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アイドルがオリコンウイークリー1位を取ったあとに見えた、ランキングの光と影

アイドルの活動はランキングなど常に数字で評価が行われます。CDの売上、SNSのフォロワー数やファボ数、tiktokやyoutubeの再生数、サブスクのリスナー数、そして課金競争の順位など。。 なぜ、アイドルはこれほどまでにランキングや数字で評価されるのか?そしてそれは正しい評価なのか?という話題で書いてみます。

オリコン史上初の女性グループでデビューシングル1位

2011年2月初台DOORSで「ぱすぽ☆」(後にPASSPO☆になる)という女性アイドルグループと出会います。ぱすぽ☆は2009年に結成された10人組のアイドルグループで、「空と旅」をテーマとし、グループ名はパスポートから来ており、メンバーはキャビンアテンダント風の衣装を着て、ライブをフライト、ファンをパッセーンジャーと呼ぶなど世界観がありました。そして、ガールズロックの激しい音楽とライブ重視の活動や接触(チェキや握手会)などが多いことも特徴でした。

2009年にAKB48がブレイクし続々と全国にアイドルグループが誕生し、2011年春はももいろクローバーがももいろクローバーZに改名しブレイクを果たし、ぱすぽ☆とエイベックスより結成されたSUPER☆GiRLSがその次のポジションか?と言われている時期でした。

ぱすぽ☆は「少女飛行」でメジャーデビューに向けて、オリコンランキングデイリー1位を目指してリリースイベントを行っている期間でした。私はたまたまTwitter(現在のX)にてチケットを余らせていた人がいたのがキッカケで2月のぱすぽ☆のワンマンライブに訪れ、「Pretty Lie」という曲の落ちサビを泣きながら歌うまこっちゃん(奥仲麻琴)に惹かれてぱすぽ☆に通うようになりました。実際に通ってみてこのパートを泣きながら歌ったのはこの1回だけでした。

しかし、2011年3月11日に「東日本大震災」が起こり、数日後に控えていた3月のワンマンライブは中止となり、この月の下旬のメジャーデビューも延期となってしまいました。大変な状況の中で、ぱすぽ☆は東日本大震災の避難所を個人のTwitterをリツイートしたりしていました。まだ、アイドルのメンバー個人がTwitterなどSNSのアカウントを持ち発言をするのは非常に珍しい時期で、雑誌(サイゾー)で取材されたぐらいでした。

5月上旬に延期をしてメジャーデビューすることが決まり、リリースイベントを再開したぱすぽ☆には現場難民となったヲタクが多数訪れました、そしてメジャーデビュー日を迎え目標としていたオリコンデイリーランキング1位を取ることができました。

ここで想定外の自体が起こったのは、数少ないパッセン(ファン)が長いリリースイベントで少しずつ枚数を積み上げていくことでオリコンデイリー1位を取る予定だったのですが、リリース日の変更により、ウイークリー1位にも手が届きそうという状況でした。その週はもう1組デビューを果たしたKPOPの男性グループいて1日に1万枚のペースで売上を積み上げていていました。

ぱすぽ☆は遥かに少ないファン数でしたが、1月から震災での延期も含めて4ヶ月で2万枚を購入してデイリー1位を取得しました。そこから5日間で2.5万枚というそこまでの倍以上を追加し、ウイークリー1位も奪取します。女性グループのデビュー作品が1位を取るのはオリコン史上の出来事でした。

当時のぱすぽ☆の現場の熱量を指して「ガチ恋」という言葉が生まれました。推し被りに敵対心を燃やしながらCDを積み上げていく姿がそう呼ばれました。その熱量がオリコンウィークリー1位という形となって現れたのです。

オリコンウィークリー1位を取り、テレビなどで取り上げられ、ぱすぽ☆は注目を集めたものの、2ndシングルのリリースイベント中にメインボーカルだった、むっしゅ(佐久間夏帆)が腰痛となり、年末にグループを離れました。メンバー増員するかを決めるパッセン投票では既存のメンバーの「増員しないでほしい」という意見を反映してメンバーの増員は見送りとなりました。しかし、長年の活動でメンバーが卒業し、頭打ちとなり解散となりました。「日比谷野外大音楽堂」、「TDCホール」、「中野サンプラザ」とワンマンを行うことは出来たものの、グループの目標としていた「日本武道館」へは残念ながら達成出来ませんでした。

ただ、東日本大震災を挟んでのリリースイベント、特に最後の5日間にパッセン(ファン)が見せた熱量や、その熱量のままに訪れたパリのジャパンエキスポなどは、私のアイドルヲタク人生の中でも特に強い印象が残っています。

オリコンウイークリーランキングは1990年代の様にミリオンセラー(100万枚売れること)とは遠く離れていましたが、それでもまだ一定の評価がなされていた時代。リリースイベントによりそのランキングをハックして1位を取ったらそのグループはどこまで売れるのか?といった実験の結末を観た気持ちになしました。

ランキングの光と影

アイドルは昔からランキングで評価されてきました。1970〜1980年代は「ベストテン」「トップテン」という、番組独自の集計のランキングを元に歌唱するという歌番組が流行っていました。1990〜2010年代はオリコンランキングというCDの販売数を集計し、それを元にテレビや雑誌への露出が行われました。2010年後半以降は、YouTubeやTikTokの再生回数や、SNSのエンゲージメント数などが指標として扱われています。

なぜ、アイドルはこれほどまでにランキングや数字で評価されるのでしょうか?

それは、より手軽に「流行っているもの」「良いもの」を知りたいという人間の根源的な欲求が元になっています。すべての作品を体験して評価するのには時間やお金などコストもかかる、そしてそれらを見抜ける審美眼も必要となります。しかし、過多な情報から、コストをかけることなく、失敗をせずに選択して、社会的に同調したいといった欲求が存在するからです。

一方で、ランキングというのはそのランキング自体が権力を持てば持つほど部分最適化されていくという側面があります。例えば歌番組なら事務所やスポンサーの意向、CDの販売数ならリリイベ、YouTubeやtiktokの再生数なら業者や再生数を上げるノウハウなど。ランキングは出来た当初は評価軸として成り立ちますが、そのランキング自体が力を持ち始めると部分最適化が行われ、世間の感覚と少しずつズレが生じ陳腐化する、そして新たなランキングが現れるというサイクルを繰り返しているのです。

そういった、ランキングそのものの成り立ちやサイクル、またランキングを求めてしまう人間の欲求、そういったものを俯瞰することがとても大切なのではないかと思います。そして、数字には現れない部分。例えば、そのアイドルやグループの人柄だったり、その現場の楽しさや熱量だったり、そういったものに目を向けることが大切なのではないか?と考えています。

ランキングを超えて

ランキングや数字に囚われず、どうやったらコンテンツの価値を知ることが出来るか?

実際に自身が「体験」してみることが大切だと思っています。アイドルだったらそのライブに参加して実際に観て聴いて観ること。特に初見でみて印象というのは最初の1回きりなので、できれば事前に「ランキング」や「評判」といった情報がない状態の方がよりプレーンな状態で感想を持つことが出来ます。

更に、その時の印象を蓄えること。特に大切なのが「違和感」があったかどうか?この違和感という感情はその場では説明出来ないことも多いのですが、長い年月を経て振り返った時にこういうことだったのか!と解決されることも多いです。

そして、「縁」を大切にすること。私達はどこで、どの時代に、生まれるかを決めることが出来ません。同じ様に自分という物理的な枷がある以上は、すべてのアイドルだったり、音楽だったりを全てフラットに評価することは出来ないです。逆に、そんな中で出会えた「縁」を起点に関わるのはとても大切なことなのかな?と思っています。

ファンの中には、グループの黎明期から支え、「地続き感」を共有し「対象をよく見てる」人もいれば、ブレイク後に惹かれ、輝く姿に「自分の願望を投影し、対象の中に自分を見てる」人もいます。どちらの形も、その人にとっての真実の応援です。

ぱすぽ☆のオリコンウィークリー1位は、ある意味で「ランキングをハックしたらどうなるか」という壮大な実験のようでした。その「実験」は、私たちに多くのことを教えてくれます。ランキングという数字は、確かに大きな力を持つ。しかし、それが全てではない。

ランキングの裏にある「意図」を理解し、その数字に一喜一憂しすぎることなく、アイドルたちのパフォーマンス、楽曲、人間性、そしてグループが紡ぎ出す物語そのものを楽しむ。そして、自分自身の「好き」という感情を信じ、自分なりの応援の形を見つけること。

それが、ランキングという評価軸に振り回されず、アイドルという存在から真の喜びや感動を受け取り続けるための、答えなのかもしれません。


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