【喫茶店#1】日曜の喫茶店、母と私とソーダ水
日曜日になると思い出す。
母と一緒に通った、あの喫茶店のこと。
私が小学生だった頃。
母にはママ友たちとの集まりがあって、近所の喫茶店に毎週のように通っていた。
私もそこに同行し、同じように子ども連れで来ている友達と一緒に、ソーダ水(缶詰のチェリーがはいっている!)やアイスココアを飲みながら、漫画の週刊誌を読んで過ごしていた。
私には、ちょっとした「マイブーム癖」があって、気に入ったメニューがあると、しばらくはそればかりを頼んでいた。
冷たい飲み物なら、ソーダ水(いわゆるメロンソーダ)やレモンスカッシュ。
温かい飲み物は、ホットココアやオレンジエード。
そして、いつも迷わず注文していたのが——あのタマゴサンド。
ただし、それはよくあるゆで卵を潰してマヨネーズで和えたものではない。
私が愛したタマゴサンドは、薄く焼いた卵焼きと、塩コショウで味付けされた茹でた千切りキャベツを、辛子マヨネーズを塗ったパンで挟んだ、ちょっと特別な一品だった。
ふわりとした卵の優しさに、キャベツのシャキッとした食感に胡椒の風味、ピリリと効いた辛子マヨ。
そのバランスが絶妙で、大人になった今でも「今、食べたいサンドイッチNO.1」は、迷わずあの喫茶店のタマゴサンドだと答えるだろう。
あれ以来、あの味に出会ったことがない。自分で再現すればよいのでしょうが…。
記憶の中の喫茶店には、角砂糖と塩の入った小さな瓶があった。
塩の瓶には、湿気を防ぐための米粒が何粒か入っていて、それがなんだか不思議で、ちょっとだけ愛らしくて、子どもながらにずっと気になっていた。
あの空間が特別だったというより、あれは“日常”だった。
母達とは違う席に子供たちだけで座り、ママ友との笑い声を聞きながら、私はお気に入りの飲み物と、あのタマゴサンドを黙々と味わっていた。
最近ふと、あの喫茶店のことを思い出すのは、
きっと今、母と少し距離があるからだと思う。
私は静岡で家庭を持ち、仕事があり、日々の暮らしがある。
母は名古屋で一人暮らしをしている。
昨年、父が亡くなった。
少し心配ではあるけれど、すぐに会いに行ける距離ではない。
私は次男で、兄は独身で一人暮らし。
母のことは気になる。でも、今の自分の暮らしを大きく変えることはできない。
そんなとき、記憶の中の“日曜の喫茶店”がふっと浮かんでくる。
きっと私は、あの頃のように
母と同じ空間で、ただ一緒に座って、
それぞれの時間を過ごすことが恋しいのかもしれない。
何を話すでもなく、何か特別なことをするでもなく、
ただ、あの喫茶店のような時間をもう一度、過ごせたらと思う。
冷たいソーダ水の泡、
タマゴサンドのやさしい風味、
そして、母の横顔。
思い出は、どこか切なくて、でもあたたかい。
私は今日も、気に入ったものを選び、
その味を繰り返し味わいながら、
あの頃と変わらず、静かに暮らしている。
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