『初期サイン』が出た日から。|進行をゆるやかにする実行プラン|犬の認知症#2
—生活・行動・サプリ・食事・治療薬/受診に使える要約メモ—
前回の記事では、認知症の概要と「始まりのサイン」
“認知症っぽく見える他の病気”との区別をまとめました。
今回はその続きとして、
初期症状が出てから進行を遅らせるために、
飼い主さんが現実的に続けられることを
「生活・行動・サプリ・食事・治療薬・受診メモ」
の分類で整理します。
犬の認知症は、多くの場合、
**治療というより「進行をゆるやかにしながら付き合う病気」**です。
そのため、サプリや薬も「劇的に改善した!」より、
夜が少し落ち着く/不安が減る/悪化のペースが緩むといった形で現れやすいです。
飼い主さんほど「できること全部やりたい」と思います。
私も同じでした。
でも、私には今でも残っている後悔があります。
ハナの初期、私が今でも思う「やってあげたかったこと」
当時の私は、正直に言うと、知識不足で「認知症を遅らせるための行動」が十分にできていなかった部分が多かったです。
働きながらの生活で、昼間はお留守番してもらうことが多く、
昼夜逆転は仕方なかったことだったのかもしれません。
でも今になって思うのは、
そのぶん、帰ってきてから“脳への刺激”をもっと意識して入れてあげればよかった、ということです。
今なら、絶対にやりたい行動(後悔から出た結論)
1)ノーズワーク
もっと頭を使う遊びを、コミュニケーションも兼ねてやりたかった。
散歩の距離より、**短時間でも「考える時間」**を作ってあげたかったです。
2)撫でる+声かけ
耳が遠くなってきていても、刺激のために、
もっと声をかけながら、積極的に撫でてあげたかった。
「触れる」「声がある」って、それだけで安心と刺激になります。
一番理想なのは、お昼も一緒にいて、遊んだりして、
起きている時間を長くして、夜寝てもらうことかもしれません。
でも、現実は家庭ごとに違います。
仕事も育児もある。
だからこそ私は、この記事を読んでくれた飼い主さんに伝えたいです。
「今できる範囲で、後悔しないようにできることをやる」のが一番。
私の後悔が、悩んでいる飼い主さんの“今日の1つ”につながればいいなと思っています。
初期の実行リスト
0)最優先:環境チェック
□ 寝床〜トイレ〜水まで、滑らない導線(マットを途切れさせない)
□ 足元灯(真っ暗にしない)
□ 家具の角だけ保護/ぶつかりそうな場所をガード
□ ベッド・トイレ・水の位置は基本固定(危険なら最小限の変更)
配置を変えるか迷ったら
今の配置で「ぶつかりそう・落ちそう」が増えた → 様子を見ながら配置変更もOK
変更で混乱しそう → 元の位置のままガードで守る(柵・クッション・角保護)
1)毎日10分:脳の刺激(私が“やってあげたかった”こと)
日中一緒にいられなくても、帰宅後の10分でできます。
□ ノーズワーク10分(タオル包み/宝探し/知育トイ)
□ 撫でる+声かけ(優しく声かけ)
□ 朝に光を浴びる(窓際でもOK)
□ 寝る前1時間は刺激を落とす(照明・音・人の動き)
続けることが大切です。無理ない範囲で毎日10分。
2)週2回:散歩を“刺激”に変える(距離より質)
□ コースを少しだけ変える(怖がらない程度で)
□ 匂い嗅ぎタイムを増やす
□ 足裏の刺激:アスファルト/土/芝生など(無理のない範囲で)
4)受診前:相談を“伝わる形”にする
□ 困りごとを3つ書く(優先順位つき)
□ 動画を1本撮る(夜鳴き/徘徊/固まる等)
□ 家で試したことと効果(○△×)をメモ
当時、生活面でハナの場合は、
導線に滑り止めマット(おすすめ)
食事・ベッドの位置は変えず(混乱を避けたかった)
お漏らしが増えて、おむつを使用
という対応でした。
ただし、おむつは次の行動がある場合は注意が必要です。
おむつを控えた方がいいケース
気にして取る
破る
食べる(誤食リスク)
皮膚がかぶれる
こういう子は、
防水シーツ+洗えるマットで「失敗してもいいゾーン」を作る
寝る前と起床直後のトイレ誘導を増やす
夜間だけトイレを近くに置く(変更が混乱するならガードで調整)
など、「安全と清潔」を優先した方法が現実的です。
食事・サプリ・治療薬
ハナの場合、私は病院に相談しながらサプリや薬を使用していました。
ただ正直に言うと、劇的な効果は実感できませんでした。
それでも今振り返ると、
「進行をやや遅らせていたのかもしれない」と感じます。
認知症は“良くなった”を実感しづらい病気なので、
効果が分かりにくいのは自然だと思います。
そしてもうひとつ現実的な話。
サプリも治療薬も、費用が積み重なると負担になってきます。
だから、効果を見ながら「続ける/絞る」を検討するのも、
悪いことではありません。
※基本的に病院に相談してから始めることをおすすめします。
食事、サプリに関してもその子に使用可能か、持病なども考慮して
動物病院がおすすめのものを提示してくれることが多いです。
1)食事(療法食)
認知機能サポート系フードの狙い
オメガ3(DHA/EPA):脳の材料・炎症の抑制を狙う
抗酸化成分:酸化ストレス対策
MCT(中鎖脂肪酸):脳のエネルギー補助(糖代謝が落ちた脳への別ルート)
ビタミンB群など:神経機能のサポート
切り替えのコツ
7〜10日かけて徐々に混ぜる
最初の評価は2〜4週間
見るポイントは3つだけ:
夜の落ち着き/不安・徘徊/便・食欲
ここは必ず病院に確認
膵炎歴、脂質制限が必要、消化器が弱い子は、MCTや脂質増加が合わないことがあります
腎臓・心臓など持病がある子は、療法食の優先順位が変わることがあります
2)サプリ
ハナの経験の通り、劇的な変化を感じにくいことがあります。
当時(2019年)アンチノールと「アクティベート(AKTIVAIT)」というサプリを使用していました。(ご参考までに)
サプリの目的別まとめ
A:脳の材料・抗炎症(DHA/EPA)
脳の健康維持を狙う王道
最近は高濃度DHA系など、少ない粒数で補給しやすい設計の製品も増えています
B:酸化ストレス対策(抗酸化)
ビタミンE/C、セレンなど
フードと重複しやすいので「過剰」にならない確認が必要
C:脳のエネルギー補助(MCT)
サプリ(オイル等)で入れる方法もありますが、最初はフードで管理する方が安全なケースが多いです
膵炎歴がある子は要注意
D:情緒の安定(漢方・ハーブ等)
不安が強い子に検討されることがあります
体質差が大きいので「合う・合わない」を見る
サプリ導入の注意点
追加は1つずつ(最低2週間)
変えたらメモ:夜/不安・徘徊/便・食欲
費用がきついなら、絞っていい(続けられないと効果がない)
3)治療薬
目的は2つ(進行抑制/今つらい症状の緩和)
脳内環境を整えて進行をゆるやかにする
夜鳴き・不安など“今の困りごと”を減らし、生活を守る
病院での“相談”テンプレート
「進行を遅らせる目的で、現実的な選択肢は何がありますか?」
「夜寝てくれなくて困っています。睡眠を整える対症はありますか?」
「併用NGの薬やサプリはありますか?」
「効果を判断するにはどのくらいの期間、どの行動を見ればいいですか?」
薬は“最後の手段”というより、家族が倒れないための選択肢でもあります。
実際にこうした相談に来られる飼い主さんもいらっしゃいました。
受診に使える「要約メモ」
前回の記事ではサイン整理が中心でした。
今回は「治療相談を前に進める要約メモ」としてリストを作成しました。
今の悩みや症状の整理として使っていただければ、
受診の時にスムーズに相談できると思います。
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【犬の認知症 初期:相談メモ】
① 基本情報
犬種/年齢/体重:
既往歴(心臓・腎臓・膵炎・てんかん等):
いま飲んでいる薬(名前/量/回数):
今の食事(フード名/おやつ):
今飲んでいるサプリ(商品名/開始日):
※セカンドオピニオンなど新しい病院に受診する場合は必要ですが、
かかりつけですでに共有している情報であれば省略して大丈夫です。
② いま一番困っていること(優先順位も大切)
1)________________
2)________________
3)________________
(例:夜に徘徊して眠れない/お漏らしが増えた/不安そうに鳴く など)
③ 症状のまとめ(短くでOK)
いつから:
どのくらい:毎日/週( )回
起きやすい時間:夜( )時〜( )時/日中など
きっかけ:留守番後/来客後/雨の日/食後 など
安全面の心配:転倒/ぶつかる/隙間に入る(有・無)
④ 動画(あると診察の時に分かりやすい)
撮影日:
内容:夜鳴き/徘徊/固まる/旋回/排泄失敗 など
⑤ 家で試したこと(効果:○△×)
滑り止めマット導線:○/△/×
配置変更:した/していない(混乱:有・無)
ガード(柵・クッション等):○/△/×
ノーズワーク:頻度( )効果(○△×)
散歩:地面(アスファルト/土/芝生)怖がり(有・無)
おむつ:使用(有・無)外す/破る/食べる(有・無)
食事・サプリ:開始日( )変化( )
効果はすぐには現れないかもしれませんが、
何を試してきたかを整理するのにも役立つと思います。
⑥ 病院で聞きたいこと
□ 食事(療法食)やサプリ、うちの子は何を優先するべき?
□ 夜鳴き・不安で鳴く。睡眠を整える対症は検討できる?
□ 排泄ケア(おむつ含む)で、安全で現実的な方法は?
他にも聞きたいことがあれば追加で記入して持っていくと、
忘れずに質問しやすいです。
まとめ
後悔を減らすコツは、「今の環境で、毎日10分」を作ること
私の後悔は、「一緒にいられなかった」こと自体ではありません。
それは当時の生活では仕方なかった。
でも、帰ってきてからの10分を、
もっと“脳の刺激”に使ってあげればよかった。
そのことが、今でも心に残っています。
だから、この記事を読んでくれた飼い主さんには
『今の環境でできる範囲で、後悔しないように行動してほしい』
と思います。
次回予告
中期以降の認知症介護でできること
夜鳴き/徘徊が強くなったときの具体対応
旋回・行き止まり対策(安全管理)
飼い主さんの睡眠とメンタルを守る介護
経験も入れつつをまとめていきます。
