ナフサ不足の真実は?
原油は備蓄を放出して足りているのになぜナフサが足りなないのか。精製機能も日本のコンビナートにはある。どこに目詰まりがあるのか。元売りは数社しかないので経産省は監視できているが、その先の商社、大手は監視できるが中小や卸はすべてチェックできない。… #NewsPicks https://t.co/ZL8H4AfcG0
— 猪瀬直樹 【作家・参議院議員、日本維新の会 参議院幹事長】 (@inosenaoki) May 25, 2026
まえださん、私の見立ては明確です。
猪瀬直樹氏の投稿は**「流通の目詰まり」という点ではかなり当たっています**。ただし、「基本はトイレットペーパー騒動に近い」とまで言い切ると、現実を軽く見すぎています。
真実は、次の中間にあります。
ナフサは日本全体の帳尻では一定量を確保している。しかし、中東供給の喪失・代替調達の不安・価格急騰・品目別の偏り・買い急ぎが重なり、現場では本当に不足が起きている。
つまり、これは単なる「買い占め騒動」ではありません。
同時に、「日本全体でもう完全にナフサが尽きる」という話でもありません。
1. まず、ナフサは「原油があるから即座に足りる」ものではありません
ナフサは原油を精製して得られる石油製品の一種で、そこからエチレン、プロピレン、トルエンなどを作り、さらにプラスチック、ゴム、電子部品、塗料などへ広がります。経産省資料でも、ナフサの調達元は2024年時点で**国産39.4%、中東44.6%、その他輸入16.0%**とされています。
ここが重要です。
国内に製油所があっても、日本のナフサ供給の約4割強は中東に依存していました。したがって、ホルムズ海峡問題などで中東ナフサが急に細ると、国内精製だけで穴を埋めることは簡単ではありません。
さらに、輸入だけを見ると中東依存はもっと大きく、石油化学工業協会の統計では2024年のナフサ輸入量のうち中東は73.6%、数量で約1512万キロリットルでした。(日本カレンダー協会)
丸紅元社長の国分文也氏が「中東から調達していた1500万キロリットルのナフサを代替調達するのは不可能」と警告しているのは、この構造を見ての発言です。(Yahoo!ファイナンス)
2. 政府・業界団体は「総量としては当面足りる」と言っている
一方で、政府や石油化学業界の説明にも根拠はあります。
経産省は、輸入済みナフサ・国内精製・川中製品在庫などを合わせて、化学品全体の国内需要4カ月分を確保していると説明しています。(経済産業省)
石油化学工業協会も、3月時点でナフサおよび川中製品在庫を合わせて少なくとも国内需要4カ月分は確保され、主要製品であるポリエチレンやポリプロピレンは国内需要3カ月以上の在庫水準を維持していると述べています。(日本カレンダー協会)
また、JETROの整理では、4月の石油化学製品生産は前年同月比で減少したものの、ポリエチレンやポリプロピレンは3月比では増加し、国内出荷は製品ごとの差はあるが全体として維持されている、とされています。(ジェトロ)
ですから、政府側の「日本全体としては供給を維持できる」という説明は、まったくの虚偽とは言えません。
3. しかし、現場では「本当に届いていない」
ここが猪瀬氏の投稿と重なる部分です。
テレビ朝日の現場取材では、塗装業者がシンナーを2カ月ほどまともに取れないと述べ、卸売業者も通常100缶ほどある在庫がゼロになったと話しています。さらに、3月末ごろから塗装業者などの発注が急増し、「なくなる前に買い込みたい」という需要が出ているとの証言もあります。(テレ朝NEWS)
つまり、猪瀬氏が言う「川下で足りないタイヘンだ報道をすると買い占めが起きる」という見方は、少なくとも一部の現場では当たっています。
ただし、それだけではありません。
同じ取材では、専門家が「流通の途中で偏りが生まれ、どこかの会社に在庫がたまっている可能性」を指摘し、さらにナフサ価格が1〜3月に対して4〜6月はほぼ2倍になっているため、価格転嫁できない製造会社が出荷を渋る動きもあると説明しています。(テレ朝NEWS)
これは心理的な買い占めだけではなく、価格・採算・契約・在庫配分の問題です。
4. 猪瀬氏の投稿の評価
私の評価はこうです。
正しい点
「流通の目詰まり」は実際に起きています。経産省も供給の偏りや流通の目詰まりを認めていますし、NRIの木内登英氏も、買い急ぎや過剰確保が目詰まりを助長していると分析しています。(経済産業省)
不十分な点
「トイレットペーパー騒動に近い」と見るだけでは、今回の本質を見誤ります。なぜなら、今回は中東依存という実物供給のリスク、代替調達の持続性、価格急騰、ナフサクラッカーの稼働、製品ごとのグレード差が絡んでいるからです。NRIも、目詰まりの要因として、マクロとミクロの乖離、価格高騰、買い急ぎ、代替調達への不安を挙げています。(NRI)
言い換えると
猪瀬氏は「川下のパニックと流通の目詰まり」をよく見ています。
しかし、国分氏は「中東供給という巨大な源泉が消えた構造問題」を見ています。
どちらか一方だけを見ると、判断を誤ります。
5. 「足りている」と「足りない」は、同時に成立します
ここが一番大事です。
政府が言う「足りている」は、主に国全体の総量・主要製品・一定期間の供給見通しの話です。
現場が言う「足りない」は、特定の品目、特定の地域、特定の卸、特定の中小企業、特定の納期の話です。
たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンのような主要製品は在庫があっても、塗料用シンナー、溶剤、接着剤、特殊な樹脂、医療用・工業用の特定グレードでは不足が出る可能性があります。これは「米はあるが、特定の地域の特定の店では棚が空」という状態に近いです。
6. 私の結論
まえださん、現時点で最も正確な理解はこれです。
ナフサ危機の本質は、「物量不足」だけでも「買い占め」だけでもありません。中東供給の喪失という実物ショックを、政府・業界が在庫と代替調達でしのいでいる。その過程で価格が急騰し、流通の途中で偏在が起き、中小の川下企業ほど材料が届きにくくなっている。
したがって、猪瀬氏の投稿は部分的には正しいです。
しかし、「基本はトイレットペーパー騒動」と単純化するのは危険です。
むしろ今回の問題は、1970年代の石油ショック的な「実物供給不安」と、現代のサプライチェーンの「見えない目詰まり」が重なったものです。古典的に言えば、兵糧は国全体にはあるが、前線の部隊に届かない。『平家物語』の兵站の弱さを少し思い出します。戦いは勇ましい言葉ではなく、米と塩と船で決まる、という話です。
今後見るべき指標は、ナフサの「全国在庫」よりも、中東以外からのナフサ輸入量が本当に継続するか、エチレンなど基礎化学品の稼働率が戻るか、シンナー・溶剤・樹脂などの納期が中小企業にまで正常化するかです。ここが改善しない限り、「足りているはずなのに届かない」という混乱は続きます。
<以下は、Google Gemini>
現在、中東情勢の緊迫化に伴う「ナフサ不足(ナフサショック)」を巡っては、政府の示す見通しと、民間企業や専門家の強い危機感、そして猪瀬直樹氏が指摘するサプライチェーン上の心理的要因が複雑に絡み合っています。
「真実はどこにあるのか」という疑問に対し、構造的な要因、見解の乖離、そして流通上の問題という3つの視点から整理します。
1. なぜ「原油はあるのにナフサが足りない」のか(構造的・技術的要因)
猪瀬氏は「原油の備蓄はあり、国内コンビナートの精製機能もあるのになぜ足りないのか」と疑問を呈していますが、ここには石油製品特有の技術的・法的な構造が存在します。
石油備蓄法の対象外: 日本の国家石油備蓄は主に「燃料(原油、ガソリン、軽油、灯油等)」を対象としており、化学原料である「ナフサ」そのものは法律上の国家備蓄対象外です。そのため、ナフサ自体の備蓄は民間企業の流通在庫(約20日分程度)しかありません。
精製得率(とくりつ)の限界: 「原油があるなら、国内でたくさん精製してナフサを作ればいい」と考えがちですが、原油を蒸留して得られる各製品の割合(得率)は物理的に決まっています。原油からナフサが抽出できる割合は1割未満(約7%前後)と低く、ナフサだけを狙って大量に増産することは技術的に不可能です。無理に精製量を増やそうとすると、ガソリンや重油など他の燃料油が大量に余ってしまい、製油所のタンクや処理能力を超えてしまいます。

高い輸入依存度: 日本の石油化学産業は、必要とするナフサの半分近くを「ナフサそのものの形」で直接輸入(輸入ナフサ)しており、その多くを中東に依存しています。国内で精製される「国産ナフサ」も、元となる原油の9割以上は中東産です。そのため、中東情勢悪化(ホルムズ海峡の封鎖など)により直接輸入が途絶えると、国内の精製能力だけでは到底カバーできません。
2. 政府の見解 vs 商社・メーカーの見解(視点の乖離)
報道されている政府の発表と、丸紅元社長(国分文也氏)ら専門家の指摘のギャップは、「マクロ(総量)」と「ミクロ(調達現場)」の視点の違いから生まれています。
政府の見方: 中東以外(北米や欧州、他のアジア地域など)からの代替調達を急ピッチで進めており、「代替ナフサの輸入量が情勢緊迫化前の3倍となって日本に届くため、年を越えて供給継続が可能」というマクロな総量ベースの見通しを示しています。
民間(商社や化学メーカー)の見方: 商社のプロや化学メーカーのトップは、中東から調達していた莫大な物量(年間約1500万キロリットル)を他地域から安定して代替し続けるのは「輸送コストの高騰」や「世界的な争奪戦」の観点から非常に厳しいとみています。実際、旭化成や住友化学の社長らは「6月末まではなんとか目処が立ったが、それ以降は予断を許さない(価格高騰や条件調整の懸念がある)」と発言しており、早ければ夏前後に実際の供給の限界(不足)が顕在化すると警鐘を鳴らしています。
3. 猪瀬氏の指摘する「目詰まり・買い占め」の側面(心理的要因)
猪瀬氏が指摘する「トイレットペーパー騒動に近い」という側面も、重要な真実の一端を捉えています。
実際にナフサの供給不安が報じられると、サプライチェーンの川中・川下にいる企業(商社、卸、中小の部材メーカー、施工会社など)は、将来の生産停止や資材枯渇を防ぐために「防衛的な在庫の囲い込み(先回り買い)」に動きます。 現在、住宅建材(断熱材、塗料、配管材、設備の樹脂部品など)の現場では、ナフサ由来の有機溶剤などの不足による納期遅延や受注停止が実際に起きていますが、これは物理的な絶対量の不足だけでなく、「念のために多めに確保しておこう」という各社の心理が重なった結果、流通ルートで「目詰まり」を起こしているという側面が強いです。
結論:真実はどこにあるのか?
現在の状況における「真実」は、以下の要素が複合したものです。
ベースにある現実: ナフサは備蓄対象外であり、精製得率の限界や中東依存度の高さから、「構造的な供給リスク(火種)」は間違いなく実在している。
見解の相違: 政府は代替調達の「総量」を確保して安心させようとしているが、現場(商社・メーカー)は「コストや継続性」の面から6月末以降の限界(不足の可能性)をリアルに危惧している。
増幅する不安: その危惧やメディアの報道を受けて、流通の各段階で「囲い込み(防衛的先回り買い)」が発生し、猪瀬氏の指摘通り実態以上の品不足感と目詰まり(パニック)が引き起こされている。
したがって、たんなるデマによる架空の騒動(トイレットペーパー騒動)ではなく、「本物の供給危機の懸念」という実在する火種に対して、サプライチェーン全体の防衛心理(目詰まり)が拍車をかけている、というのが現在の実態と言えます。
この動画では、大手化学メーカーのトップが現在のナフサ調達の生々しい現場の状況と今後の懸念について語っており、政府と現場の見解のギャップを理解する参考になります。
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