40周年の今聴きたい、『THE BADDEST』最新作から選ぶ久保田利伸の4曲
1986年6月に1stシングル「失意のダウンタウン」をリリースし、今年6月でメジャーデビューから40年を迎える久保田利伸。2025年から26年にかけてはデビュー40周年のアニバーサリーイヤーとして精力的に活動している彼だが、その中でリリースされたのが、『THE BADDEST Ⅳ & Timeless Hits』と『THE BADDEST ~Son of R&B~』の2枚のアルバムだ。
『THE BADDEST』と銘打つベストアルバム的な趣の作品は、これまでも何度かリリースされてきた。今回リリースされた2枚は、40年にも渡る彼のキャリアを、時代を超えて多くの人に愛される楽曲群と、R&Bラヴァーならば必聴の楽曲群、2つの視点から捉えることのできるものだ。
そこで今回はこの2枚のアルバムから2曲ずつを選曲し、当メディアならではの視点を交えて紹介したい。
THE BADDEST Ⅳ & Timeless Hits
2025年9月10日リリース。2013年以降のヒットナンバーを収めたDisc1『THE BADDEST Ⅳ』と、キャリア初期から現在に至るまでのヒットナンバーによるDisc2『Timeless Hits』の2枚組だ。
『THE BADDEST Ⅳ』は、2013年リリースの『Bring me up!』以降の楽曲が並ぶが、特に、2020年以降に配信のみのリリースとなっていたシングル曲が収録されたのは嬉しいところ。タイアップがついた曲も多いが、CMやTV番組等で耳にしたことがある曲も、改めてじっくりと耳を傾けたい。
一方『Timeless Hits』は、この40年間、幅広い世代のファンやリスナーがそれぞれの人生の中で共に過ごしてきたであろう楽曲ばかり。オールタイムベストということで、2025年から26年にかけて行われたアニバーサリーツアー『Big up!』(ホールツアー)及び『Big up! "Supreme"』(アリーナツアー)では、本作収録曲も数多く披露された。
LOVE RAIN ~恋の雨~
音の抜き差しが巧みなトラックに、久保田のGrooveのある歌声を存分に味わえるナンバー。身体を預けたくなるループサウンドは4つ打ちキックにハネたベースが絡み、トライアングルやカバサといった小物パーカッションが加わって生まれるビートとなっている。そこにしっとりとした低音ピアノとオルガン、空気のような控え目なストリングスが加わることによって大人っぽさを演出する。
そこに久保田の独特のリズム感がある多重コーラスが加わるが、密度の高い歌声と絡み合ったサウンドは、ずっと浸っていたくなるだろう。(hari)
Boogie Ride ~Ride On Mix~
軽やかなブギーのビートと共にある、それでもこの世界を生きていこうという想い。再生10秒以内に多くの人を魅了して止まないであろうディスコ~ブギーをアップデートしたようなサウンドは、SSWとしても活躍する森大輔との連名によるアレンジだ。そのビートに乗せた歌は、厳しく閉塞感のある世界を如何にサバイブしていくか、という想いが見えるもの。無常の世に真正面から対峙しながらも、軽やかさ、柔らかさ、優しさを忘れない。2020年代だからこそ、久保田のSOULミュージックが必要とされる理由が此処にある。(aoi)
THE BADDEST ~Son of R&B~
2026年3月11日リリース。ヒットソング集的なセレクトが多い他の『THE BADDEST』作品とは違い、久保田のSOULやR&Bマナーが色濃く浮かぶ楽曲ばかりで構成された2枚組。
アルバム収録曲や、90年代半ばから2000年代半ばにかけてUSリリースされた楽曲、さらにはシングルのカップリング収録に留まったものまで、キャリアの隅々に散りばめられた彼のこだわりを抽出したような選曲は、自身の手によるものだ(余談だが、シングルの2曲目以降にこそ名曲が隠されている、という概念は、配信リリースが主流となる近年ではもう見られない事象となってしまった)。
ミディアムなノリから、ディープなスロウ・ジャム、そして得意とするダブやボサノヴァまで。そういった楽曲群に乗せるのは、少し翳りを伴う歌声だ。彼のキャリアを幅広くというよりは、狭く深くといった趣向の作品だが、ファンキーでパーティーの似合う久保田とは少し違った一面をぜひ体感したい。
Summer Sweet
これからの季節にぴったりな、爽やかで穏やかなサマーチューン。
アコギを強く弾く弦の音が左右交互に響くが、いい意味でリズムがズレているため、非常に身体が揺らされてしまうGrooveを感じられる。
また、中盤以降になるとコーラスがどんどん差し込まれていくが、多種多様なものが使われている。隙間を縫うように差し込まれたり、メインボーカルの歌声が伸びているときに投入されたり、シンプルに追っかけるようなもの、乾いた音にするエフェクトをかけたものもある。すごく凝った作りを味わえる一曲だ。(hari)
In the Mood
久保田流のクワイエット・ストームが並ぶ名盤『THE BADDEST ~Only for lovers in the mood~』(2002年)の為に録音されたカバー。原曲はBabyfaceとL.A. ReidがプロデュースしたThe Whispersの1987年作だ。原曲よりもBPMをグッと落としたスロウなテンポと、少ない音数で構成されたトラック。これらがウェットな歌声を際立たせ、そこに随所で漂うMoogシンセサイザーの音色が物憂げな妖艶さを添える。その妖艶さと戯れるようなラスト1分強のアドリブも、この曲が本作に収録される所以だろう。(aoi)
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