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鉄道会社ではなく、鉄道を動かす会社。受注残309億ドルのWabtec(WAB)を調べてみる

鉄道株と聞くと、線路を持って列車を走らせる会社を思い浮かべる。

しかし、Wabtecは鉄道を運営する会社ではない。

機関車、ブレーキ、連結器、保守、信号システム、運行最適化ソフトウェアまで、鉄道を安全かつ効率的に動かすための設備とサービスを提供する会社だ。

2026年4~6月期は売上高が前年同期比17.5%増加し、調整後営業利益率は21.9%まで改善。複数年の受注残は309.3億ドルに達した。

数字はかなり良い。

ただ、決算発表後に株価も約10%上昇している。

今回はWabtecが何で稼いでいるのか、アフターサービスの収益性、競合との違い、今から買える株価なのかを整理してみる。

Wabtecは何をしている会社か

Wabtecの正式社名はWestinghouse Air Brake Technologies。

社名には「Air Brake」と入っているが、現在はブレーキ部品だけの会社ではない。

事業は大きく、貨物鉄道部門と旅客鉄道部門に分かれている。2025年の売上構成は、貨物鉄道部門が約72%、旅客鉄道部門が約28%だった。

貨物鉄道部門では、新造機関車、既存機関車の更新、ブレーキや連結器などの車両部品、保守、オーバーホール、信号設備、列車制御、運行最適化ソフトウェアを提供している。

旅客鉄道部門では、高速鉄道、地下鉄、ライトレール、バス向けに、ブレーキ、ドア、空調、連結器、電源装置、信号・制御システムなどを供給している。鉱山、船舶、産業設備向けの製品も持っており、鉄道を中心にしながら周辺市場にも展開している。

つまりWabtecは、

車両を製造して終わる会社ではなく、導入後の保守、部品交換、近代化、デジタル制御まで取り込む会社

と考えると分かりやすい。

売上だけでなく、利益率とキャッシュも改善

2026年4~6月期の売上高は31.8億ドルで、前年同期比17.5%増加した。

GAAP営業利益率は18.9%、調整後営業利益率は21.9%。調整後EPSは21.6%増の2.76ドルだった。営業キャッシュフローも前年同期の2.09億ドルから4.41億ドルへ増加している。

貨物鉄道部門の売上高は16.9%増加した。

新造・更新機関車を含む設備売上が35.0%増えた一方、サービス売上は近代化車両の納入減少により4.2%減少した。デジタル売上は88.5%増えたが、Inspection TechnologiesとFrauscher Sensor Technologiesの買収効果が含まれている。

旅客鉄道部門は18.9%増収。既存の車両向け製品やアフターマーケットに加え、Dellner Couplersの買収と為替が寄与した。為替影響を除いても17.7%増えている。

増収のすべてが既存事業の自然成長ではない。

それでも、買収した事業を取り込みながら利益率とキャッシュフローまで改善している点は評価できる。

会社は2026年の売上高見通しを123億~126億ドル、調整後EPSを10.60~10.90ドルへ引き上げた。中央値では、売上高が前年比11.5%増、調整後EPSが19.9%増える計画になる。

アフターサービスは本当に高収益なのか

Wabtecの重要な強みが、約2万4,600両の機関車を中心とする大きな設置済み基盤だ。

既に稼働している車両に対して、交換部品、保守、オーバーホール、近代化、デジタル機能の追加を長期間販売できる。

会社によると、アフターマーケットの部品・サービスは全社売上高の約60%を占める。Wabtec自身も、アフターマーケットは新造設備より利益率が高く、景気変動の影響も比較的小さいと説明している。

2025年の会計上のサービス売上高は19.06億ドル、サービス原価は11.17億ドルだった。

この数字から計算したサービス粗利率は約41.4%になる。

一方、製品売上高は92.61億ドル、製品原価は62.44億ドルで、粗利率は約32.6%。サービスの方が約8.8ポイント高かった。

ただし、ここには注意が必要だ。

会計上の「サービス売上」と、会社が説明する「アフターマーケット売上」は同じ区分ではない。交換部品や設備更新の一部は製品売上に含まれる可能性があるため、アフターマーケット全体の粗利率が41.4%という意味ではない。

それでも、車両を納入して設置済み基盤を増やすほど、高収益な保守や部品需要を長期間積み上げられる構造は確認できる。

受注残は年間売上高の約2.5倍

2026年6月末の複数年受注残は309.3億ドル。

前年同期から91億ドル増加し、為替影響を除く増加率は41.3%だった。今後12カ月分の受注残も前年同期比11.3%増えている。

2026年の売上高見通しの中央値は124.5億ドルなので、複数年受注残は年間売上高の約2.5倍に相当する。

もちろん、309億ドルがすべて翌年の売上になるわけではない。

鉄道案件は数年間に分けて納入されるため、売上計上の時期や採算は案件ごとに異なる。それでも、数年先の仕事を確保している点は、一般的な産業機器企業と比べて業績を見通しやすくする。

大手顧客から大型案件を獲得

Wabtecは2026年2月、Union Pacificと12億ドルの機関車近代化契約を締結した。

これは鉄道業界で過去最大規模の機関車近代化契約とされており、既存機関車の寿命延長、燃料消費の削減、信頼性の向上、制御・診断機能の追加を行う。

CSXからも、新造機関車100両、近代化機関車50両、デジタル機能やサービスを含む6.7億ドルの案件を獲得している。

ブラジルの資源大手Valeとは、約10億ブラジルレアル規模で、2つの鉄道へ列車制御システムを導入する契約を結んだ。列車をリアルタイムで監視し、危険時には自動介入するシステムで、2031年まで段階的に導入される。

ニューヨークのMTAからも、ハイブリッド式作業用機関車の追加発注として3.86億ドルを獲得している。

Wabtecは詳細な世界シェアを開示していない。

ただ、貨物鉄道、都市交通、資源鉄道という異なる市場で大型案件を繰り返し受注していることは、顧客基盤と製品競争力の裏付けにはなる。

競合と比べて何が違うのか

Progress Rail

貨物機関車で最も直接的な競合が、Caterpillar傘下のProgress Railだ。

Wabtec自身も、機関車分野の主要競合としてProgress Railを挙げている。Progress RailはEMDブランドの機関車を持ち、北米貨物鉄道でWabtecと競合する。

ただし、Progress RailはCaterpillarの一部門であり、単独の売上高や利益率は十分に開示されていない。

Wabtecは機関車だけでなく、部品、保守、列車制御、デジタルまで一体で提供できる点が特徴になる。

Knorr-Bremse

鉄道部品とアフターマーケットで強い競合が、ドイツのKnorr-Bremseだ。

Wabtecは、北米の部品市場やサービス・修理、北米以外の市場における主要競合としてKnorr-Bremseを挙げている。

Knorr-Bremseの鉄道車両システム部門は、2025年に16.5%の営業EBIT利益率を記録した。高収益なブレーキ・部品・保守企業という点では、Wabtecに最も近い比較対象だ。

Knorr-Bremseが部品と保守への集中度が高いのに対し、Wabtecは機関車本体、近代化、信号、運行管理まで事業範囲が広い。

Siemens MobilityとAlstom

旅客車両や大規模な鉄道システムでは、Siemens MobilityとAlstomが競合になる。

Siemens Mobilityは車両、信号、ターンキー式鉄道システム、顧客サービスを展開し、2026年度の利益率見通しを8~10%としている。

Alstomは旅客車両や大規模鉄道システムで世界的な事業基盤を持ち、2025年度の受注残は1,000億ユーロを超えた。一方、2025/26年度の調整後EBIT利益率は6.1%だった。

会計基準、対象期間、調整項目が異なるため単純比較はできない。

それでも、Wabtecの調整後営業利益率21.9%は目立つ。

Siemens MobilityやAlstomは大規模な車両・システム案件を多く抱えるため、案件の遅延やコスト超過の影響を受けやすい。Wabtecは貨物鉄道の比率が高く、設置済み車両から部品・保守・近代化を繰り返し得られる点が、収益性の違いにつながっていると考えられる。

良い数字の裏にある注意点

まず、今回の増収には買収効果が含まれている。

デジタル売上の88.5%増はInspection TechnologiesとFrauscherの買収が主因で、旅客鉄道部門にもDellnerの買収が寄与した。既存事業だけの成長率は、決算の見た目より低い可能性がある。

次に、サービス売上は必ずしも毎四半期安定するわけではない。

2026年4~6月期の貨物鉄道向けサービス売上は、近代化車両の納入減少によって4.2%減少した。大型改修案件の時期によって売上が変動するため、完全なサブスクリプション型ではない。

財務面では、2026年6月末の現金等が6.7億ドル、総負債が65.7億ドルだった。営業キャッシュフローは強いものの、今後は買収先の統合、負債削減、買収を除いた成長率を確認したい。

企業は良いが、決算直後は追いにくい

7月22日のWABは290ドルで終了し、前日比約10%上昇した。

始値は272.89ドル、安値は266.58ドル、高値は295.40ドル。出来高は約326万株まで増えている。

会社予想の調整後EPS中央値10.75ドルを使うと、290ドル時点の予想PERは約27倍になる。

成長率と利益率を考えれば説明できない水準ではないが、決算直後に急騰した株を追いかけるには、それなりの価格だ。

自分なら、上向きの10週移動平均線付近まで株価が調整するか、数週間横ばいになって10週線が追いつく展開を待ちたい。

確認したいのは、下落時の出来高が決算日の出来高より減ること、決算後に開けた窓を大きく崩さないこと、10週線が上向きを維持すること。

10週線付近で売りが細り、再び出来高を伴って反発するなら、業績とテクニカルの両方がそろった入り方になる。

現時点の結論

Wabtecは、単なる鉄道車両メーカーではない。

機関車や部品を納入し、その後も保守、部品交換、近代化、デジタル制御を長期間積み上げる鉄道インフラ企業だ。

2026年4~6月期は売上高が17.5%増え、調整後営業利益率は21.9%まで改善。営業キャッシュフローも増え、受注残は309.3億ドルに達した。

Union Pacific、CSX、Vale、MTAなどから大型案件を獲得しており、顧客基盤も強い。

企業としてはかなり良い。

ただ、決算後に株価も約10%上昇し、予想PERは約27倍まで上がっている。

現時点では、

高品質な鉄道インフラ企業。ただし、買うなら決算後の熱が冷めてから

という見方になる。

10週移動平均線付近までの健全な調整か、数週間の横ばいを待ちながら、アフターサービスの回復、買収を除いた成長率、受注残の採算を追っていきたい。



※この記事は個人的な調査と投資メモであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記事内には会社が定義する非GAAP指標を含みます。また、競合各社とは会計期間や利益指標の定義が異なるため、数値の単純比較には注意が必要です。投資判断はご自身の責任でお願いします。

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