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映画「名無し」考察。虐待サバイバーの映画だった。

映画「名無し」を観てきました(※ネタバレあり)。

俳優の佐藤二郎氏について、現在、報道されているトラブルに関しては、私は事実関係を知らないので、あくまでこの作品についての感想です。

結論から言うと、虐待サバイバーの映画でした。幼い子ども時代の生育歴が劣悪で、児童虐待、ネグレクトだった男性が大人になっても社会から存在なきものとされ、同じく虐待、ネグレクトで育った女性と子どもを授かっても、温かい家庭は築けませんでした。

目に見えない凶器の右手は、解離

 主人公の<右手>は、子ども時代から触った物を見えなくしたり、触った相手を殺してしまう凶器でした。凶器が目に見えないのは、主人公の憎しみ、怒り、悲しみ、絶望という<攻撃人格>であり、解離性同一性障害の別人格だからです。

主人公は子ども時代は、その攻撃性(右手)をコードでグルグル巻きにし、攻撃性を抑制しようと努力しています。しかし、里親になってくれた養父の男性が、主人公を救おう!愛そう!としても、<右手>の攻撃人格は、救おうとしてくれる人まで攻撃し、死に至らしめてしまうのです。
主人公は、本当は他者を殺したくないのに、解離人格(攻撃人格)によって、優しくしてくれた人まで傷つけてしまう。攻撃人格が大切な人まで傷つけてしまうために、さらに、主人公の心の傷は、大きなものとなり絶望の人生になっていきます。

 大人になった主人公は、貧しい労働環境の中、愛する理解ある女性と暮らしますが、愛している女性までも、<右手>の攻撃人格は傷つけてしまうことが起きます。セックスするときも、攻撃人格が出てこないように、必死で、右手(攻撃人格)を抑え込みます。愛する女性は、主人公の<右手>の攻撃人格を知っており、攻撃人格を含めて、主人公を愛しているので、「右手で触ってほしい」と言いますが、お互いに愛していても、<右手>の攻撃性は非常に強く、それが叶いません。

神様、暇しているなら、僕と手をつなごうよ。

 主人公は、たびたび、神様に、「神様、暇しているなら、僕と手をつなごうよ。」と語りかけます。あまりにも酷い人生のカードを渡しておいて、地獄の人生にしておいて、一度も、神様は振り向いてくれない。暇しているなら、一度くらい、僕に振り向いてよ。と神様にSOSを出しているのです。「助けて」と言っているのです。多くの虐待サバイバーが、神様に、そして世間に、同じ言葉を心の中で発しています。

お前にどんな過去があったとしても、知ったことではない。お前はクズだ!

 刑事が最後に主人公に放った言葉は、これでした。これが「世間」なのです。虐待サバイバーが虐待の後遺症(複雑性PTSD)や解離性同一性障害でどれだけ苦しんでいても、「無関心」。「お前にどんな過去があったとしても、知ったことではない。お前はクズだ!」。これが世間の子ども時代の虐待を生き延びたサバイバーに対する認識です。この言葉で、主人公は、最後まで救われず、世間の「お前にどんな過去があったとしても、知ったことではない。お前はクズだ!」の言葉で殺される。
 世間と虐待サバイバーは、どこまでも、永遠に「分かり合えない」。

永遠に分かり合えない

 虐待サバイバーも、声をあげた当事者は多くいますが、現状、世間とは、永遠に分かり合えない。ここに行きついている気がします。人間は、自分が同じ当事者になり苦しまないと無関心だし、気持ちなんて分からない。主人公は、最後、空に向かって神様に唾を吐き捨てています。そのくらい、救いがない虐待サバイバーが多い。
 永遠に分かり合えない。私もこの映画と同じような境地に至って、これから先をどう生きるかというところに至っています。
 主人公は、最期に、<子ども人格>が出てきて、自分で自分を殺します。
 救いのない映画でしたが、現実の日本社会の中で、悲鳴をあげている多くの「名無し」のサバイバーの叫びを表現していました。

寄生獣と浦沢直樹のモンスター

 この映画は、寄生獣という漫画に登場するミギーという右手が攻撃する作品、浦沢直樹のモンスターに登場する「なまえのないかいぶつ」を参考にして作られていると思います。モンスターの「なまえのないかいぶつ」では、なまえとは、愛情を意味しますから、「名無し」という映画のタイトルは、「愛情が無し」という意味で、愛されずに育った人間の悲鳴と怒りを描いています。(浦沢直樹のモンスターに登場する「なまえのないかいぶつ」の解説は以下)。
 どれだけの人がこの映画の伝えたい真意を理解できるのでしょうね。
 虐待サバイバーにはすべて分かる映画でしたよ。現実の通りが描かれていました。この映画の意味が「分かる」のは、虐待サバイバーだけかもしれませんね。

以下、愛着障害や解離性同一性障害になる児童虐待の後遺症(複雑性PTSD)について詳しく描いた書籍です。

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羽馬 千恵 | Haba Chie 虐待の被害当事者として、社会に虐待問題がなぜ起きるのか?また、大人になって虐待の後遺症(複雑性PTSD、解離性同一性障害、愛着障害など多数の精神障害)に苦しむ当事者が多い実態を世の中に啓発していきます!活動資金として、サポートして頂ければありがたいです!!