読書記録|若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」

2017年下半期・芥川賞受賞作。
最近、地元宮城と故郷岩手の本が読みたい気分で。

岩手で生まれ24歳の時東京に飛び出した、74歳の桃子さんの物語。
夫を亡くし子ども達は独立しひとり暮らしの今、故郷の言葉で思考が沸き上がってくる。その声と対話するうち、いつしか……

桃子さんの思考がひたすら彼女の故郷遠野弁で語られる、不思議な物語。思考は思い出と相まって桃子さんに語りかけ、いつしか現実と渾然一体となってゆく。

正直、途中で
……えっこれ、ずっとこの調子で続くの?
と思ってしまった(そして実際、ずっと「この調子」で続く)。

思考が日常使わない方言になることは、私もある。故郷くにの言葉が突然頭にどんどん浮かぶこともあるし、かつて職場で大阪弁に囲まれた時は大阪弁、仙台弁に囲まれたときは仙台弁で頭がいっぱいになって、気がついたら頭の中で話していた。方言にはそんなパワーがある。
(あくまで頭の中だけで、ネイティブの前でそれを口に出す勇気はないけど)

でもその思考をそのまま小説にするという発想は、あまりにパンクすぎてすごい。

アイデアを思いつくこととそれを実行してやりきることは、天と地ほどの差があると思う。お笑いでも小説でもなんでも。

そうだ、海パン一丁で「そんなの関係ねえ、おっぱっぴー」ってやったら面白いんじゃん、って思いついたとして(絶対思いつかないけど)実際それをやれるか? やれませんよ。

そうだ、故郷くにの言葉で頭がいっぱいになったからラップやジャズセッションみでに語ってみるべ、んで小説にするべ、っつってそれだけで何万字書げっか?
書けねえよ。

それをやりきった、当時新人の若竹さん。
正直、物語の世界に入り込めたかというと少々厳しかったけど。年齢的にもう少し桃子さんに近づいたら、共感できるのかも。
でも若竹さんのパンク精神は大いに伝わってきたし、何よりそれが日本文学の頂点でアートとして認められたということが、最高にエキサイティングだと思った。


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