自分でこぼした牌を狙ってリーチした女流プロの話
競技プロが自分でこぼした見せ牌でアガったエピソードが話題になっている。
その件については、切る方が悪いとまでは言わないが、放銃の覚悟くらいはすべきかな、と個人的には思った。
そういや以前、よしおから見せ牌でアガった女流プロの話を聞いていたな。
↑この記事の有料部分なんだけど、今回はその女流プロに関する話だけ抜粋しようと思う。
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これは、よしおが埼玉県内の雀荘でゲストに来ていた女流プロと同卓した時の話をもとに、私が少し補完して書いたものだ。
よしおは女流プロの名誉のため、長らくその名前を明かさなかったが、一年後くらいに酒の席で教えてくれた。
しかし、私は酔っていてすぐに忘れてしまった。
誠に恐縮ながら、『女流プロ』という表記で通させていただく。
さて、よしおの下家に女流プロ、対面に関西弁のおっさん、下家に女流の追っかけという並びで、ゲーム開始となった。
女流は胸の谷間があらわなドレスを着ていて、よしおのタイプではないが、なかなか美人だという。
対局開始早々、親番の女流プロが山に積まれている牌をこぼした。3sだった。
数巡後、女流プロがリーチを打ってきた。そして、一発で自分がこぼした3sをツモアガった。裏ドラが乗り、6000オール。
役ありでダマでもアガれる手だったが、女流プロは自分がこぼした3sを狙ってリーチしたのだ。
この雀荘には、見せ牌に関する規定はない。従って、女流プロの行為は特に咎められるものではない。
だが、競技プロがそれでいいのか。自分がこぼした牌を狙うリーチを打って、プロとして恥ずかしくないのか。プロならば、皆の模範となる麻雀を打つべきではないのか。そんなことを、よしおは思った。
対面のおっさんは少し口元をゆがめていた。追っかけの表情は変わらない。どうせこの男は、牌ではなくパイばかり見ているのだ。
二本場、ドラは3p。また女流プロが牌をこぼした。7mだった。そして数巡後、女流プロがリーチを打ってきた。このままなら、彼女の一発のツモはこぼれた7mだ。
女流プロは再び自分がこぼした牌を狙ったのか。よしおの脳裡に疑念が生じた。
おっさんが切った牌に、追っかけがチーの声をかけた。このチーで、ツモがずれた。よしおはツモ切りでイーシャンテンを維持。女流プロもツモ切りだ。
さきほど見えた7mは、対面のおっさんに入った。
「よっしゃ! この7mが欲しかったんや。リーチ!」
喜び勇んで、おっさんが追っかけリーチを打ってきた。
追っかけが共通安牌を切った。よしおのツモ番。4mを引き、357とあるマンズのリャンカンが埋まった。満貫のテンパイ。余ったのは、アヤ牌である7mだ。
よしおは少考した。
いくらなんでも、再び自分でこぼした牌を狙いリーチを打つだろうか。対面のおっさんは、7mが埋まったことでリーチをかけてきた。
「リーチ」
宣言とともに、よしおは7mを横に曲げた。
「ロン」
「ロ~ン。一発や!」
女流プロとおっさんの二人から声がかかり、一瞬頭の中が真っ白になったが、すぐによしおは二人の手牌に目を落とした。
【女流プロの手牌】

【おっさんの手牌】

女流プロはメンピン赤ドラで12300点のチップ1枚、おっさんは9mが裏ドラとなり、リーチ一発ピンフ赤ドラ裏で12000点の3枚。持ち点19000点のよしおは、箱ラスとなった。
おっさんは、マンズの5689に7mを引いての二度受けだった。確かに、7mはのどから手が出るほど欲しかっただろう。手牌に関することは言わない、というのが雀荘の基本的なマナーではあるが、おっさんは悪気があるのかないのか、口三味線を弾いてきた。
そして女流プロは、二度までも自分がこぼした牌を待ちにした。
二人の人間性を、よしおは疑わずにはいられなかった。
次のゲームは、おっさんの起家から始まった。
何食わぬ顔で摸打を続けている女流プロとおっさんを見て、よしおはやり返してやろうという気になっていた。
東一局は、よしおが1000・2000ツモ。次局はおっさんが女流プロから満貫を出アガり、追っかけの親は流れた。
東三局、ドラは6m。親番となったよしおに、手が入った。ツモも嚙み合い、5巡目でテンパイした。

47s待ちのタンピン三色赤ドラ。どれが出ても跳満、7sをツモれば倍満の手だ。
よしおは8pを切り、ダマテンにした。ツモったならそれでいい。だが、狙いは別のところにある。
同巡、上家の追っかけが4sを切った。しかし、よしおは当たらなかった。
「チー……。いや、空チーです。すいません」
空チーの罰符として、よしおは1000点棒を卓の右端に置いた。
次巡のツモは6p。好都合とばかりに、よしおは手牌の6pと入れ替え、空切りした。
下家の女流プロが、少考ののち7sを切った。危険と思われる4sのスジだから先に処理したかったのだろうが、それこそよしおが仕掛けた罠だった。
「ロン」
「えっ」
目を見開いて、女流プロが言った。
「いやあ、いま自力でテンパったんすよ。18000の1枚」
持ち点17000点の女流プロはトビで終了だ。ふるえる手で、黒棒混じりの点棒とチップを払ってきた。
「こすい真似すると、こすい真似を返されるんやなあ」
対面のおっさんが言った。その言葉に、女流プロは顔を赤くしてうつむいた。
(おまえが言えた義理じゃねえけどな……)
心で呟きながら、よしおは精算を済ませた。
次の半荘へ移ろうとしたところで、メンバーに肩を叩かれた。
「ちょっと、いいですか」
どういう用件かは、想像がつく。覚悟の上だ。よしおは席を立った。開いた席には、待ち客が座った。
壁際へ行くと、メンバーは大きくため息をついた。
「なぜ呼んだか、わかりますよね? さっきのアガリですけど、あんな真似をされたら、困りますよ……」
「俺としては、やられたからやり返しただけなんだけどな。二人の行為も見てましたよね?」
「ふ、二人はまだ、弁解の余地があります。あなたのは、完全にアウトですよ……」
「やられたから、やり返しただけなんだけど」
「それがいけないん――」
「ロ~ン! メンピン一発赤赤表裏。たったの倍満や!」
メンバーの声をかき消すように、おっさんの声が響いた。
(一本足りねえぞ……)
内心でツッコミを入れながら、メンバーの顔を見た。メンバーも気づいていない。振りこんだ追っかけは、言われた通りに点棒を払っている。女流プロも、過大申告に気づいていない。
あらゆる意味でレベルが低い雀荘だ。よしおの怒りは急速に冷めた。
「と、ともかくですね……」
「はいはい。確かに、俺が悪かったです。迷惑かけてすいません。もう来ませんから」
メンバーに言い捨てると、よしおは店を出た。
――と、よしおから聞いたのはだいたいこんなところだ。
よしおは確かにやり過ぎだが、女流プロの行いは競技者としてどうなのか、と思わせる話である。

てなわけで、今回は以上。
よしおのエピソードをたくさん書いた記事、もしよかったら読んでみてね。
もうすぐ誕生日のよしおに、売上でなにか買ってあげようと思うのでよろしくおねがいマスカット。
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