握手の効用 ─ 不機嫌でもつながれる、たったひとつの習慣
若い頃、あるクライアントの社長がこんな話をしてくれました。
「うちでは、子どもが学校に行くとき、必ず私のところに来て握手するんです」
しつけの一環だというその話を聞いて、私は「なるほど、いい習慣だな」と思いました。
さっそく我が家でも真似してみることにしたのです。
ただ、子どもを自分のところに呼びつけるのは、どうも私の性に合いません。
そこで、私の方から玄関まで行って握手することにしました。
当時、長男はまだ小学1年生。抵抗もなく、自然と我が家の朝の習慣になっていきました。
反抗期にこそ光る「握手」の力
やがて子どもが思春期に入ると、口数が減り、どこかブスッとした表情を見せるようになります。
それでも、朝の握手だけは欠かしません。
どんなに不機嫌な日でも、私が手を差し出せば、無言でスッと手を出してくる。
たとえ一言も交わさなくても――その瞬間、「つながった」という感覚が心に広がります。
親の心は、それだけでふっと和らぐのです。
「孫子の兵法」に通じる“握手”の意味
「孫子の兵法」には、こんな一節があります。
「鳴り物や旗で兵士たちの耳目を一点に集中させる。
兵がひとつにまとまれば、勇敢な者でも勝手に進撃できず、
臆病な者でも勝手に退却できない。
これが軍隊をまとめる本質だ」
我が家では、この“出がけの握手”がまさに鳴り物や旗の役割を果たしていたのです。
家族の心をひとつにする、小さな合図のようなものでした。
親から子へ、そして夫婦へ
後に実家へ帰ったとき、帰り際に(今は亡き)両親にも握手を求めてみました。
最初は少し戸惑ったようでしたが、やがて笑顔で手を差し出してくれるようになりました。
それからというもの、私の帰省のたびに「じゃあ、またね」と笑顔で握手するのが定番になりました。
この習慣は、今も続いています。
子どもたちはもう30代になりましたが、今でも会えば自然に手を差し出してきます。
夫婦の間でも同じです。
たとえケンカをしても、これだけはお互いに拒みません。
たった数秒の握手。
それでも、心は確かにつながります。
どんなに不機嫌でも、どんなに気まずくても、
「握手する」という約束があれば、関係は切れません。
派手ではありませんが、我が家にとっては大切な習慣です。
あなたの家庭にも――“出がけの握手”、ぜひ取り入れてみてください。
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