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目の前の一人の患者様

医療を実践する人は、大きく二つに分かれる気がする。
マニュアルに従う人と、オリジナルで行う人だ。
鍼灸の世界は特にその傾向が強い。
古典派は古典の概念に患者を当てはめ、西洋医学派は解剖学や生理学、エビデンスという名の統計学に患者を当てはめる。
私はそれが嫌いだ。
では、どうあるべきか——私自身の経験から考えてみたい。

毎日、多くの患者様と関わらせていただいています。
どのように患者様をケアするか、常に頭を悩ませています。
長らく医学を勉強し、経験を積んできましたが、ここにきて改めて思うことがあります。

これまで西洋医学である生理学や解剖学、生化学や病理学などを若い頃から学び、今も続けています。
東洋医学も古典から多くを学ばせてもらっています。
ヒトの身体のメカニズムや構造、東洋医学的思想による自然界との調和、陰陽論や五行論、経絡学説——要は、基礎的な知識から過去の症例まで、幅広く学ぶということです。

しかし、それらの情報の中に、目の前の患者様は含まれていない。

尽きるところ、私たちが行う医療とは「目の前の患者様」がすべてであり、それ以下でも、それ以上でもない。

誰かと比較することは参考になるが、鵜呑みにはできない。
目の前の患者様の状態をしっかり把握し、そこから考えられることを考察して治療に当たる。
どれだけ目の前の患者様のことを理解できるか、それだけだと思う。
もちろん、理解するには基礎的な知識が重要だ。
しかし、ある程度の規則性が分かった上で、目の前の患者様をよく観察することがすべての始まりになる。
すると必ず何かがある。
身体に反応として表れているかもしれない。
精神的に反応が表れているかもしれない。食事や嗜好品に反応が表れているかもしれない。

目の前の患者様を詳しく知ることで、何かが分かる。
今の状態から原因を遡り、そこから回復への道筋を描く。
その往復を繰り返すことが、治療の本質だと思っています。

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