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1年で辞めた幹部が、最後に言った「この会社、何のためにあるんすか」

優秀な人が先に辞める会社」に、共通して欠けているもの

経営者: 「うちの幹部、また辞めたんだよな。採用にけっこうかけて、1年で。理由が『方向性の違い』って、それ何?」

コンサルタント: 「方向性の違い、という言葉は正直です。ただ、違いが生まれた場所が、たぶん社長が思っているところと違います。」

経営者: 「採用のミスマッチってこと? 面接で見抜けなかったってやつ?」

コンサルタント: 「逆です。見抜けなかったんじゃなくて、入社後に“答え”が出てしまったんです。その人なりに1年かけて探して、見つからなかった。」

経営者: 「……答えって、何の答え?」

コンサルタント: 「『この会社は、何のためにあるのか』という問いへの答えです。優秀な人ほど、これを最初の1年で探します。社長がその答えを言語化していない会社では、自力で見つけた人だけが残り、見つけられなかった人は去っていきます。採用の問題ではなく、設計の欠落です。」

経営者: 「……それ、俺が悪いってこと?」

コンサルタント: 「悪いというより、まだ言語化していないだけです。でも、それが『集まる力』を決定的に左右します。今日は、その仕組みを整理させてください。」

採用面接の「御社の理念に共感しました」と、最後の1on1で出た「この会社、何のためにあるんすか」。

同じ人間が言った言葉だ。矛盾しているようで、これはひとつながりの話だ。

優秀な人が先に辞める会社の共通点

業種は関係ない。売上規模も関係ない。

30名以下の会社の社長から話を聞いていると、ある共通パターンが見えてくる。「優秀な人ほど先に辞める」。

しかもスパンが読める。入社から半年で「なんか重い」が始まり、10ヶ月前後で静かに距離を置き始め、1年経たないうちに「一身上の都合」か「方向性の違い」で退職届が届く。

残るのは、社長に従順な人か、転職先を探す余裕がない人か。どちらも「この会社の方向で一緒に走ろう」という人じゃない。

社長が感じるのは「採用がうまくいかない」という感覚だ。でも実際に起きていることは、採用じゃなくて定着の問題だ。しかも、定着の問題の根っこは採用プロセスじゃない。

面接を改善しても、オンボーディングを整備しても、また1年後に同じことが繰り返される。根が違うから。

「意味の枯渇」という、社長が気づきにくい消耗

ある経営者が言っていた。「うちは“天井が低い会社”なんだと思う。ナンバー2が来ない、取れない、ってやつ。でも俺には原因がわからなかった」と。

その経営者に正直に言った。

「ナンバー2が来ない、取れないのは、社長の引力が弱いからです。でもそれは才能の話じゃない。『この会社は何を目指しているのか、そこに向かう意味は何か』が言語化されていないから、引き寄せる力が働いていないんです」

これが「意味の枯渇」だ。

意味の枯渇は、給与不満でも人間関係トラブルでもない。もっと静かな消耗だ。

優秀な人って、仕事を「こなす」だけでは満足できない人が多い。自分がここで何かを積み上げている、方向が合っている、という感覚が必要で、それが欠けてくると「力が出せない」状態になる。

カラダの疲れじゃない。燃料が切れていく感覚だ。

そして、意味の枯渇は本人も最初は自覚しない。「最近なんか仕事が重い」「なんとなく楽しくない」から始まって、半年後に「この会社、何のためにあるんすか」という問いになって言語化される。

その問いが出た時点で、もう手遅れのことが多い。

設計の欠落は、日常の小さな場面に出ている

30名以下の会社を50社以上見てきて、はっきりしてきたことがある。意味の枯渇が早い会社には、日常の場面に共通点がある。

朝礼で話されることが「今月の売上どうするか」「この案件を早く回せ」だけ。評価面談で言われるのが「目標達成率が何%だった」だけ。1on1があっても、「仕事の進捗確認」で終わって、「この会社で何を積み上げているか」には一度も触れない。

社長本人が「この事業をやっている意味」を語る場面がない会社では、入ってくる人が意味を見つけるのは自力に頼るしかない。自力で見つけた人は残る。自力で見つけられなかった人は去る。

業績の悪い店には外から見えるサインがある、とある経営者が言っていた。掃除ができていない、入口のポスターが日焼けしている、電話にワンコールで出ない。意味が枯渇している組織にも、同じように外から見えるサインがある。朝礼の話題、評価面談の言葉、社長が何を一番うれしそうに語るか。意味の濃さは、日常の小さな言葉に出てしまう。

これを「採用のミスマッチ」と呼ぶのは、正確じゃない。設計の欠落、だと思う。

集まる力の根にあるもの

組織心理学の文脈では、仕事への意義感を「ジョブ・クラフティング」や「意味形成(sense-making)」と呼ぶことがある。でもそういう用語を持ち出したいわけじゃない。ひとつだけ整理する。

「この会社に来たい」と思う力と、「この会社にいたい」と思う力は、別物じゃない。根は同じだ。

社長が何を目指していて、そこに向かう過程で何が起きるのかが見えている会社には、入る前から人が引き寄せられる。そしてその「見えている感覚」は、入社後も続く。

逆に、そこが曖昧な会社には「条件が良かったから来た人」が集まる。条件で来た人は、もっと条件の良い場所が見つかったら、あるいは条件への不満が積み上がったら、去る。それだけの話だ。

離職率って、「下げよう」と頑張るものじゃない。社長が自分の事業の意味を言語化して、その意味が伝わる組織を作れていれば、結果として下がる。退職面談を増やしても、福利厚生をいじっても、根が違う。

「この会社、何のためにあるんすか」に、今日答えられるか

具体的に何をするか、という話をする。まず確認したいのは、社長自身がこの問いに答えられるかどうかだ。

「この会社は、何のためにある会社なのか」

「ここで働くと、3年後に何が起きるのか」

「この事業をやっている理由は、利益以外に何があるか」

これを、居酒屋で話すくらいの自然な言葉で言えるかどうか。資料を用意するとか、理念を作るとか、そういう話じゃない。

言えない社長は、この問いを持ったまま次の採用をしている。次の人も、同じように1年で同じ問いを出して去っていく可能性が高い。

言えるようになると、何が変わるか。採用面接で伝えられるものが増える。朝礼や1on1で語れることが増える。評価面談が「達成率の確認」から「この会社で積み上げていることの確認」に変わる。

そうなると、意味を探している優秀な人が「ここに答えがある」と感じて残るようになる。最初の一歩は、自分が「何者か」「何のためにやっているか」の骨格を見えるようにすることだ。

次回:「集まる力」の設計、構造ごと見せる

今回は「意味の枯渇」という切り口で、離職と採用の問題を整理した。

次は、「意味を伝える組織の設計」。社長がどうやって意味を日常の言葉に落とし込むか、朝礼・評価・1on1という3つの場面ごとに具体的に見せていく。

幹部が続かない会社で何が足りないか、「この会社、何のためにあるんすか」に答えられるかどうかが判断点になる。社長自身の骨格——どんな経営者で、どのタイプの組織に向いているか——が見えると、次に誰を採り、何を伝えるべきかが変わる。

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「引力社長」なのか「何でも屋社長」なのか、社長自身のタイプを把握すると、採用で何を語るべきか・定着に何が欠けているかが一気に見えてきます。

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