【総目次】中小企業庁公表資料で学ぶ 中小企業M&A試験対策講座
中小企業M&Aを学び始めると、最初にぶつかるのは、論点の多さです。
株式譲渡と事業譲渡の違い。
会社分割や合併の位置づけ。
契約、デューデリジェンス、価格算定、利益相反、クロージング、ポストM&A。
さらに、個人事業主や小規模企業の承継、支援機関の役割、再生型M&Aまで視野に入れると、全体像が見えにくくなりがちです。
このマガジンは、中小企業庁が公表した「中小M&Aガイドライン」および関連する参考資料・参考文献を土台にして、中小企業M&A試験で押さえるべき主要論点を、体系的に整理していくことを目的としています。参考資料1では中小M&Aの主な手法と特徴が、参考資料2では譲渡額の算定方法が整理されており、本マガジンもその流れを土台に構成しています。
この講座では、単なる用語暗記ではなく、
どの手法で何を移すのか
どこまで承継されるのか
どんな法務・労務・許認可の論点が出るのか
どんなリスクがあるのか
価格はどのように考えるのか
契約と実行はどう進むのか
という流れで、**「つながりのある理解」**を目指します。
このマガジンの読み方
最初から順番に読んでいただくのが基本ですが、特に大切なのは、まず手法の地図をつかむことです。
中小M&Aでは、株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併、業務提携・資本提携などの手法が使われます。参考資料1でも、最初にこれらの違いが整理されています。株式譲渡は会社組織をそのまま引き継ぐイメージであり、事業譲渡は事業の全部又は一部を個別に移転する手法です。さらに、会社分割や合併は会社法上の組織再編として位置づけられています。
そのため、本マガジンも、
手法の理解 → 法務・手続 → 労務・許認可 → DDとリスク管理 → バリュエーション → 契約・実行 → 利益相反・倫理 → PMI・再生
という順で整理しています。
初学者の方は、まず序章、第1章、第2章を読むだけでも、かなり全体像が見えてくるはずです。
実務家の方は、必要な章から読んでいただいても構いませんが、やはり株式譲渡と事業譲渡の違いを最初に確認するのがおすすめです。
このマガジンの章立て
序章 まず「M&Aの地図」を描く
この章では、中小企業M&A試験を学ぶうえでの入口として、全体像を示します。
手法の違いが分からないまま個別論点に入ると、契約もDDも価格算定も断片知識になってしまいます。最初に「何を移すのか」「どう承継するのか」という地図を描くことが、この講座の出発点です。
第1章 M&Aの基本手法
ここでは、参考資料1の中心テーマである中小M&Aの主要手法を扱います。
株式譲渡、事業譲渡、会社分割、合併、業務提携・資本提携、第二会社方式などを、試験対策の視点から整理します。参考資料1では、株式譲渡は会社の資産・負債・従業員・契約・許認可等が原則としてそのまま存続する手法として説明され、事業譲渡は事業の全部又は一部を個別に譲渡する手法として説明されています。
予定している主な記事は、たとえば次のとおりです。
株式譲渡とは何か
事業譲渡とは何か
株式譲渡と事業譲渡の違い
会社分割の基本
合併の基本
業務提携・資本提携はM&Aの入口になる
第二会社方式と発展論点
第2章 手法ごとの法務・手続
この章では、各手法に付随する法務上の違いを整理します。
参考資料1でも、事業譲渡では契約関係を個別に切り替える必要があること、不動産が含まれれば登記手続が必要になること、許認可は譲り受け側に承継されないことが多いことが示されています。また、会社分割や合併では、債権者保護手続や登記が必要になります。
この章では、
包括承継と個別承継
契約承継・債権者同意・登記
許認可の承継・再取得
チェンジ・オブ・コントロール条項
債権者保護手続
といったテーマを扱っていきます。
第3章 労務・許認可・実務リスク
中小M&Aでは、法務だけでなく、従業員をどう扱うか、許認可をどう維持するかが非常に重要です。
参考資料1では、会社分割について労働契約承継法により一定の場合に原則として雇用が確保されること、合併では雇用条件の調整や事務処理の一本化が必要になることが示されています。
この章では、
事業譲渡と従業員の扱い
会社分割と労働契約承継法
合併と雇用条件調整
許認可が承継される場合・されない場合
PMIの入口としての組織統合
を順に確認していきます。
第4章 DD(デューデリジェンス)とリスク管理
参考資料1の中で特に重要なのは、株式譲渡では簿外債務・偶発債務もそのまま引き継ぐ可能性がある一方、事業譲渡では特定の事業・財産だけを譲り受けられるため、簿外債務・偶発債務のリスクを遮断しやすいとされている点です。これは、そのままDDとリスク管理の基本論点になります。
この章では、
簿外債務とは何か
偶発債務とは何か
株式譲渡で何を引き継ぐのか
事業譲渡はなぜリスク遮断しやすいのか
DDの目的は何か
を整理します。
第5章 譲渡価格・バリュエーション
参考資料2では、中小M&Aの譲渡額の算定方法として、**簿価純資産法、時価純資産法(修正簿価純資産法)、利益加算の考え方、類似会社比較法(EV/EBITDA倍率法)**が整理されています。算定した金額がそのまま譲渡額になるとは限らず、交渉により最終的な譲渡額が決まるという点も重要です。
この章では、
簿価純資産法の基本
時価純資産法と修正簿価純資産法
利益加算方式の考え方
EV/EBITDA倍率法の基本
算定額と譲渡額が一致しない理由
を扱います。
第6章 契約・実行プロセス
ここでは、M&Aの流れ全体を、契約実務の観点から整理します。
実際の中小M&Aでは、秘密保持、基本合意、最終契約、表明保証、補償、クロージング条件など、各段階で重要な論点があります。手法や価格を学んだ後に、この章で全体の流れをつかめるようにします。
予定している主な記事は、
M&Aプロセスの全体像
秘密保持契約と情報開示
意向表明と基本合意
最終契約の基本構造
表明保証とは何か
補償条項とリスク分担
クロージング条件とは何か
です。
第7章 仲介・FA・利益相反・倫理
中小M&Aを学ぶとき、どうしても外せないのが、誰がどの立場で支援しているのかという論点です。
仲介、FA、支援機関、プラットフォームの違い、利益相反、説明義務、情報管理、不適切な勧誘などは、試験でも実務でも重要です。
この章では、
仲介とFAの違い
利益相反はどこで生じるのか
双方支援の難しさ
説明義務と情報管理
倫理・不適切営業・不当勧誘
を扱います。
第8章 PMI・再生型M&A
最後の章では、クロージング後と再生局面を扱います。
参考資料1では、合併に伴う雇用条件の調整や事務処理の一本化に加え、債務超過企業において優良事業だけを切り出し、不採算部門を整理する第二会社方式にも触れています。これは承継型M&Aだけでなく、再生型M&Aの理解にもつながります。
この章では、
PMIとは何か
人事・処遇・組織統合
取引先・顧客との関係維持
第二会社方式の基本
再生型M&Aの考え方
試験全体の総まとめ
を予定しています。
事例はどう使うか
このマガジンでは、参考資料に掲載されている事例を、独立した読み物として並べるのではなく、各章の理解を具体化するケース教材として使う予定です。
参考資料の事例は、多くが
事例の概要
意思決定に至るまでの経緯
成立に至った経緯
成立後の経緯
という流れで整理されており、小規模企業、個人事業主、家族経営企業など、さまざまなケースが取り上げられています。たとえば、小規模企業の事例では地元信用金庫と事業承継・引継ぎ支援センターが関与し、事業譲渡後も従業員が継続雇用され、売主が顧問として関与しています。また、個人事業主の事例では支援センター、日本政策金融公庫、弁護士、商工会・商工会議所等が関与し、協調融資の支援も行われています。
そのため、本講座では、各章の最後に「ケースで確認」という形で事例を入れ、
最終的には成立事例と不成立事例の比較まで整理していく予定です。
まずどこから読むべきか
初学者の方には、次の順番をおすすめします。
序章
第1章 M&Aの基本手法
第2章 手法ごとの法務・手続
第5章 譲渡価格・バリュエーション
この順番で読むと、
「何をどう動かすのか」→「どんな法務論点が出るのか」→「価格をどう考えるのか」
という骨格がつかみやすくなります。
実務家の方は、気になる論点から入っていただいて構いませんが、やはり最初に株式譲渡と事業譲渡の違いを押さえておくと、その後の理解が整理しやすくなります。
おわりに
このマガジンは、中小企業M&A試験対策として使えることはもちろん、実務を学ぶための整理ノートとしても使えるように設計しています。
中小M&Aは、単に会社を売る・買う話ではありません。
誰が承継するのか。
何を残し、何を移すのか。
従業員、取引先、金融機関、支援機関との関係をどうつなぐのか。
どの手法が、その事案にとって自然なのか。
こうした問いを考えるための、地図と整理軸を提供するのがこの講座の目的です。
今後、各章を順に更新していきます。
まずは、最初の記事として、「中小M&A試験はまず手法を地図として押さえる」ところから始めます。
