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かけはぎの技術/花子のお直し屋日記4

こんにちは、Hadopelagic Maison(ヘイドペラジックメゾン)の花子です。

みなさまは「かけはぎ/かけつぎ」というお修理をご存知ですか? 時折テレビで特集されたりしているので、見たことがあるかたもいるかもしれません。
今回はこのかけはぎのご紹介。それに関連して、お直し屋内で起こる時折起こる事故や、業界についてぼんやりと思うことを語ってみようと思います。


かけはぎとは?

かけはぎとは、布地にあいてしまった穴を限りなく元に近い状態まで修復する技術のことで、人の手で糸を一本一本織り込んでいく特殊で高度な技術です。
関東ではかけはぎ、関西ではかけつぎと呼ばれますがどちらも同じ修理を指します。

こちらはかけはぎ屋さんが公開している動画。布から糸を取って、織りに合わせて針をチクチクチクチク……非常に繊細な作業です。
他にも様々なかけはぎ屋さんが実際の修理事例やビフォーアフター、手元動画などを公開しているので、youtubeで「かけはぎ」と検索してみてください。複雑な織り柄のお修理などは圧巻です。

お品物と同じ布や糸を使って同じ織り目を再現することで、スーツの虫食いやタバコの灰による穴あきなど……どうしようも無いと思える穴でも元々無かったかのように綺麗に直すことができます。
ただし裏面には修理の後始末が残り、布地によっては修理跡がわかることもあります。

どういったものかというと、透けるような薄い素材や、色落ち・日焼けしてしまっているもの、摩擦で毛羽立った部分など。他にもありますが、こういった物は穴自体は塞がっても修理箇所がパッと見てわかってしまいます。
理由のひとつとして、お修理に使う糸や布はその服の内側から取ります。特に年季の入ったお品物などでは、日に当たっていた部分と影の部分で色が微妙に変わってしまっていることがあるのです。
また毛羽立った部分の修理も同様に、毛羽立っていない糸を使って修理するため若干質感が違って見えます。

修理代の相場としては5ミリ×5ミリくらいの小さな穴で5000前後〜、大きな穴は2万、3万……もっともっとかかる場合も。
特殊技術ですので高額ですが、大切なお洋服の穴あきでお悩みの場合は是非一度ご検討ください。

お直し屋内での需要

このかけはぎ、通常の修理メニューとしての他に、実はお直し屋内で起こる修理ミスの修復にも用いられます。

お修理中、時折お客様からお預かりしているお品物を傷付けてしまう事故が発生します。ほどきの最中にハサミの先端で布まで切ってしまったり、縫製中に糸引きしてしまったり、ミシンから外す時に布に針が引っかかって穴を開けてしまったり……。
これらはもちろんあってはならないことで、細心の注意を払って加工はするのですが……起こる時には起こるもの。
こういった場合に、せめて最大限綺麗な状態でお客様にお返しするためにかけはぎで傷を修正します。
(もちろんご納得いただけるかは別の話、程度によっては買取りになることも……)

キズを付けてしまったときのタブー

この時、付けてしまったキズは絶対に自分で直そうとしないこと。

特にうっかり糸引きしてしまった時、お直し職人も布の織り目は見えますのでつい自力でどうにかしようと頑張ってしまうことがあるのですが……これをしてしまうと、戻せるものも戻せなくなってしまうのだとか。
かけはぎはお直し業の中のひとつの専門分野。餅は餅屋、というわけです。

私のいるお直し屋では、かけはぎ修理は全て提携している専門業者さんに出してしまいます。自分たちで傷を付けてしまった品物も、全てです。
つまりは自分の不始末で他人に手間をかけ、自社に余計な費用をかけるということ……。
私もやらかしてしまったことがあり、かなり心苦しいものですが、せめて職人さんがやりやすい状態で引き渡すことが大切ですね。

かけはぎを学ぶには?

かけはぎの技術は服飾の学校では教わりませんし、前述の通り専門業者がいますのでお直し屋にいても学ぶことはできません。
もっと深く知るにはいったいどうすれば良いのでしょうか?

動画サイト、SNS

各地のかけはぎ屋さんたちがYouTubeなどに動画をあげてくださっています。しっかり手元を写してくれている動画もあり、実際に私も理屈だけは動画を見て学びました。
全てを公開してくれているわけではありませんが、入口として最も手軽な方法でしょう。

ワークショップ

三重県にワークショップを開いているかけはぎ屋さんを発見。
かけはぎは本来門外不出の技術であったとか。確かにザックリ検索した限りでは他にこういった体験の機会を提供してくれるお店は見受けられませんでした。
あくまで体験ですが、貴重な技術を職人さんから直々に教わることができるなんて有り難いことですね。

通信教育

通信教育のがくぶんで、かけはぎ技術講習を受講することができます。
こちらは通信で習得できる唯一の講座。受講費は7万円代、受講期間は約9ヶ月で、テキストやDVDを見て学び、実際に演習した布地を送り講師に添削してもらうスタイル。
道具やテキスト、DVDの他、サンプル帳と就業のための手引きがもらえ営業にも役立てられるとか。

就職、弟子入り

やはり大事なところは自分で飛び込んでみなければ触れることはできません。
実際にかけはぎ屋さんで経験を積み技術を身につけていく。深く学ぶのであればこれが一番確実ですが、ひとつの技術を習得するには長い年月がかかります。それ相応の覚悟も必要ですね。
検索トップに出てくるいくつかのお店のホームページを覗いてみましたが、採用情報はあったりなかったり、年齢制限を設けているところもありなかなかに狭き門です。

やってみた

なんちゃってかけはぎビフォーアフター

かけはぎ、知ってからずっと興味がありました。
これは以前親戚からの頂きものに穴があったので挑戦したときの写真です。織り糸が太くケバのある生地なので、柄が多少乱れましたがパッと見だけならわからない……のではないでしょうか。
ただし裏には糸始末の塊がいるので、部分的に若干硬くはなります。
黙々と糸を通していく作業が楽しかったです。私物なので気楽ですしね。

技術の行末

こちらはかけはぎ屋さんのブログのとある記事。未来への想いが綴られています。
私もそうなったらいいなと思ったので共有させていただきます。

ひとつのものを修繕しながら長く大切に着ていく時代は過ぎて、かけはぎというものの需要は減っていると言います。職人の高齢化も進み、技術の継承が急がれるのはこの分野でも同じなようです。
それに、認知度の低さも否めません。私もお直し屋に入ってから初めてかけはぎというものを知りました。あくまで私の体感ですが、お客様にかけはぎのご提案をしても特に若い世代では知らない場合が多いですし、前述の通り高額であることも合わさってこのご時世にご依頼いただけることも少ないです。
このまま後継者がいなくなってしまったら……。先人たちが築き上げてきた高度な技術が失われてしまうのは惜しいことですし、やるせなさを感じます。

とはいえかけはぎ職人ではない私にできることといえば、記事を書くくらい。
一人でも多くの人間がかけはぎという技術に興味を持ち、触れて、繋げていくきっかけになれば……と思い今回この記事を書きました。

世の中は新しい服で溢れ、安い服を買ってボロくなったらバンバン買い換えたり、洋服レンタルサブスクなんてものもあって自分の服をあまり持たないこともできる時代です。
ですがこの記事を読んだどこかの誰かの大切な服にいつか穴があいた時、ふとかけはぎのことを思い出して、かけはぎ屋さんへ依頼に行ってくれることを願います。


以上、第4回お直し屋日記でした。

実はかけはぎ通信講座の資料をお取り寄せしてみました。もし受講する際にはここでレポートしてみようと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました!

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