シニアになって困らないために始めよう|まずは“触る”から|(第1回)デンタルケア
シニア期のリスクを減らす“歯の仕込み”
「気づいたら歯がボロボロ…」は“あるある”です。
動物病院で働いていた頃、
シニアのワンちゃん・ネコちゃんの診察で本当に多かったのが、
「気づいたら歯がボロボロで……」
という相談でした。
口が臭くなってきた
歯石がしっかりついている
歯ぐきが赤く腫れている
ここまで進んでから病院に来られる方が、とても多いです。
でもここまでくると、
その場しのぎのケアでは追いつかない
抜歯が必要になることもある
そもそも“元の健康な状態”には戻れない
という現実があります。
正直に言うと、「汚れてきて気になってから始める歯みがき」では間に合わないことが多いです。
なぜ子犬・子猫のうちから慣らすのが大事なのか
結論からいうと、
歯みがきは「テクニック」より「慣れ」が9割
です。
成犬・成猫になってから急に歯ブラシを口に入れられても、
何それ?
いやなんだけど?
口触らないで…
となるのは、むしろ普通の反応です。
だからこそ、
子犬・子猫の頃から「少しずつ」「遊び感覚で」慣らしておくことが本当に大事。
例えば、
まずは口の周りをなでるだけ
次のステップで、くちびるを軽くめくって歯をチラ見せ
指にガーゼやシートを巻いて、前歯をサッとひとなで
慣れてきたら、歯ブラシにステップアップ
このくらいの“ゆるさ”でコツコツやっておくだけで、
シニア期の「口の中」が全然違ってきます。
「毎日は無理」でも、やらないより圧倒的にいい
毎日きっちり全歯を磨ける飼い主さんの方が少数派です。
私も、動物看護師としてわかっていながら、
自分の子の歯みがきは毎日完璧になんて全然できませんでした。
でも、体感としてはっきり言えます。
2日に1回でも歯ブラシで磨いている子と、
何もしていない子の差は「雲泥の差」です。
・完璧にやろうとして続かない
よりも
・ほどほどでも続ける
この方が、歯にとっては100倍優しいです。
「毎日はしんどい…」と感じるなら、
2日に1回
週に3回
夜のテレビタイムのうち1日は“歯みがきデー”にする
こんなレベルからで十分スタートラインに立てます。
0か100かで考えないこと。
「ちょっとでもやる」が、未来のシニア期を変えることになります。
歯は“万病のもと”って、大げさじゃない
歯周病は、口の中だけの問題ではありません。
歯ぐきの炎症
歯周ポケットの中で増えた細菌
これらが血管の中に入り、全身をぐるっとめぐることで、
心臓
腎臓
肝臓
など、体のあちこちに負担をかけると言われています。
人間の医療の話になりますが、
ガンになって抗がん剤治療をするとき、
ひどい歯周病があると、感染リスクの問題で
「まず口の中を整えてから」という話になることもあります。
それくらい「歯の状態」と「全身の治療」は関わっています。
これはワンちゃんやネコちゃんでも同じで、
歯が痛くてよく噛めない
食べる量が減る
体重が落ちる
体力が落ちる
持病も悪化しやすくなる
という流れは、シニア期ではこわい現実です。
「歯は万病のもと」は、人間だけの話ではありません。
ワンちゃん・ネコちゃんにも、当てはまります。
動物は「スケーリングも麻酔」が基本という落とし穴
人間は、歯医者さんで
歯石取り(スケーリング)
ポリッシング(磨き)
を、意識がはっきりした状態でやってもらえますよね。
でも、ワンちゃんやネコちゃんはそうはいきません。
本格的なスケーリングは、基本的に全身麻酔が必要です。
シニアになってから、
歯周病がひどくて歯がボロボロ
でも心臓や腎臓に持病がある
麻酔のリスクも高い
という状況になってしまうと、
「歯はどうにかしたい」
「でも麻酔は正直こわい」
というジレンマに陥ります。
最終的な判断は主治医の先生と相談になりますが、
飼い主さん側としても、ものすごく悩むポイントです。
だからこそ、
「シニアになってから、麻酔をかけて一気にキレイにしよう」
ではなく
「そもそも、そこまで悪化させない」
ことが大切になってきます。
歯みがきを“ルーティン化”できる子は強い
もし、
口を触らせてくれる
歯ブラシや歯みがきシートも、そこそこ受け入れてくれる
なら、
毎日同じ時間に、同じ流れで
「歯みがきルーティン」を作る
のがおすすめです。
例)
夜ごはん → ちょっと休憩 → 歯みがき → ごほうび
のように、“一連の流れ”に組み込んでしまう。
飼い主さんも忘れにくい
ワンちゃん・ネコちゃんも予測しやすい
「歯みがきのあとに必ず良いことがある」と覚えやすい
というメリットがあります。
もちろん、初めから完璧なルーティンなんてできません。
最初は「歯をちょっと触って、ごほうび」みたいな5秒で終わる日があってもいいです。
大事なのは、「歯みがき=イヤな時間」にしないこと。
嫌がる前に切り上げるくらいでちょうどいいです。
「今さら遅い?」と思っている人へ
ここまで読んで、
うちの子、もう大人だし…
歯もすでに汚れてるし…
正直、今さらじゃない?
と思ったかもしれません。
今日がいちばん若い日なので、「今さら」なんてことはないです。
確かに、
すでに溶けてしまった歯ぐきや骨を元に戻す
ことはできません。
でも、
これ以上の悪化をゆるめる
痛みや不快感を減らしてあげる
「まだ守れる歯」をしっかり守る
ことは、何歳からでも目指せます。
そのためにも、
今の歯の状態を一度、動物病院でチェックしてもらう
家でできるケアのライン(頻度・方法)を決める
無理のないペースでコツコツ続ける
この3つを、小さくでいいので動かしてみてください。
さいごに
歯みがきって、正直めんどうです。
嫌がられた日なんて、こっちが凹みます。
それでも、
「完璧にやる」のではなく、
「やらないよりマシを積み重ねる」つもりで、
今日の夜から、ほんの5秒でもいいので
“歯のための時間”を作ってあげてみてください。
それが、未来のシニア期のその子を、確実に助けます。
