【創作昔話】赤い鬼火
むかしむかし、ある山の奥に[ 赤い鬼火 ] と言う、人ならざるもの が住みついていました。
鬼火は 三本の足が生えていて夜になると、ぴょんぴょん跳ねながら村におりてくるのです。
そして鬼火は民家の屋根に ぴたりと張り付くと、じわじわと赤い炎を垂らします。
すると、その家の人達は熱病(ねつびょう)に おかされ終いには死に至るという恐ろしい悪さをしました。
村では熱病(ねつびょう)に かかる人が 後が絶えませんでした。
村はずれの家の屋根に鬼火が張り付いているのを お遣いから帰った その家の娘が見つけました。
「やめて!あっちにいけ!」
と鬼火に向かって小石を投げつけながら叫びました。
ですが、すでに とき遅し、父さんも母さんも弟も床に倒れていました。
皆、熱病(ねつびょう)にかかっていました。
まだ幼い弟の症状が いちばん酷く苦しそうに うなされ涙を流しています。
娘は弟の額(ひたい)に冷たい布を あてながら、ぽつりと言いました。
「もう我慢できない…私が鬼火を退治してくる」
それを聞いた母さんは弱々しく首を横に振り行かせまいとしました。
しかし決心が硬い娘は
「大丈夫だよ!私は負けない!」
と言いながら 拳(こぶし)を握りしめました。
「……お前の決心は わかった。
ならば、我が家に伝わる家宝を持って行くといい。きっと お前を守ってくれるだろう。」
と父さんが家宝を持たせてくれました。
「気をつけるんですよ…」
と涙ながらに母さんがいいました。
山道を登り鬼火が潜(ひそ)んでいると言われる[ 焼け岩 ]に向かいました。
途中、父さんが持たせてくれた風呂敷包みを開けてみると、小さな鉄の釘(くぎ)と火打石(ひうちいし)と呪文が書かれた紙キレが入っていました。
「なんの役に立つか分からないけど 、どうかどうか お助けください。お守りください」
と家宝に手を合わせ お願いしました。
そして釘(くぎ)を懐(ふところ)にしまい、火打石(ひうちいし)と紙キレを袂(たもと)にしまいました。
気づけば夜になっていました。
[ 焼け岩 ]の近くまで来ると、ぴょんぴょんと奇妙な足音が聞こえてきました。
赤い鬼火が現れたのです。
人の顔ほどある大きな火の玉に鬼の形相(ぎょうそう)。
三本の黒い細い足で跳ねながら娘を睨みつけて
「お前も熱にやられて死ぬがいい!!」
と あざ笑いました。
娘は震えながらも
「私の父さん母さん弟と村の人達を苦しめたのはアンタでしょ!?絶対 許さない!」
と叫びました。
鬼火が、ふーっと吹くと辺り一面 赤い炎で囲まれました。
「さあ、逃げることができなくなったぞ。この攻撃を お前は どうかわすのか見物だな」
と言って足を踏み鳴らすと赤い炎が剣(つるぎ)となり飛んできます。
「かろうじて、かわしているようだが、足元を見てみろ!お前が かわした炎が燃え盛っているぞ。身動き ひとつとれなくなったな。さて、トドメを刺すとするか」
とニタニタ笑いながら足を踏み鳴らす鬼火。
鋭く襲いかかる炎の剣(つるぎ)。
目をつぶって死を覚悟する娘…。
その瞬間 娘の懐(ふところ)の釘(くぎ)が輝き、鬼火の攻撃を跳ね返しました。
娘は光りで覆(おお)われていました。
「なぬっ?!跳ね返しただと?!」
鬼火が怯(ひる)んだすきに呪文が書かれた紙キレと火打石(ひうちいし)を取り出しました。
「火は火を生み、水は水を飲み、三つ目の足は地に落ちて眠れ!」
娘は呪文を 一気に読み上げました。
そして火打石(ひうち)を打ちました。
すると紙キレは燃え上がり鬼火の三本目の足に絡みつき地面に引きずり込みました。
鬼火はバランスを崩し、よろよろと[ 焼け岩 ]の上に倒れ込みました。
娘は最後の力を振り絞って懐(ふところ)の鉄の釘(くぎ)を赤い鬼火の真ん中に打ち込みました。
「ギャアアアーーーー」
鬼火は、釘(くぎ)が刺さった瞬間 叫び声をあげました。
みるみる縮んで[ 焼け岩 ] に吸収され封印されてしまいました。
村に帰った娘は驚きました。
奇跡がおきていたのです。
高熱を出し、うなされて苦しんでいた家族や村の人達、みな元気になっていたのです。
娘や家族、村の人達も みんな抱き合って喜びました。
そして、娘に感謝しました。
山の奥の[ 焼け岩 ]には、一本の古い鉄の釘(くぎ)が、ひっそりと静かに立っていて、釘(くぎ)の下には苦悶(くもん)に満ちた表情のようなシミが、くっきりと浮かび上がっているそうです。
めでたしめでたし。
