映画『国宝』ロケ地のストリップ劇場に行った
紅葉が色づいてきた11月中旬の某日。関東から夜行バスに乗り、京都に唯一残るストリップ劇場、デラックス東寺(以下、DX東寺)へ行った。実はこの劇場、今年大きな話題となった映画『国宝』のロケ地でもある。
映画「国宝」凄いですね!
— DX東寺劇場2023.1〜 (@DxtoujiDx) August 29, 2025
私も観ましたが、3時間があっという間で目が離せませんでした…✨
ご覧になった方も多いと思いますが、なんとこの映画、当館でも撮影が行われたんです!どのシーンか解りましたか?
これからという方はそちらも是非注目してご覧下さい! https://t.co/0F7mzoUUcQ
歌舞伎界を追放された俊介が、各地の劇場をドサ回りするパートで、赤い絨毯が敷かれた劇場で女形を演じる姿が一瞬映る。実はこのシーンが撮られたのがDX東寺だ。該当シーンは天井から俊介を寄りで映しており、ストリップ劇場に特徴的な盆(出っ張った舞台)や花道が写っていない。私も鑑賞前に知らなければまったく気づかなかったと思う。
そんなDX東寺だが、11月11日~20日は「金銀銅杯」という特別な週。開館記念興行として、人気の踊り子たちが出演する。東寺は広く、天井が高いので、エアリアルと呼ばれる空中技がとても映える。ストリップ愛好家でもある講談師、神田伯山の表現を借りれば「シルクドソレイユみたいなやつ」で、布やリングやポールを吊るし、ポーズを決めていくアクロバティックなショーだ。金銀銅杯にはエアリアルを得意とする踊り子さんが出演するようになり、いつの間にかオリンピックのようにスポーツの秋!メダルを競い合おう!といった趣旨になっていった…らしい(間違っていたら教えて下さい)。
ずっと行ってみたかった東寺。そしてこの地でずっと見たかった踊り子さんがいた。エアリアルの第一人者、浅葱アゲハさんだ。ストリップ界にはじめてエアリアルショーを持ち込み、2004年のデビューから現在に至るまで独創的な演目で人気を集めている。浅葱さんは全国の劇場に出演されているため、関東で見ようと思えば渋谷でも池袋でも大和でも見れるのだが、せっかくなら東寺で見ようと決めた。何より、就活がうまくいかずムシャクシャしていたのだ。旅に出たかった。
親には「京都へ紅葉見てくるわ」と言ってきたので、アリバイ作りで普通に観光しなくてはならない。お土産も買わなくてはいけない。しかし適当に向かった京都御所や、思いつきで叡山鉄道に乗って行ったお寺が素晴らしく、思いの外時間が経ってしまった。東寺は京都市の条例のせいか、他の劇場と比べ終演時間が20時と早い。日も落ちて人でごった返す京都駅に戻り、歩く。ほとんどのストリップ劇場は大体いかがわしい雰囲気のエリアにあるため、ほんとにこんなターミナル駅の近くの、閑静な場所に劇場があるのか…?と不安になる。15分ほど歩くと、小さな和菓子屋さんのすぐ近くに劇場の看板が見えた。

当記事の写真は劇場スタッフさんに許諾を得た上で撮影・掲載しています。
どこの劇場も、レトロ…というより古き時代の情緒が多かれ少なかれあるのだが、東寺は今まで見てきたどの劇場よりも昭和情緒が色濃く残っていた。HPの料金欄に女性割引は掲載されていなかったが、女性料金の3000円でチケットを購入。中へ入ると、ロビーで常連客らしき人がタバコを吸っていた。至る所に案内や注意書きが貼られているのだが、昭和の銭湯のようなペンキの書き文字にテンションが爆上がりした。諸般の事情で中の写真は載せられないので、ぜひ現地で確かめてほしいと思う。

なぜかお社もある。
ドアを開き場内に入ると、3回目のラスト、浅葱さんのエアリアルショーの真っ最中だった。演目は「関心領域」。題材はアウシュビッツ収容所の隣に住むナチの将校一家を描いた同名映画だが、浅葱版は舞台を日本に変える翻案がなされている。今年の選挙の時期に初出しされた、きわめてメッセージ性の強い演目だ。誰もが知る女性歌手の力強い歌にあわせて、引き締まった体躯の浅葱さんが空を舞っていた。浅葱さんのエアリアルを見て抱いた第一印象は「コンテンポラリーダンスを見てるみたい」。
東寺は盆と言われる花道の先についてる丸い舞台が二つある。一つは花道の途中、もう一つは花道の先。本舞台→花道→盆1→花道→盆2といった構造になっている。奥行きがあるため、奥の本舞台だけ照らす、客席手前側の盆2だけ照らす、盆1と本舞台だけ照らす…といったこの劇場独自の機構を生かした照明演出ができる。全体的に古い劇場のため、レーザー光など凝った照明機構はないが、劇場の構造が変われば、奥行きや立体感が生まれる照明演出ができるのか!と目から鱗だった。盆はあたたかな電球色で照らされることが多く、盆に乗った踊り子の、ひとり生きているからだの生々しさが際立つ。ステージの高さはそこまで高くないため、踊り子との親密感が生まれる。
さらに東寺は壁側両サイドに鏡があり、照らされた舞台と踊り子の姿が鏡に反射し美しく見える。鏡に映る後ろ姿も、舞台上の姿も見たくなるので目が足りない。
浅葱さんは演目が終わると、天井からつられたシルク(布)を、先端についていた紐で括りあげまとめていた。天井の柱にシルクがたれさがり結ばれている光景はサーカス小屋のようで、異世界に迷い込んだようだ。
DX東寺金銀銅杯のこり3日になりました
— 浅葱アゲハ🦋❤️ (@AsagiAgeha) November 18, 2025
平日もたくさんありがとうございます🥹!
お言葉もお気持ちも本当に感謝です
昨日やっとビデオどりできたのでのこり3日でもっとよくしていきたいです🙇♂️
久しぶりのこびとさん、もう金銀銅でしかやっていないので、東寺のこびとさんですね☺️🍂🍁
(きのうは… pic.twitter.com/PgnFgLKRkO
最終回の四回目公演。どの踊り子さんの演目も楽しかった。トリの浅葱さんは圧巻で、初めてこの人を見るのがこの劇場でよかった、初めて東寺に行くのがこの週でよかったと強く思った。出していたのは「こびと」という、森のこびとをイメージしたほんわかとした演目だ。白っぽいショートウィッグと、茶色を基調としたオーガニックな雰囲気のドレスが似合っている。布を時にはためかせ、体に巻き付け、袋のように抱きかかえられたかと思えば、するすると登っていく。
空中で自在にポーズを取る浅葱さんは、女性の体をさらしながら、女でも男でもない、中性のような、少年のような森の妖精に見えた。ストリップを見ていて時に感じるのは、「女性の体を持ちながら、女性ではないなにかになれる」希望だ。胸があろうと、尻が丸かろうと、女性ではないなにかになれる。人でないなにかになれる。はだかを晒したまま、素の自分でない、なりたいなにかになれる。そのことに強い希望を覚えるのだ。
DX東寺に入り、ここは芸事の神様に愛されている空間だと強く感じた。舞台のつくり、さまざまな踊り子たちの痕跡、いまも人が集い、長く使い続けられた劇場。理屈ではなく、その地に来て強く感じた。なぜ映画『国宝』のチームがロケ地にDX東寺を選んだのかは不明だが、芸事をテーマにした映画で、この空間を記録に残すことは、避けられないさだめだと思えた。お出かけ先の晴れ舞台、庶民の楽しみ、俗な心を満たすものまで……この世界にはさまざまな「芸」があり、さまざまな小屋がある。ひとつの芸が時代とともに形を変え、それでも脈々と長く受け継がれひっそりと演じられてきたこの劇場も、芸事に生きた人々の思いが積もり、滲んでいる。
気づけば私はこの劇場が大好きになっていた。来年も絶対にここへ行こうと誓い、軽快なマーチアレンジの蛍の光が流れる劇場を後にした。
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いつもよりもいいおやつを食べます。