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【読書】「キラキラ大学生」を目指していない人のための本|トミヤマユキコ、清田隆之『文庫版 大学1年生の歩き方』

失敗したくない。でも、キラキラしたいわけでもない

大学でうまくやれなかったらどうしよう。
でも、べつに「キラキラ大学生」になりたいわけでもない。

この本は、そんな新入生に向けて書かれた本です。

大学の新入生向けの本、と聞くと、「友達は早めにつくろう」とか「サークル見学は複数行こう」とか、そういう“正解ルート”を教えるマニュアルを思い浮かべるかもしれません。
でも、この本は少し違います。

著者ふたりが自分の大学時代の黒歴史もちゃんと出しながら、「大学ってこういうところでつまずきやすいよね」と話してくれる。
読んでいると、「大学生活を成功させる方法」ではなく、「転んでも終わりじゃない大学生活の歩き方」を教えてくれる本なんだなと思いました。


このふたりが書くから、おもしろい

著者は、トミヤマユキコさんと清田隆之さん。

トミヤマさんは文学研究者で、少女マンガや日本近現代文学を研究している方。
清田さんは、「桃山商事」の代表として、悩み相談や人間関係をめぐる話を発信している方です。

この二人が大学生活について書くと、いわゆる「青春を成功させる方法」みたいな話にはなりません。
そこがまず、この本の好きなところでした。

まえがきには、こうあります。

本書は「学生生活に失敗したくないけど、キラキラ大学生になりたいワケでもない大学1年生」に向けて書かれた本です。

この一文、すごくいいなと思いました。


大学は、急に自由になる場所だ

大学に入ると、急に自由が増えます。
講義を選ぶのも、時間割を組むのも、自分。
部活やサークルに入るかどうかも自由だし、バイトに力を入れることもできる。夏休みもやたら長い。

中学高校までは、ある程度「学校側が用意した流れ」がありました。
クラスがあって、行事があって、みんなで同じものをこなしていれば、それなりに思い出もできる。

でも大学はそうじゃない。
自由であるぶん、自分で選ばなければいけないことが一気に増えます。
しかも、その選び方を細かく教えてくれる人が、いつもいるとは限りません。


この本が教えてくれる「転びやすい場所」

この本は、そんな場所に入った新入生に向けて、「こういうところで転びやすいよ」と、12か月分のステップで教えてくれます。

たとえば、

  • 自分の居場所を複数化しよう

  • キャラリセットのタイミング

  • 「色恋だけではない男女関係」をどうつくるか

といった話が出てきます。

こうして並べると、大学生っぽいテーマだなと思います。
でも読んでいると、大学生だけの話でもないなとも感じました。
人間関係のつくり方とか、自分の見せ方とか、どこで無理をしてしまうかとか、社会人になってからも普通に引きずる話ばかりです。


読みながら、自分の黒歴史も思い出した

私は読みながら、自分の大学時代のことをいろいろ思い出しました。

  • なんで人の話をちゃんと聞けなかったんだろう。

  • なんで正論を言えば相手のためになると思っていたんだろう。

  • なんであんなに嫉妬にまみれていたんだろう。

思い出すと、まあまあしんどいです。
できれば見なかったことにしたい黒歴史もあります。

でも、この本はそういう失敗を「若気の至り」で雑に片づけません。
転んだことも、空回りしたことも、大学生活の一部として見ている。
そして、「そこで終わりじゃない」と言ってくれる感じがあります。


大学は、いろんな人がいていい場所

筆者の二人は大学を「多様性」の場所として捉えています。
真面目な学生もいれば、不真面目、ダメ、ちゃらんぽらんな学生もいる。
色んな学生がいて、それを受け入れる許容感がある場所が大学であると言っています。
それは、お二人(特にトミヤマさん)が大学生活での失敗から立ち直れなかった学生を何人も見ているからこその思いだと感じました。

この本は「倒れてもいいじゃないか。そして立ち上がれなくてもしょうがない、匍匐前進でも前に進めればいいじゃない」と「転んだ先」のことも考えて応援してくれます。
その感じが、私は好きでした。


恋愛の話も、意外と耳が痛い

個人的には、トミヤマさんの「初めてお付き合いする相手をつくるためにしていたこと」の話と、清田さんの「大学生が陥りやすい恋愛の失敗」、特に男子学生へのやや厳しめの言葉が印象に残りました。

読んでいて、「大学生だけじゃなく、社会人でも同じことをやっている人、いるよな……」と思ったからです。
耳が痛い話ほど、あとから残ります。


「正解」ではなく「地図」をくれる本

この本は、「次にやるべきタスク」を教えてくれる本ではありません。
むしろ、そういう“受験の延長線上”みたいな発想の危うさも書かれています。

だから、すぐ役立つハウツーを求めて読むと、少し違うかもしれません。

でもその代わりに、この本は大学生活という広い土地の地図を渡してくれます。
しかも、「このへんは足を取られやすい」とか、「この洞窟にはたぶん魔物がいる」とか、そういう情報をそれとなく教えてくれる。

それだけでも、かなりありがたい。


こんな人にすすめたい

大学生活って、自由で楽しいものとして語られがちです。
もちろんそういう面もあると思います。
でも実際には、自由だからこそしんどいし、比べてしまうし、自分で選ぶことに疲れることもあります。

キラキラした大学生活を目指していない人。
でも、できればひどく転びたくはない人。
そんな人に、この本はちょうどいい距離感で寄り添ってくれると思います。

春から大学に入る人にも、いま大学生活の途中で少ししんどくなっている人にも、手に取ってほしい一冊です。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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