第5回|伝統素材の未来
「伝統素材は、これからも使われ続けるのか」
漆喰、聚楽壁、砂、モルタル——4回にわたって左官素材を紹介してきました。
最終回は、素材の「これから」を考えます。
150年、京都で左官材料を扱い続けてきた建材店として、正直に思うことをお伝えします。
伝統素材は、確かに減っている
率直に言います。
漆喰や土壁を使う現場は、以前より減っています。工期が短くなり、コストが重視される現代の建築では、施工に時間がかかる伝統素材が選ばれにくくなっている。
聚楽土の産地は限られ、川砂は条例で採取できなくなった。扱える職人さんも、少しずつ減っています。
これは現実です。目を背けても仕方がない。
それでも、残り続けるものがある
ただ、私たちは悲観していません。
京都という街を見ていると、伝統素材の底力を感じる場面が今もあります。
文化財の修復現場では、当時と同じ素材・同じ工法が求められます。漆喰も聚楽壁も、簡単に代替できるものではない。何百年も残ってきた素材には、現代素材にはない強さと美しさがあります。
そしてここ数年、自然素材への関心が少しずつ高まっています。化学物質を使わない家づくり、調湿性の高い壁、経年で味が出る素材——そういうものを求める人が、確かに増えてきました。
素材をつなぐのは、人だ
伝統素材が残るかどうかは、素材だけの問題ではないと思っています。
それを扱える職人さんがいるかどうか。素材の価値を知っている人がいるかどうか。そして、届け続ける建材店があるかどうか。
素材は、人によってつながれていきます。
私たち灰豊が150年続けてきたのも、突き詰めればそういうことだと思っています。職人さんと素材と建材店が、細い糸のようにつながって、京都の建築文化は今日まで続いてきた。
これからも、届け続ける
城陽の山砂を選んだのも、聚楽土を扱い続けているのも、理由はシンプルです。
職人さんに必要な材料を、必要なときに届けたい。それだけです。
時代が変わっても、建築の現場が求めるものに誠実に応えていく。それが創業以来、灰豊がやってきたことであり、これからもやり続けることです。
伝統素材の未来は、まだ終わっていません。
おわりに
5回にわたってお読みいただき、ありがとうございました。
漆喰、聚楽壁、砂・骨材、モルタル——どれも地味に見えて、深い世界を持つ素材たちです。この連載が、左官素材の魅力を知るきっかけになれば嬉しいです。
引き続き、灰豊のnoteをよろしくお願いします。
