AIの歴史を旅しよう#2:AIの知識表現とセマンティクス
AIを理解するうえで欠かせないテーマのひとつが「知識表現(Knowledge Representation)」です。これは、人間が持つ知識をコンピュータが扱える形に構造化することを意味します。推論や対話、判断を行うためには、AIが世界に関する情報を持ち、それを“意味”として理解できる必要があります。しかし、この「意味をどう表現するか」はAI研究において長年の課題でした。
意味ネットワークとは
意味ネットワーク(Semantic Network)は、知識を ノード(概念)とリンク(関係) のかたちで表現する方法です。
例:
「犬」は「動物」の一種(is-a)
「車」は「タイヤ」を持つ(part-of)
このように、概念と概念を結びつけることで、AIが“世界の構造”を理解しやすくなります。
意味ネットワークの利点は、直感的で人間にも分かりやすい点です。一方で、複雑な知識体系をすべてネットワークで表現しようとすると、膨大なノードやリンクが必要になり、管理が困難になるという課題もあります。
オントロジー:より体系的な知識の整理
意味ネットワークの課題を踏まえ、より体系的に知識を定義するアプローチとして登場したのが オントロジー(Ontology) です。
オントロジーは、
概念(クラス)
属性(プロパティ)
関係(リレーション)
を明確に定義し、世界の構造を論理的に記述します。
ヘビーウェイトオントロジー
学術的で厳密な構造を持ち、哲学的な分類や論理体系を重視します。例としては医療や科学分野のように、知識の正確性が求められる場面で利用されます。
ライトウェイトオントロジー
Webサービスや企業データで使われる、より実用的で軽量なモデルです。現代では セマンティックウェブ や LOD(Linked Open Data) の基盤として広く活用されています。
たとえば、検索エンジンが「東京」と検索したときに、
都市である
日本に属する
観光地や施設との関係がある
といった意味を理解して情報を整理するのは、こうしたオントロジーとナレッジベースのおかげです。
ナレッジベースと推論
ナレッジベース(Knowledge Base)は、オントロジーやルール、事実を格納した知識のデータベースです。AIは、ナレッジベースに蓄積された知識をもとに、推論エンジンを使って判断を行います。
たとえば、
「すべての犬は哺乳類である」
「ポチは犬である」
という知識があれば、AIは「ポチは哺乳類である」と推論できます。
これはAI研究初期から続く「記号処理AI(シンボリックAI)」の代表的な方法であり、近年の機械学習中心の潮流のなかでも、再び注目が高まっています。

ディープラーニング時代における知識表現の重要性
深層学習が主流になった現在でも、知識表現の研究はむしろ重要度が増しています。理由は以下の通りです。
深層学習は大量のデータに依存し、論理的な推論が苦手
生成AI(LLM)は知識を構造化して保持しているわけではない
ビジネスでは、データとルールの両方を扱う必要がある
そのため、「記号処理×機械学習」の融合(Neuro-Symbolic AI) が次の大きな流れとも言われています。
これは、AIに既存の知識体系を活用させつつ、データからの学習能力も持たせるためのアプローチで、今後のAIの発展を支える技術として注目されています。
知識表現は、一見すると専門的に感じられますが、AIが「世界をどう理解し、どう判断するのか」を考えるうえで非常に重要です。AIの歴史を学ぶ際にも、この概念を押さえておくことで理解が格段に深まります。
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