第2回|土壁・聚楽壁(じゅらくかべ)
「京都にしかない壁がある——聚楽壁という文化」
漆喰が「白」なら、聚楽壁は「土の色」です。
黄みがかった、やわらかい色合い。京都の古い町家や寺院の内壁に使われてきたその壁は、他の地域ではなかなか見られません。
聚楽壁は、京都という街が生んだ、京都だけの素材です。
聚楽土とは何か
聚楽壁の原料は、聚楽土(じゅらくつち)と呼ばれる土です。
豊臣秀吉が築いた聚楽第(じゅらくだい)の周辺から採れた土が起源とされています。400年以上前から使われてきた素材が、今も京都の壁をつくり続けている。
ただし、現在は良質な聚楽土の採取が非常に難しくなっています。産地が限られ、昔ほど自由に手に入らない。それでも職人さんたちは、できる限り本物の聚楽土にこだわります。それだけの価値がある素材だからです。
土の壁が持つ力
聚楽壁をはじめとする土壁には、漆喰とはまた違う特性があります。
調湿性能は土壁のほうがさらに高いとも言われています。湿気を吸い、乾けば放出する。その呼吸量が多い分、室内の空気をより快適に保ちます。
また、土壁は音を吸収する性質もあります。静けさを大切にする茶室や和室に土壁が多く使われてきたのは、見た目だけでなく、こうした機能的な理由もあります。
京都の町家と聚楽壁
京都の町家を歩くと、内壁に聚楽壁が使われている家に出会います。
その色は、白でも灰色でもない。土そのものの、落ち着いた黄褐色。派手さはないけれど、空間に品と温かみをもたらします。
長年住んでいると、壁が少しずつ変化していく。ひびが入ることもある。でも職人さんが丁寧に塗り直せば、また美しい壁が蘇る。
聚楽壁は、手をかけながら長く付き合っていく素材です。
材料屋として、この素材を守りたい
私たち灰豊が取り扱ってきた素材のなかでも、聚楽土は特別な存在です。
産地が減り、扱える職人さんも少なくなってきた。このまま使われなくなってしまうのではないかという危機感を、正直感じることもあります。
でも京都に根ざした建材店として、この素材を扱い続けることが私たちの役割だと思っています。150年この街で商いをしてきた灰豊にできることのひとつが、聚楽壁という文化をつないでいくことだと。
次回は、左官工事の「縁の下」を支える素材の話です。「壁の下に眠る、砂の話」——地味で、でも絶対に欠かせない骨材の世界へ。
最後まで読んでいただいてありがとうございました
