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マネ×ゴト Vol.7 - イシューを握る

仕事やプロジェクトにおいて「なるべく早く関与することが重要だ」と感じた経験はないでしょうか。

私自身、さまざまな現場で後から関与することによる制約やジレンマを繰り返し経験してきました。すでに多くが決まっていて変えられない、関係者の間に情報格差がある、そもそも問題設定の段階に立ち会えなかった——こうした状況では、自分の専門性を発揮することも難しくなります。

本記事では、「なぜ早く入ることが重要なのか」を私の経験を通じて振り返りながら、その本質が「問いを立てる力=イシュー設定力」にあることをお伝えします。


なぜ「早く入る」ことが重要なのか

「自分が関係するものごとがあるなら、なるべく早く入るべきである」

——この考え方は、私が仕事を通じて繰り返し実感してきたものです。なぜなら、プロジェクトが進めば進むほど、以下のような壁が立ちはだかるからです。

  • すでに多くのことが決まっており、変更のコストが高くなる

  • 関係者との間に情報の非対称性が生まれ、キャッチアップが困難になる

  • イシュー(解くべき問題)やスコープの設定に関与しにくくなる

つまり、関与が遅れるほど、状況を動かす余地が失われてしまうのです。

初期に関与できなかった現場のリアル

このことを最初に痛感したのは、テクニカルサポートエンジニアとして働いていた頃でした。

テクニカルサポートの役割は、顧客が直面したトラブルを解決することです。しかし、トラブルの原因は単なる不具合だけではありません。顧客の業務や状況にサービスが合っていない、あるいはサービスの理解にズレがあるなど、「前提の相違」から問題が生じることも少なくないのです。そのため、対応の選択肢は限られ、「もっと早く関われていれば」と感じる場面が何度もありました。

その後、脆弱性診断や事業会社でのセキュリティ業務に携わるようになってからも、状況は変わりませんでした。プロジェクトがかなり進んでから相談を受け、「今さら前提は変えられません」と言われることも珍しくなかったのです。

結果として、守るべきことと現実的な制約との間で、苦しい折衝を強いられることになります。

「早く入る」とは、単に早く知ることではない

では、「早く入る」とは、情報を早く得ることを意味するのでしょうか? 私の考えでは、本質はそこではありません。重要なのは、「イシューを設定する力」です。つまり、「何を問題とするか」を自ら定められるかどうか。これがなければ、たとえ早く情報を得たとしても、自分が関わる意味を持てず、状況を動かすこともできません。

この点については、安宅和人さんの『イシューからはじめよ』が示唆に富んでいます。本書では、誤った問題を解こうとすれば、どれだけ努力しても成果は得られないということが説かれていますが、私自身も現場で何度もこの言葉の意味を実感してきました。

トラブル対応にこそ求められる「イシュー設定力」

特にトラブルシューティングの現場では、限られた時間の中で、以下のような判断を迫られます。

  • 最も深刻な問題は何か

  • 本質的な原因はどこか

  • どの対応が最も効果的か

これはすなわち、「限られた時間内でイシューを見極め、解決策を選び抜く作業」にほかなりません。この判断の精度は、被害の最小化だけでなく、再発防止策の設計や関係者との信頼関係の構築にも大きく関わってきます。

「問いに応える側」の限界と、「問いを立てる力」の必要性

振り返れば、私は長らく「出された問いに応える側」であることが多かったように思います。直接的な売上や利益に結びつかない業務が中心だったこともあり、「いま求められていることにどう応えるか」が常に優先されてきました。もちろん、それは実務上とても大切な姿勢です。私自身、知識や経験といった「力技」で多くの困難を乗り越えてきました。

しかし、それだけでは状況の「構造」を変えることはできません。周囲を巻き込み、物事の方向性そのものを変えていくには、自ら「問いを立てる力」が必要なのです。

イシュー設定が上手な人の共通点

私がこれまで出会った、イシュー設定が上手な人には以下のような共通点がありました。

  • 仮説の立て方が速く、的確である。

  • 目的から逆算して、説得力あるストーリーを組み立てられる。

  • 状況を構造的に捉える視点がある。

  • 最初に問いを明確にし、それを軸に関係者を巻き込める。

  • 必要に応じて、問いを「再設定」する柔軟性も持っている

彼らは「ただ早く動く」のではなく、「正しい問いを立てる」ことで、プロジェクトの舵を取っているのです。

私の当時の上司はこう言っていました——「テクニカルサポートは、連絡を受けてしまったら負けだ」。

若い頃の私は、この言葉を深く理解できていなかったかもしれません。これは単に「先回りして顧客に対応する」という話ではないのです。正しい問いを立て、そのすべてに答えを準備し、先に顧客に見せておけ——今では、その意味が少しずつわかってきたように思います。

おわりに——イシューを握る人になるために

この記事では、「なるべく早く入ること」、そしてその本質としての「イシュー設定の重要性」についてお伝えしました。

これは、知識や技術を磨くこととは少し異なります。自らの立ち位置を意識し、構造に影響を与える存在となるための視点です。

私自身、まだこの力を磨いている途中ですが、だからこそ、この記事が読者の皆さんにとって「今、自分が設定すべき問いは何か?」を考えるきっかけになれば幸いです。

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