編集者岡本さんとのスペース対談(文字起こし)2026年1月29日
本記事は、2026年1月29日に、編集者 岡本雄太郎さんとわたくし渋谷亜也が対談した内容の文字起こし(編集版)です。
当日の雰囲気で聴きたい、ラジオ感覚で聴きたい方は、こちらからどうぞ。
— しぶやあや/ 渋谷亜也 (@aya_shibuya_) January 29, 2026
岡本さんのnoteアカウントはこちら。
ここから下が、対談内容です。
話者ふたりの自己紹介
渋谷:渋谷亜也と申します。昨年12月19日に『ヒトもAIも仕事は”引き受け方”が9割』という本をインプレスNextPublishing様から発刊させていただいて、その編集者が、岡本さんです。
今日は、仕事の引き受け方を言語化した理由やバックグラウンドを、岡本さんと話しながらお伝えできたらと思っています。
岡本:岡本雄太郎と申します。インプレスNextPublishingで、業務委託ですが編集長という肩書きをいただいて活動しております。事業としては「専属編集者」というサービスをnoteのメンバーシップを使って立ち上げたり、編集を軸にいろいろやっています。活動範囲が広がってきて、自分自身を編集しなければと思っているところです。
自分は引き受け仕事が多いわけではないですが、先日コミュニティで講演をしたことは引き受け仕事に近い活動でした。僕自身も「仕事の引き受け方」に興味があったテーマなので、渋谷さんとご一緒できてよかったなと思っています。よろしくお願いいたします。
<フリーランスのバックオフィス>という働き方
岡本:渋谷さんのプロフィールを見ると、バックオフィスやプロジェクトのお手伝いをフリーランスでやるのは珍しいなと思っていて、今日はそこも深掘りしたいです。
よく「オンライン秘書」ってあるじゃないですか。それとの違いって、どんなところですか?
渋谷:オンライン秘書やオンラインアシスタントのサービスは、取りまとめている企業さんがあって、そこにジョインして、クライアントから振られてきた仕事を作業するイメージですね。
岡本:親請け孫請けみたいな感じですね。
渋谷:私はプロジェクト単位で入ったり、役員の方につき、その人のプロジェクトを手伝ったり、手に負えないところを手伝う感じです。
岡本:珍しい働き方だと思います。
渋谷:説明するときは「業務委託でアシスタントに入ってます」が分かりやすいです。ただ、デザイナーやライターのように範囲が明確な入り方ではなく、人につくので本当になんでもやります。インタビュー記事も書きますし、イベントの集客でSNS広告を出したり、ビジュアルをデザイナーに発注したり、幅広くやっています。
岡本:適切な言葉が難しいですね。
渋谷:肩書きとしては「バックオフィスのリベロ」と言っています。
岡本:リベロ、拾うってことですね。リベロって守備専門じゃないですか。点を取りに行きたい、みたいなのはないんですか?
渋谷:フリーランス1年目は「スナイパー総務」と名乗ってました。「頼まれた仕事は確実に遂行する」という意味で。点を取りに行くというより、みんなが気づかないところを拾ってミスを防げたときに「やれてよかった」と思うので、自分から売り込みに行くタイプではないです。
岡本:今まで、その立場で仕事を引き受けまくってきたわけですよね。
渋谷:引き受けまくってきました(笑)
岡本:この本のA+(Amazonに掲載する宣伝画像)を作るときに題材にしたのが「テトリス」でした。テトリスってどんどんスピードが速くなって、縦の棒が来てほしい時に「それが来るんかい」みたいなことが往々にしてあります。仕事でも「この次こはれが来るだろう」と予測してたのに、方針が変わって「あれ、そっち?」みたいなことがあって、ストレスが多いんじゃないですか?
渋谷:今のクライアント様はお付き合いが長く、定型業務も増えて流れが分かってきています。予定から外れるとストレスになるのが分かっているので、外れたときのことも考えるようになりました。「それもあるだろう」というバッファで持っておく感じです。
岡本:「聞いてない」と言っても交渉や調整が増えるだけですしね。
渋谷:本を書く前に、最初に書いたnoteが2023年の5月か6月で、「じゃあ先に言ってイズストレス」という話を書きました。「先に言って」となるくらいなら、こっちから整理して聞いたほうがストレスが少ない、というのが本のスタートです。
『ヒトもAIも仕事は"引き受け方"が9割』を書こうと思った理由
岡本:「なぜ今この本を書こうと思ったのか」を詳しく教えてください。
渋谷:誰しも、お願いする側・引き受ける側を行き来しますよね。会社の業務以外でもあります。家事でも。私は本の中で「ゴミの捨て方」で例を書いています。仕事のやり方や整理術はあるけど、「仕事の引き受け方」って誰も教えてくれなくない?と思ったのが最初です。経営者などお願いする側の方が読んで、「社員に謝ろうと思いました」と言ってくださる方もいました。最終的には、私みたいに引き受けすぎて潰れる人が少なくなってほしいと思っています。
岡本:潰れそうになった経験があるんですか?
渋谷:二度あります。朝起きたら布団から起きられなくなりました。1回目は30代、2回目は3〜4年前。人生の3分の1以上を費やす仕事が楽しくないのは苦痛でしかないと思っていて、それが原動力です。
岡本:執筆は大変でした?
渋谷:書くこと自体は歯を磨くみたいな感覚で、苦ではないです。大変だったのは最後の編集で、細かくチェックして直したい箇所を詰めていく作業です。書いた分量としては、卒論以来の長さでした。
岡本:そういえば、渋谷さんってライターって名乗ってないですよね。
渋谷:ライフワークとして捉えているからかもしれないです。書けることは嬉しいけど、「できること」をライスワーク、「好きなこと」はライフワークにしたいという考え方があります。書きまくると大変なのも分かっているので、自分のペースで書きたいから、ですかね・・・。
岡本:TOHOKU360の通信員もやっていますよね。
渋谷:はい、自分の気になったトピックを取材して書くので、引き受け仕事ではないです。
岡本:そこに渋谷さんの核がある。ライターとして引き受けまくりたいわけではない。
渋谷:そうですね。仕事でも書きたいものじゃなかったらやらないです。
コールセンター業務の汎用性
渋谷:20代の頃、英語を使う仕事がしたいと思っていて、コールセンターの英語対応で叶えたんです。けど「夢って叶ったあとのほうが大変じゃん」となって、次を考えていなかった。そこから「このあとどうしよう」となった。20代で夢を叶えたから、今の形にたどり着いた感じがします。
岡本:企画の打ち合わせのとき、いろんなアイディアが出た中でも、コールセンターの話が印象に残っていました。コールセンターの仕事が、今の引き受け方の根幹になってるんですか?
渋谷:なってます!コールセンターは「問い合わせに答える仕事」と思われがちですが、それだけじゃなくて、お客さんの情報を整理して並べ替えて「こういうことですよね」と確認して、事故らないように順番に説明してわかってもらう仕事だと思っています。それが今の仕事や本の内容につながっていますね。
岡本:電話って突然来るし、焦ってることも多い。スピードや切羽詰まった状況でスキルが磨かれるんですね。
渋谷:コールセンターはマニュアル対応と言われますが、状況を把握して判断しながら情報や順番を選べる人が上手い。マニュアル一辺倒だと危ない。回答は正しくても「今聞きたいのはそこじゃない」ってことがある。見えないニーズを掘る。声は感情が乗りやすいので、スピードや後ろの音で状況を判断したりします。
岡本:ホスピタリティが必要ですね。
岡本:一般的にコールセンターは「潰しが効かない」と言われるけど、渋谷さんの話を聞くと全然そんなことないです。
渋谷:インタビュー記事でも、相手の話を整理して「文章」として渡せる。ヒアリング力は確かにあります。たとえば「パソコンが動かない」みたいなときは、1こずつ状況を聞いて、可能性を潰していく必要がある。言葉でどう伝えるか。
岡本:今回の著書の中で、「if文」が出てくるのが面白かったです。if文ってビジネス書ではあまり見ないので。
渋谷:私はプログラミングは本当に苦手でできないことですが、考え方として「こうだったらこう、こうじゃなかったらどう」という条件分岐は仕事でやってます。暗黙知が一致してないとミスが起きる。「終わったら連絡ちょうだい」と言われても「終わらなかったら連絡しなくていいんですか?」みたいなズレが出る。私は「何のために?」と聞かれたら「念のためです」と答えるようにしています。「念のため」は魔法の5文字だと思っています。
岡本:僕も聞きづらいことを聞くとき「念のため」を入れます。
渋谷:理由があると納得して動ける。たとえば電話の問い合わせで「お電話口のお客様のお名前を伺えますか」だけではなく「ご本人の確認のため、お名前を伺えますか」と言うと納得感が出る。やらされた感ではなく、納得してやってもらうのが大事だと思います。
電話応対コンクールって何?
岡本:コールセンターは何年くらいやられてました?
渋谷:トータルで13年。うち8年は管理職で、実際に電話を受けていたのは、最後の3年半〜4年くらい。その最後の時期に「電話応対コンクール」に出ました。
岡本:本のプロフィールにもありますが、全国3位、すごいですね。
渋谷:その時は全国で1万3000人くらいエントリーがあって、宮城県代表で出場しました。優秀賞第一席だったので全国3位で。
岡本:どんな競技なんですか?
渋谷:毎年4月1日に問題が発表されます。問題も設定が細かく決まっています。私が出場した年は、ウォーターサーバーを販売する会社の営業として、新規取引先に電話して、会社のことを伝え、アポイントを取るまでを3分以内に収める課題でした。3分に収めるために言葉を練って、録音を何度も聞きました。自分の声を聞くのが嫌、という感覚はなくなって、声で喉の状態や姿勢、体格まで分かるようになりました。
岡本:そんなことまで。洞察力ですね。
引き受けスキルのある人はお願いするのも上手
岡本:僕は「電話応対コンクール」ってクレーム対応だと思ってたんですが、今の話だとインサイドセールスですよね。
渋谷:年度によって、かける場合も、かかってくる場合もあります。
岡本:攻めと守りは表裏一体。受けられる人は攻められる人でもあるし、攻めばっかで受けが下手な人もいる。発注が上手なら受けるのも上手だと思います。
渋谷:私は引き受ける側なので、お願いするとき「自分だったらどうだったら嬉しいか」を考えてお願いしちゃいます。
岡本:僕も元々ウェブライターからスタートで、顔の見えないクライアントから受けていたので気を遣ってました。発注側に行ったら「こんなに丁寧なのは初めてです」と感謝されたり。発注者側って受け側を経験してない人が多い。
渋谷:多いです。今回の本で「引き受ける側はこんな感じだよ」も分かってほしかった。他者への気配りやリスペクトがあればと思います。最初についた上司に「自分以外みんなお客様と思え」と言われたのがずっと残っています。「お金出してるほうが偉いわけじゃねーんだぞ」と思いながら。バックオフィスは組織として効率がいいから集約されているのであって、「お金を生み出してないからどうこう」は違うと思っています。
岡本:違うと思います。
ストレングスファインダーの上位資質
岡本:ストレングスファインダーの話も本に書いてましたよね。
渋谷:ストレングスファインダーをコーチの方に勧められてやったら、一番が「収集」、次が「公平性」でした。仕事系ならストレングスファインダーのほうが根っこが見れる気がします。
岡本:僕は「公平性」めっちゃ低い。下から4番目。
渋谷:私はトップ5だけ見てました。「収集心」「慎重さ」「内省」「責任感」「公平性」。コーチに「ザ・バックオフィスの人ですね」と言われました。
岡本:僕は「収集心」がワースト1位です。漫画、歯抜けで持ってます。「この巻ない」みたいな。
渋谷:私は「収集心」があって、いろんな習い事をしては満足して辞めることが多かった。弟に「姉はすぐ辞める」と言われたけど、「それをやった経験」を集めてたんだと思います。テコンドー、キックボクシング、フラメンコ、お茶、いろいろやりました。
岡本:僕も共感します。なんでもやってみたいタイプで、野球・サッカー・バスケは本気でやった。バレーは中学で。テニスは社会人で少し触ったけど、小さいボールを使う競技は向いてないと気づいた。
本を出したい、と思っている方へのメッセージ
岡本:最後に渋谷さんから、本を出したい方にメッセージを。
渋谷:「こんなことが本になるのかな」と思っても、いずれにしても一回外に出して文字に書いてみることが必要だと思います。その言葉を必要としている人はどこかにいる。私は結果として「救われるといいな」に昇華されたけど、最初は「なんでみんな分かってくれないんだろう」が強かった。
まず外に出して書いて、読んでいくうちに繋がっていく。他の人の書いたものや話も「同じだな」と目に入るようになる。そうやって繋がりを見つけていくのも楽しいと思います。
最後に渋谷の本のリンクを置いておきます!
