殺
この訴訟には、言論機関・政党としての致命的な「ダブルスタンダード(二重基準)」と、特定個人を狙い撃ちにする悪質性が表れています。(※2)
結論:SLAPP訴訟を超えた「3つの構造的歪み」
一連の判決文を横断して読み解くと、単なるスラップ訴訟を超えた3つの構造的問題が見えてきます。
攻撃の自作自演と被害者ビジネス
自らデマ、過激発言、抜刀、などの威嚇を仕掛け、相手が反論・告発すると、途端に「名誉を傷つけられた被害者」なりすまして多額の損害賠償を求めて提訴する循環。
「犬笛」と法的威圧のハイブリッド攻撃
ネット上の熱狂的ファンにターゲットを示唆して集団攻撃(ドキシングや卑劣なチャット投稿)を誘発・放置しつつ、表では国家機関(裁判所)を使って相手のリソースを奪おうとする二重構造。
民主主義の根幹(自由な言論)への反発
公的な国政政党でありながら、自身への政策批判や不祥事の追及に対し、言論で反論するのではなく「訴訟という圧力」で口を封じようとする姿勢。
おわりに
一連の判決は、単に「誰が何勝何敗か」という表面的なニュースにとどまりません。
「ネット上の過激な言論と威嚇、そしてそれを裁判で正当化しようとする試みに対し、日本の司法が突きつけた客観的記録」です。
SNS上に飛び交う信者の言説や感情論に惑わされることなく、裁判所が証拠に基づいて下した公的な「判決文」というファクトを直視することこそが、この問題の本質を見誤らない唯一の道です。
2026年7月29日修正・加筆
(※1)ドキシング訴訟における認定事実と判断
判決文の認定事実(第3の1(1)等)において、百田氏による強い言葉での非難に対し、有本氏や支持者らが連動して飯山氏の私的情報(家族・住所・勤務先等)の収集・公表を行っていたことや、有本氏自身が私信を公表した事実などが示されています。裁判所はこれらの経緯を踏まえ、飯山氏による一連の告発を「真実または相当の理由がある正当な批判」と認定し、党側の名誉毀損請求を棄却しました。
(※2)政策批判記事への訴訟:言行不一致と「個人狙い撃ち」による言論封殺
