1日で100㎞以上も疲れずに歩けた? ~ 江戸時代の速歩術とは
以前に書いたように、江戸時代には速歩術という技術がありました。
一日で三十里(120㎞)、名人になると四十里(160㎞)も歩き、東京から鎌倉まで日帰りしたり、朝に京都を出て夜には伊勢に着いていたと言います。
国会図書館で調べてみるといくつかの流儀がありました。
これから数回にわたって、解説してみます。
・参考文献とその分類
速歩術、歩行術などのワードで国会図書館を検索。引っ掛かってきたのは以下の7冊でした。しかし、よく見ると内容が重複しています。
①雑芸叢書(早川純三郎 日本図書センター 1979年)
「不及先生千里善走法」を紹介
②歩行と体育(二村忠臣 更新出版社 1925年)
「東洋古来の秘伝歩行術」として、3法を紹介
〇早歩行の法(中国伝来の速歩術)
〇神授練体歩行法(神速歩行術の概略のみ)
〇蔭山式改良歩行術(日本陸軍の歩き方を改良したもの)
③撓のひゞき (瀬尾謙一 神修館 1982年)
「神速歩行術」を紹介。同術の詳しい練習方法が書いてある唯一の本
④身体論 再版(佐藤通次 白水社 1943年)
「神授練體歩行術」 神速歩行術が別のルートで伝承されたものと思われる。技術の構成は同じだが、細部が異なる。記載は概略のみ。
⑤教育大辞書(教育大辞書編輯局 編 同文館 1907年)
「神足術」として神速歩行術の概略を紹介
⑥物庵禅話 近重真澄 文泉堂 1912年)
神速歩行術の概略を紹介
⑦師範大学講座体育 第5 田中寛一, 寺沢厳男 編 建文館 昭和10年)
④と同じく神授練體歩行法(≒神速歩行術)の概略を、西洋の歩き方と比較して紹介
太字にしてあるとおり、半分以上が神速歩行術です。それも概略だけの本が多く、技術内容に詳しく触れているのは「撓のひゞき」だけでした。実質的には
・「千里善走法」(雑芸叢書)
・「早歩行の法」(歩行と体育)
・「神速歩行術」(撓のひゞき)
の3種類の速歩術が見つかったことになります。
・速歩術の要点とバリエーション
昔のことなので、超能力的な技でも出てくるかと思ったのですが、中身はびっくりするくらいに合理的でした。
以前も書いたように、この3つ、重要部分はほぼ共通しています。
「歩き方、姿勢を頻繁に変えて、一か所に疲労が蓄積するのを防ぐ」
です。とくに最重要視されていたのが片踏み歩きでした。
片踏みは、左右の足で踏み出しの大きさに差をつける歩き方です。基本姿勢が左右対称ではなく、片足が前に出ている形になります。
この方法の目的は、片足ずつ休ませることにあります。
後ろ足を軸に倒れていく動作と、前足で後ろ足を引き寄せる動作を分業することで、後ろ足をあまり使わずに歩けます。一定距離ごとに、左右を入れ替えると、疲れを溜めずに長距離を歩けるとしています。
この片踏みを基本に、それぞれの流派で疲れをためないためのバリエーションが豊かです。
次回以降、ひとつづつ解説してみようと思います。
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