Can You Keep A Secret?
さて、このタイトル“Can you keep a secret?”は宇多田ヒカルの名曲。
このタイトルにしたのは、あるSNS内のフォロワーの話だからだ。
くれぐれも内密にしてほしいし、できれば当事者の彼にこの記事がバレませんように。
これは、ある意味で私のささやかな願いでもある。
私と彼のこと
私と彼は、そのSNSを始めた初期に出会った。
彼は私と同郷で、偏差値の高い学校を出て、今はいわゆるバリキャリ。海外志向の仕事をしている。
SNSの投稿やメッセージでは、高級志向な話題や、頭の良さを匂わせる表現が多い。
知的に見える一方で、どこかちぐはぐで、頭が良いのか悪いのか分からない。
そのアンバランスさが、私はなぜか気になっていた。
彼は本当に知的なのか
ある日、彼はこんな投稿をした。
自分は人付き合いにおいてかなり選別が激しいタイプで、
助けるけど、見込みがない人・噛み合わない人は早く切る。
その代わり、伸びる人・可能性がある人には
本気で時間と労力を使う。
要するに、人間関係や人との接し方についての自己説明だ。
文章そのものは一見もっともらしい。
でも、やはり私は「頭が良いのか悪いのか分からない」あの感覚を拭えなかった。
彼を試す、思考実験
そこで私は、ひとつの思考実験をしてみた。
彼の投稿に、こんなコメントをした。
「英語勉強してるよね。
Hit it off like this って、どういうニュアンス?」
Hit it off は「気が合う」。
Hit it off well なら「意気投合する」。
そこに like this がつくことで、「今のこの状態で」「この距離感のままで」という含みが出る。
正直に言えば、私は意味を知らなかったわけじゃない。
でもこのまま日本語で聞くと、恋愛的に誤解される可能性がある。
だからあえて、英語の質問という形を取った。
通じなかった、という事実
しばらくして、彼から返ってきたのは、
「ChatGPTに聞けば?
よー分からんけど、気が合うとか意気投合って意味やで」
……通じていなかった。
「ChatGPTに聞けば?」
「よー分からんけど」
この二言で、私のコメントの意図がほぼ理解されていないことが分かった。
場違いなコメントだと思われている可能性すらある。
それでも私は、100歩譲って、もう一度だけ返した。
「ChatGPTにはとっくに聞いてるよ。
hit it off well でもいいのに、
like this なのはどういうニュアンス?」
返ってきたのは、コメントではなく「いいね」だった。
ああ、きっともう通じない。
「hit it off like this」は、私のお気に入りだった
正直に言うと、私はこのコメントがかなり気に入っていた。
芸人で言えば、渾身のギャグ。
自分では、かなり綺麗に決まったと思っていた。
だからこそ、いいねで流されたことが、妙に引っかかった。
彼は調べようとも、考えようともしていない。
理解しようという姿勢すら、なかった。
思考実験の結果
私は、彼に対して期待半分、諦め半分でこの実験をしていた。
理解されたら嬉しいけど、されないだろうな、と。
それなのに、想像以上にショックを受けている自分がいた。
特別な感情があるわけじゃないのに、深くがっかりしていた。
「私、そんなに期待してた?」
「察してほしかった?」
成熟していない自分にも、少しショックを受けた。
私が本当にショックだった理由
この話を何人かの友人にした。
多くは「難しくてよく分からない」と言った。
でも、たった一人だけ、すぐに理解してくれた友人がいた。
その瞬間、私のコメントはようやく成仏した。
そこで気づいた。
私がショックだったのは、彼に失望したからじゃない。
自分が気に入っていた言葉が、
誰にも受け取られなかったこと。
それが、一番こたえていた。
最適解は、多分これ
「じゃあ、彼はどう返すのが正解だったの?」
そう聞かれて、私は考えた。
たぶん、及第点はこれ。
「今の状態で気が合う、ってニュアンスやね」
余計な言葉はいらない。
「ChatGPTに聞けば」も、「よー分からんけど」も不要だった。
そして、もし彼が
「それって、どういう意味?」
と聞き返してきていたら。
正直、私はかなりキュンとしていたと思う。
そして私は、静かに整理した
私のセンスのいいコメントは、ちゃんと成仏した。
彼は「通じない人」のフォルダに、そっとファイリングした。
それで、不思議とスッキリした。
失恋でも、怒りでもない。
ただ、自分の期待の置き場所が分かった日だった。
