雨のうしろ姿
去ってゆくものに、うしろ姿があるとしたら、きっとこんな夕方のことだ。
この二、三日、降ったりやんだり、行きつ戻りつしていた雨が、名残を振り切るように、とうとう海のほうへ引いてゆく。あとに残された空気は洗いたてで、遠い水平線だけが、まだ雨の裾を引きずるように、おぼろにけぶっている。
そのけぶりの向こうに、落陽がひときわ大きい。去りぎわの雨が磨いていった鏡に、一日が最後の顔を映しているかのよう。
生気をとりもどした野では、葉先の雫がひとつ、またひとつ、土へ還ってゆく。その音にならない音のかたわらで、紫陽花がようやく咲きはじめた。雨の置き土産のような、うまれたての青。
降っては去ってゆくものと、とどまって咲くもの。夕映えのなかを、ふたつの時間が静かにすれちがってゆく。

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