「ショートショート」 ウィングバード先生の言うことにゃ
「自分のしたいことは何か よく考えなければだめだ!」
ウィングバード先生は、宣(のたま)います
「何をしたいか、本当に何をしたいか よく考えたことはあるのかい?」
さらに、続けます
これが、ウィングバード先生の 決まり文句です
昔から、ウィングバード先生は
この決まり文句を 演壇で謳っていたわけではありません
そう、昔からは・・・
あれは、先生が 初めて生徒たちの前に立ったときでした
如何にも、自信ありげで
如何にも、この世のことは すべて知り尽くしたように
目前の生徒たちに、捲(まく)し立てました
「君たちは、私が言うようにすれば すべて、うまくいくのさ」
「何でも、私のいうことを聞いていれば よくなるのさ」
そう、とても 思わせぶりでした
いつも そうでした
ウィングバード先生は、いつでも 強気な言葉を吐き散らしました
そうやって いつも、自分を 誇示しているかのようでした
自分の強さを、広く 訴えていました
さて、本心は どうだったのでしょうか
そう 本当は、ひどく 臆病だったのです
生徒たちに、はなしきかせることが 芯から苦手でした
みんなの前では、怖くて仕方なかったのです
でも、人一倍プライドの高い ウィングバード先生は
そんなそぶりは 見せられませんでした
私は、絶対 強いのだ
私は、心底 賢いのだ
私は、本当に 立派なのだ
自らに 言い聞かせているかのようでした
そうして、先生は 偉そうに 授業を 執り行っていました
そんなある日
後頭部が床に付くぐらいに ふんぞり返り
とても尊大になったとき
先生は、とんでもない 失態をやらかしました
黒板に向かって、偉ぶって
さぼって 宿題を忘れた生徒たちの 名前を書き出そうとし
そして、次に なんと言って 懲らしめてやろうかと考え
振り返って、怒鳴りつけようとした その時
お腹に力を入れすぎ、思わず
プ~ と おならをしてしまったのです
はじめ 生徒たちは 何が起きたのか 分かりませんでした
でも、生徒のひとりが 呟きました
「なんか、先生から変な音が 聞こえたぞ」
他の生徒も、こう続けました
「なんだか 先生のお尻から プ~ という音色が響いたぞ」
もう、教室の中は 騒然としてしまいました
隅の方では、女生徒たちが 耐えられなくなり
くすくすと 笑い合っています
別の隅では、男子生徒が 先生を指さし くちをとがらせ
プ~ プ~ とはやし立てています
ウィングバード先生の顔は、もう 火が出るように真っ赤で
先生の脚は、おしっこを漏らすかのように プルプル震えていました
もう どうしたらよいか 先生にも分からなくなりました
そうして 先生は、逃げるかのように
教室から、走り出だしてしまいました
この出来事は、もちろん 職員室まで 大拡散
ウィングバード先生に見えないよう
教員たちは みんなで 先生の背中に回り
口を押さえ ワッハ ワッハ と 大笑い
さあ もう大変です
校長先生も 聞きつけて 渋い顔して むせび笑い
陰では、用務員のおじさんも 涙流して 泣き笑い
仕方なく、職員室から 逃げ出して
体育館へと 隠れます
それでも、みんなは 探します
「ウィングバード先生 出てきて下さい
もう笑いませんから」
「みんな、いやでも おならは出てしまいますから」
でも、先生は 現れません
そして、体育館でも
ネズミたちが プ~ プ~ チュ~ チュ~ と はやし立て
猫たちも プ~ プ~ ニャ~ ニャ~ まくしたてます
ウィングバード先生の居場所は もうありませんでした
そこで、ウィングバード先生は 考えました
もう プ~ という音は 聞きたくない
もう 一生、おならはしないぞ
もう 絶対に、お尻の穴から ガスは漏らさないぞ と
そして、おならをしないよう
お尻の穴に ティッシュペーパー詰め
お腹を ガマガエルのように膨らませながら
ウィングバード先生は、悩みます
あの時 プ~ という音を
どこか 他のところから 出たように
知らんぷりをすれば良かったのかな
さらに、先生は 熟考します
そうだ だれか他人のせいにして
我知らんと うそぶいていれば良かったのかな
そんな毎日が、続くなか ある日、突然 天から声が
「なんで あなたは、そんなにも
他人に、笑たわれることを気にするの?」
「なんで 他人の評価を、そんなにも 気にしているの?」
「いつも 他人にたいして、偉くなければいけないの?」
そこで、先生は 再度考えます
なるほど、正論じゃないか
こりゃ~、まっとうではないか と
そうだ 自分がしっかりしていれば良いのだ
自分は自分 他人は他人ではないか と
でもさらに、ずるそうに 考えてしまいます
そうか、自分の問題にしなければ良いのだ
他人のせいにしてしまえばいいんだ
何でも、他人の話にしてしまえば良いんだ と
そうして、適当に 話をしていれば良いのだ
いつも、偉そうにしていれば良いのだ と
こうして ウィングバード先生の
自分本位の決まり文句は できあがりました
先生は いつも 生徒たちに 言います
「自分のしたいことは何か よく考えなければだめだ!」
「何をしたいか、本当に何をしたいか よく考えたことはあるのかい?」 「そう考えないから、何も生まれないだよ!」 と
もちろん、自分のことは 一切話しません
そうやって、ウィングバード先生は、
いつも、虚勢をはって 生きているのです
だから、偉ぶって 授業を続けているのです
おならをしないと誓った胴体は
どんどん 大きくなっていきます
でも、先生の 教訓じみた話は続きます
いかにも、世の中を知り尽くした 賢者のように
まだまだ、説教は続きます
いかにも 自分が 天下を取ったかのように
そう、ウィングバード先生の講義は まだまだ続きます
永久に続くとさえ 思われました・・・
お腹の皮が、パチンと 張り裂けるまでは
