マネ×ゴト Vol.38──自分の体調管理に失敗して考えたこと
今週は、月曜の午後に突然の腹痛と嘔吐に見舞われ、早退することになりました。その足でかかりつけの医師に診てもらったところ、診断は急性の胃腸炎でした。自分ではそれなりに体調には気を配っているつもりでいたので、「ああ、やってしまったな」という気持ちがまず先に立ちました。
やっとのことで職場に「休みます」という連絡はしたものの、その先がつづきませんでした。やり残している仕事の連絡をしよう、関係者に一言補足を入れよう、と思っても、腹痛と嘔吐でどうにもならない。スマートフォンを手に取っても、数行のメッセージを考えるだけで気持ち悪くなってしまう。そんな状態でした。
誰かに頼まれて書いているわけではなく、自分で勝手に続けている連載とはいえ、「マネジメント」をテーマにした記事を書いているのに、自分自身のマネジメントができていないな、と正直落ち込みました。そこで今回は、自分の体調管理に失敗して考えたことを、少し素直に書いてみようと思います。
胃腸炎という「どうにもならなさ」
胃腸炎の原因は多種多様なようです。もし開腹でもすれば原因が特定できるのかもしれませんが、現実には、そういうわけにはいきません。ノロウイルスのように分かりやすい原因がある場合もありますが、そうでないケースでは、できることは対症療法くらい、という印象です。
今回、医師からは、点滴を打たれた上で「とにかく休んで、水分をとって、胃腸を休めましょう」と言われました。熱も、何回か測りましたが、あるような、ないような。微熱と、その少し下を行ったり来たりするような感じでした。
連絡についても、「今日は休みます」と伝えるのが精一杯で、誰かに仕事を引き継ぐ準備ができていなかった、というのが正直なところです。結果として、4日連続で休むことになり、貴重な有休も消えていきました。
体調不良は、本人の意思とは関係なく、ある日突然やってきます。その当たり前の事実を、どこかで軽く見ていたのかもしれません。
防げたのか、防げなかったのか
では今回の胃腸炎は、防ぎようがあったのか。ここは、少し冷静に考えたいところです。
病気そのものについて言えば、防げなかった可能性も高いと思います。一方で、思い当たることがまったくなかったかというと、そうでもありません。最近は仕事の負荷もそれなりに高く、知らず知らずのうちにストレスがかかっていた自覚もあります。睡眠時間が十分だったか、食事のリズムは乱れていなかったか、と言われると、胸を張って「完璧です」とは言えません。
そういった意味では、防げたものもあったでしょうし、取り除けた原因もあったと思います。ただ、「100%防げたか」と問われると、たぶんそうではない。分かっていてもできないこと、気づいていても後回しにしてしまうことは、誰にでもあります。
この「防げたかもしれない」と「防げなかったかもしれない」が混ざり合っている感じが、体調管理の難しさなのだと思います。
インシデントは起こる、という前提
ところで、私は情報セキュリティを専門にしており、インシデント対応体制の強化に日々取り組んでいます。「インシデント対応体制」という言葉自体が示している通り、そこには重要な前提があります。それは、「インシデントは起こる」という前提です。
どれだけ対策をしても、インシデントがゼロになることはありません。だからこそ、起こったときにどう対応するか、被害をどう最小化するか、復旧をどう早めるかを考えるわけです。
では、なぜ自分自身のインシデントについては、「起こらない前提」で考えてしまっていたのか。今回の体調不良を通じて、その違和感を強く感じました。自分のことになると、「まあ大丈夫だろう」「多少無理しても何とかなる」という楽観が、どこかに入り込んでしまう。これは、専門分野では絶対に取らないはずの態度です。
インシデントがない前提で仕事を配分していた
振り返ってみると、仕事の配分を、どうしても「インシデントがないとき」の自分を前提にして組んでいたな、と思います。今日も明日も、自分は普通に働ける。体調も安定している。急に抜けることはない。そんな前提です。
これは、よくないことだなと反省しました。
どうすればいいのかと言えば、答えはシンプルで、「インシデントは起こる」という前提で仕事に取り組むしかありません。これは、セキュリティでも、プロジェクトマネジメントでも、そして自分自身のマネジメントでも同じです。
自分自身のインシデントは、急病だけではありません。忌引などの急な用事もあれば、家族のトラブル、突発的な対応が必要になることもあります。そうしたものは、いつ起きてもおかしくないのです。
自分の仕事を「見える化」しておく
今回、特に痛感したのは、「自分の仕事が、どれだけ他の人から見える状態になっていたか」という点です。もし、自分が突然いなくなっても、他の誰かが状況を把握できる。最低限、どこまで進んでいて、何が未着手なのかが分かる。そういう状態をつくっておくことは、とても大切です。
これは、誰かに仕事を丸投げする、という話ではありません。あくまで「見えるようにしておく」ことです。自分の頭の中にしかない情報を、外に出しておく。タスクの一覧、簡単なメモ、関係者の整理。それだけでも、ずいぶん違います。今回のように、連絡すらままならない状態になると、「ああ、もっと普段から外に出しておけばよかったな」と強く思います。
できていないのは、私だけではない(のですがこれが言い訳にならないように……)
とはいえ、みんながみんな完璧にできていて、私だけができていない、というわけでもないでしょう。体調管理も、仕事の引き継ぎも、理屈では分かっていても、日常の中で後回しになりがちなテーマです。
だからこそ、今回考えたことを、自分なりにもう一段深めて、次からできることを少しずつやっていこうと思います。完璧を目指すのではなく、「前よりはマシ」くらいを積み重ねる。その方が、長く続きます。
マネジメントは、うまくいかない前提で
マネジメントというと、どうしても「うまく回す」「効率化する」「最適化する」といった言葉が思い浮かびます。しかし今回の件で改めて思ったのは、マネジメントとは、「うまくいかないことを前提にする技術」なのではないか、ということです。
画通りに進まない。そうした現実を受け入れた上で、それでも破綻しないようにする。そのための余白や冗長性を、どこに持たせるか。
自分自身に対しても、同じ視点が必要だったのだと思います。
おわりに
今回は、かなり反省の色が強い回になりました。体調管理に失敗し、仕事の面でも周囲に迷惑をかけてしまったことは事実です。
ただ、その中で考えたこと、気づいたことを、そのままにしないことも大切だと思っています。マネ×ゴトという連載を続けているからこそ、自分の失敗も含めて、マネジメントとして捉え直してみる。
本日は反省の弁でした。
