オロナミンCと運命の自販機
放課後の帰り道。
夕陽が少し傾く頃、咲良は今日も足を止めた。小さな公園の入り口に佇む、あの自販機の前で。
「ふふ……今日もお願いね」
そこには、彼女の“相棒”がいた。真っ赤なボディに銀色の投入口、そしていつも中央で輝くオロナミンCのボタン。もちろん咲良のお目当ては、いつも決まっている。
100円玉を二枚入れると、カシャン、と心地よい音が鳴る。
「よし、今日も出てきてくれたね!」
透明なボトルの中で、オロナミンCの琥珀色の液体がきらめく。咲良はキャップを開けると、一口飲んで大きく伸びをした。
「んー!生き返る~!」
学校の友達はよく言う。
「咲良って、毎日それ飲んでるよね。よく飽きないよね?」
でも咲良にとっては、飽きるどころか毎日の小さな幸せだった。特にこの自販機は、特別な存在。
……というのも――
去年の春。陸上部で思うようにタイムが出ず、落ち込んでいた日……
ふと入ったこの公園で、偶然この自販機を見つけた。なんとなくボタンを押して、出てきたオロナミンCを飲んだら、不思議と少し元気が出た。
「明日も、がんばろうかな」
それから、咲良は毎日ここに寄るようになった。飲むたびに、ちょっとだけ背中を押されるような気がしていた。
***
その日も、明日の大会に向けて気合いを入れるべく、咲良は自販機の前に立っていた。
ところが――
「……え?」
自販機の前に先客がいた。見知らぬ男の子が、真剣な顔でオロナミンCのボタンを見つめている。
「……君も、それ好きなの?」
思わず声をかけると、彼は少し照れくさそうに笑った。
「うん、実は明日大会でさ。なんか、験担ぎっていうか……」
咲良は少し驚き、そしてふわりと微笑んだ。
「そっか。私も陸上部なんだ。じゃあ、お互い頑張ろうね」
二人はそれぞれ、一本ずつのオロナミンCを手に取り、乾杯のように瓶を軽く合わせた。
「元気ハツラツ、だね」
夕陽がきらきらと瓶の中を輝かせていた。
***
それから――
咲良の“オロナミンC仲間”は、ほんの少しずつ増えていくのだった。
