メタバースに灯るサンリオの光:みんななかよくの未来へ
サンリオは今、「灯台構想」と呼ばれる10年計画を掲げている。
自社だけでなく他社のキャラクターやIPも包み込み、
世界に「笑顔の灯り」を広げるというものだ。
そのビジョンの一端は、すでにメタバースの中で形になりつつある。
バーチャルの海に光をともすサンリオの挑戦を、少し丁寧に見つめてみたい。
キャラクターから社会をつなぐ
サンリオというと、「ハローキティ」や「マイメロディ」など、かわいいキャラクターを思い浮かべる人が多いだろう。
けれど、この企業の本質は単なるキャラクタービジネスではない。
創業者である、辻信太郎氏が掲げた理念「みんななかよく」は、戦争体験を背景に生まれた「人と人が仲良くする社会を作りたい」という思いの象徴である。
サンリオは60年以上にわたって、その理念を「ギフト文化」として形にしてきた。
雑貨や文具のデザインを通じて「贈り物を介したつながり」を広げてきた企業であり、キャラクターはその媒介として存在している。
ライセンス事業という仕組み
現在のサンリオの収益の中心は「ライセンス事業」だ。
他社が自社商品にキャラクターを使うとき、その使用料としてライセンスフィーを受け取る仕組みである。
たとえば、お菓子や飲料のパッケージ、家電、アプリのスタンプなど、私たちの身の回りにある多くの「かわいい」商品の裏には、この契約がある。
このビジネスの特徴は、キャラクターを「共通の言語」として企業をつなげる点にある。
実際、サンリオのライセンス事業の営業利益率は60〜70パーセントと高く、世界各地の企業との協業によって収益基盤を築いている。
「ハローキティ」に依存しない多様化戦略
10年前まで、サンリオの海外売上の多くは「ハローキティ」だった。
だが今ではその割合は3割台にまで下がり、「シナモロール」や「クロミ」など、複数のキャラクターが国や世代ごとに支持を広げている。
特に中国では「クロミ」が大きな人気を得ている。
SNSを通じた発信から人気が広がり、サンリオが現地企業と連携して商品化を進めた結果、売上が急伸した。
サンリオはこうした潮流をいち早くつかみ、キャラクターの多様性を企業戦略の中核に据えている。
「灯台構想」とこれからの10年
2025年、サンリオは10年後に時価総額5兆円を目指す「灯台構想」を発表した。
これは、自社キャラクターにとどまらず、他社のIP(知的財産)も扱う「IPプラットフォーマー」になるという構想だ。
サンリオが掲げる「みんななかよく」は、もはやスローガンではない。
他社IPを受け入れ、共に成長することで、キャラクターの境界を越えた「協働のプラットフォーム」を築こうとしている。
映像、ゲーム、スポーツなどへの展開も始まっており、Netflixやワーナー・ブラザーズとの共同プロジェクトも進行中だ。
これは単なるキャラクタービジネスの拡大ではなく、「文化を媒介する企業」への進化と言える。
つまり、サンリオは「キャラクターを軸に他者とつながるための仕組み」を、現実とデジタルの両面で作ろうとしているのだ。
メタバースに広がる「みんななかよく」
この理念を最も直接的に形にしているのがメタバース事業である。
ここで言うメタバースとは、単なる仮想空間ではなく、「人と人の感情や文化が交わる共有空間」を意味している。
ディズニーランドが「夢の国」を現実に再現したように、サンリオはその「つながりの理念」をバーチャル上で再現している。
サンリオは2021年にVRChat上で「SANRIO Virtual Fes in Sanrio Puroland」を初開催し、世界中のユーザーを集めた音楽フェスを成功させた。
翌2022年には制作体制を拡充し、クリエイターとの共創を進め、2023年には「コミュニケーション」をテーマに第2回を開催。
パレードを模した演出や共同制作イベントを通じて、ユーザー同士の交流を生み出す場として発展した。
さらに2024年には開催期間を1か月に拡大し、常設型の「バーチャルピューロランド」として運営。
現実のピューロランドが「会えるテーマパーク」だとすれば、バーチャルピューロランドは「つながるテーマパーク」である。
わたしのVRChatのフレンドの一人も、実際にこのイベントを訪れていた。
フレンドは自分のアバターに着せるため、サンリオキャラクターとのコラボ衣装を購入し、フェスのステージをキャラクターたちと同じ空間で楽しんだという。
お久しぶりです。なるめです。
— なるめ (@narume_toro) September 20, 2025
サンリオVfesに行って来ました。ピューロオタの自分が最初に感動したのは閉園時間表記です。再現度がすごい。
微妙に早いんですよね。遠方勢の私は夜行バスまでの時間が暇だったりします。
あと、Trustedにあがってました。私もついに仲間入りです。#サンリオVfes pic.twitter.com/jtjlZGdSn8
バクがマイメロのカチューシャつけてるだけで、オタクの私は大歓喜なわけなんですね pic.twitter.com/l6Utkqejfm
— なるめ (@narume_toro) September 20, 2025
Vfesでピューロの出口で配布されてる“アレ”を見つけて大興奮のなるめ#サンリオVfes pic.twitter.com/eG1OPlUJ1O
— なるめ (@narume_toro) September 21, 2025
リアルピューロオタクの自分は大人しくピューロランドのロゴポップコーン食べましょうね#サンリオVfes pic.twitter.com/saFvE9JKHV
— なるめ (@narume_toro) September 21, 2025
画面越しの体験であっても、そこに感じた高揚感は確かだったらしい。
実際にリアルのピューロランドへ足を運んだ経験のあるフレンドも大興奮である。
これは、デジタルツインの成功例と呼べるだろう。
メタバースが現実の行動や感情を動かすことを、その話からも強く実感した。
そして、サンリオに直接関係のないクリエイターやアーティストも、このフェスに多数参加していた。
それは、サンリオが掲げる「みんななかよく」をデジタルの空間で実験的に実装した結果でもある。
ブランドの外にいる人々が、同じテーマの下で協働できること。
それこそが、サンリオがメタバースで目指している未来の形なのだと思う。
サンリオが描くキャラクターがつなぐ未来
サンリオのキャラクターたちは、ただの「かわいい絵」ではない。
その背後には、人々の心の在り方、そして「つながりたい」という願いが映っている。
企業が築いてきた文化は、今やSNSやメタバースを通じて、より多くの人々の生活の中に入り込んでいる。
キャラクターを通じて社会をつなぐという姿勢は、ネットワークが生活に浸透するこれからの時代において、非常に現代的な企業哲学だと思う。
「みんななかよく」という言葉は、戦後の夢物語ではなく、デジタル社会の中で再び力を持ちはじめている。
サンリオが掲げる灯台の光が、この新しい海の上でどのように広がっていくのか。
この先進的な取り組みを、わたしも引き続き見つめていきたい。
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