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【創作昔話】ぬりかべ殿と手毬唄

♪てんてん手毬(てまり) てん手毬
道の真ん中 通せんぼ 吾人(ごじん)には こうべを垂れて願いでろ

てんてん 手毬(てまり) てん手毬
後ろから着いてくる吾人(ごじん)には
道を譲(ゆず)って さあ どうぞ
さあ どうぞ~

山合いの村に伝わる手毬唄(てまりうた)。
手毬を突きながら子供たちは歌っていました。
歌詞の意味など わからずに口ずさんでいました。

ある日を境に村から隣り町へ続く唯一(ゆいいつ)の細い山道に [ ぬりかべ ]と言う、大きな壁のような妖怪が現れて道をふさいで邪魔をするようになりました。

よじ登ろうとしても壁はスルスルと伸びて さらに高くなり、回りこもうとすると左右に長くなります。
それでは食料を手に入れることも医者を呼ぶことも働きに行くこともできません。
村人達は困りはてていました。

村の木こりの息子の健吉(けんきち)は、この妖怪を倒すべく立ち上がりました。
健吉は、とても優しい性格で腕っぷしは弱かったのですが冷静に物事(ものごと)を よく観察し考える若者でした。

「兄ちゃん!遊んで!」と毬(まり)を持って幼い妹が健吉に せがみ ました。
「兄ちゃんな、少し用があって出かけなきゃならないんだ。帰ってきたら遊んでやるから」と健吉が言うと
「ふ〜ん」と、つまらなそうな顔をして妹は ひとりで毬突きをはじめました。

♪てんてん手毬 てん手毬…

すまないなぁ…もしかしたら帰ってこれないかもしれんが…
そんな思いを抱(いだ)きながら健吉は護身用の小刀(こがたな)を持って [ ぬりかべ ]が出ると言う山道に向かいました。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

健吉の前に [ ぬりかべ ]が現われました。
近づくと壁はググっと厚みを増し、よじ登ろうとすると壁は 天高く伸び健吉を振り落とします。
何度やっても同じでした。

護身用に持ってきた小刀(こがたな)を壁に突き刺し登ろうとしましたが硬い壁に弾(はじ)かれてしまいました。

健吉は座り込み、じっと壁を観察しました。
すると壁の下のほうに わずかな隙間があることに気づきました。
「よしっ!ここだっ!」隙間に体を入れようとした瞬間、壁の隙間は塞(ふさ)がってしまいます。

「こんな時こそ落ち着いて」と自分に言い聞かせるように言い考えました。
[ ぬりかべ ]は、人が越えようとするから邪魔をするのかもしれない…。

ふと健吉は、あの歌を思い出しました。
村に伝わる毬突きをするときに歌う手毬唄(てまりうた)。

♪道の真ん中 通せんぼ 吾人には
こうべ を垂れて願いでろ

「なるほど!これかっ!」
健吉は 壁の前で話しかけました。
「ぬりかべ殿(どの)、わしは村の者じゃ。皆んなが暮らすために必要な物を買いに行きたいのじゃが…この道を 通らせてはもらえないだろうか?!」 と言って 頭を深々とさげました。

「ぬりかべーー」と低い大きな声が響きわたりました。
みるみるうちに壁は、こんにゃく ぐらいの大きさになりました。
小さな胴体に小さな手足が生えていて 目と口が付いています。
とても可愛らしい姿になりました。

驚いている健吉に [ ぬりかべ ] は、町のほうを指さしました。
「おお、道をあけてくれたのか。ありがとうな」と健吉は お礼を言って
無事に隣り町まで行き必要な物を買ってくることが出来ました。

帰り道 また あの道に通りかかると大きな壁が通せんぼ していました。
もう健吉は [ ぬりかべ ]の退治の方法は知っています。
頭を深々とさげ「ぬりかべ殿(どの)通らせてもらいます」と言うと小さくなった壁は 村のほうを指さし少し寂しそうな顔をしました。

「ははんっ…もしかして お前さん、かまって欲しくて通せんぼ して邪魔をしてたんじゃないのかい?」 と健吉が尋ねると壁は 照れたような顔をしながら頷(うなず)きました。
「そうかそうか(笑)。それなら明日 妹を連れて遊びに来るよ」 と健吉が言うと壁は ぴょんぴょんと跳ねて喜びました。

「ちょっと聞くが、お前さん 昔にもここで道を塞いで通せんぼ しなかったかい?」 と尋ねると壁は 「ぬりかべ」と言って頷きます。
健吉は、あの手毬唄(てまりうた)は [ ぬりかべ ]が現れた時の対処法を、ご先祖さまは歌にして教えてくれていたんだなと思いました。

健吉が村まで帰り、村人達に買ってきた食料などを手渡しながら今日の出来事を言って聞かせました。
村人達は、冷静に観察し考える健吉に関心し心から感謝しました。

翌日、健吉と妹と村の子供たちは[ ぬりかべ ]のところに遊びにやってきました。
[ ぬりかべ ]は たいそう喜び、ぴょんぴょんと跳ねながら踊りました。
楽しそうな 子供たちの歌声が響きます。

♪てんてん手毬(てまり)てん手毬
道の真ん中 通せんぼ 吾人(ごじん)には こうべを垂れて願いでろ

めでたしめでたし。

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