不登校の子の通知表はどうつくのか|元教員が話す「斜線」の内側
もうすぐ、懇談と通知表の季節です。
学校に行きづらいお子さんの保護者の方にとって、1学期の終わりは、一年でいちばん気が重い時期かもしれません。
通知表を開くのが怖い。懇談で何を言われるのか怖い。「行けていないこと」を、あらためて突きつけられる気がする——。
今日は元教員として、「通知表の内側」がどうなっているのか、そして懇談という時間をどう使えばいいのかをお伝えします。読み終わるころには、少しだけ気が軽くなっているはずです。
通知表の「斜線」は、責めているのではありません
まず、通知表の話から。
学校にまったく行けておらず、提出物もテストもない場合、通知表は「斜線」になることがあります。あの斜線を見ると、胸がぎゅっとなりますよね。まるで「あなたのお子さんは評価に値しない」と言われたような気がして。
でも、内側にいた人間として言わせてください。あれは、そういう意味ではありません。
成績は、授業・テスト・提出物といった「材料」から作られます。材料がひとつもなければ、良い成績も悪い成績も、つけようがない。斜線は「ゼロ点」ではなく、「今回は測れませんでした」という記録です。
逆に言うと、材料が少しでもあれば、成績はつく可能性があります。テストを受けていなくても、提出物だけ出していれば1や2がつくことがある。テストだけ受けた場合も同じです。教科によっても違って、体育は実技、美術や技術は作品がないと評価が難しい、といった事情もあります(このあたりは学校によって扱いが違うので、断言はできません)。
かなりレアなケースですが、学校には行けていなくても、提出物を出してテストで高得点を取り、5がついた子を見たこともあります。
そして、ここがいちばんお伝えしたいところです。
先生たちの本音は、「成績はつけてあげたい。でも、評価できる材料がなければ、つけてあげられない」なんです。
成績がつかないと進路に影響が出ることを、先生たちは知っています。だから多くの学校が、「提出物だけでも出してもらえませんか」「テストは別室で受けることもできますよ」と声をかけてくれます。あれは催促でも嫌味でもなく、「材料を一緒に作りませんか」という提案です。そう読み替えるだけで、学校からの連絡の景色が少し変わると思います。
懇談は「聞かれる場」ではなく、「渡す場」です
次に、懇談の話。
多くの保護者の方が、懇談を「現状を報告させられて、何か言われる場」だと身構えています。でも、元教員としてはっきり言えるのは、逆だということです。
学校に来ていないお子さんについて、学校が持っている情報は、びっくりするほど少ないです。先生は、知りたくても知りようがない。だから、保護者の方が持ってくる情報こそが、懇談でいちばん価値のあるものなんです。
家ではどう過ごしているのか。何が好きなのか。友だちとは遊んでいるのか。「好きな教科だけなら出てもいい」と言っているのか。行事には出るつもりがあるのか——。
こうした情報は、ただの近況報告ではありません。先生はそれをもとに校内で相談し、会議の議題に上げて、配慮につなげることができます。つまり、保護者の方が渡した情報が、そのまま支援の設計図になるんです。
お子さんが家でぼそっと言ったこと——「プリントだけはほしい」「部活だけなら行ってもいいけど」「宿題、減らないかな」——も、そのまま担任の先生に伝えてみてください。本人の口から学校に言うのは、ハードルが高いです。ぼそっとした一言を拾って運ぶのは、保護者にしかできない役割です。
正直に言うと、教員は一人の生徒にかけられる時間が限られていて、焦った対応をしてしまいがちです。僕自身、教員時代、なるべく学校に来てほしくて急かしてしまったり、別室登校の子に無理をさせてしまったことがあります。そして、教員が焦って動いて、良い結果になったことはあまりありませんでした。
でも、保護者の方から事前に情報をもらえていたときは、違いました。久しぶりに登校した日に、その子の好きなものの話ができる。それだけで本人の緊張がほぐれる。そして「お母さんがちゃんと学校に伝えてくれている」と分かると、子どもは学校に対して少し期待を持てるようになるんです。
だから、懇談の前に、メモを3つだけ用意してみてください。
①今の家での様子
②好きなこと・できていること
③本人がぼそっと言った希望。
緊張して話せなくても、紙にしておけば渡せます。それだけで、懇談は「責められる時間」から「渡す時間」に変わります。
懇談で必ず出る質問——「この子、高校に行けますか?」
そして懇談の季節、僕が塾の面談で必ず聞かれる質問があります。
「学校にも行けていない、勉強もしない、家ではゲームばかり。こんな状況で、高校に行けますか?」 「このままの成績で、合格できる高校はありますか?」 「これから、どうしたらいいでしょうか」
先に、結論をお伝えします。
学校を選ばなければ、高校に行けないということは、ほぼありません。
日本の高校進学率は令和2年度には98.8%です。最近は公立でも私立でも定員割れの学校があり、通信制高校やサポート校のように、学力試験がほとんどないまま入学できる学校もあります。「高校に行けるかどうか」で言えば、答えはほぼ「行けます」です。
ただし——だからこそ、本当の問題は「行けるか」ではなく「どこを、どう選ぶか」に変わります。
「とりあえず合格できるから」と、先生や保護者が選んだ学校に、本人が調べも見学もしないまま入学した子。こういう子は、かなり高い確率で辞めてしまいます。思い描いていた高校生活とのギャップに、心が折れてしまうからです。
一方で、高校から見違えるように楽しく通えるようになる子もいます。分かれ目は、シンプルです。自分の目で見て、自分で決めたかどうか。
この話を面談ですると、「行けないわけではないと分かって、光が見えました」「やることが分かって、心が軽くなりました」とおっしゃる保護者の方が本当に多いです。夏から秋は、学校見学や説明会のシーズンです。選び方の話は、これから別の記事でじっくり書いていきます。
さいごに
通知表の数字や斜線は、お子さんの価値ではなく、「学校が測れた範囲」の記録にすぎません。過去の記録です。
一方で懇談は、未来に向けた時間にできます。情報を渡し、配慮を相談し、進路の一歩目を始める日。気の重いイベントを、そう使い替えてみてください。
※お子さんの状態や学校の対応はそれぞれ違います。成績や進路の扱いは、必ず在籍校に確認してください。
夏休みの過ごし方と、声かけについては、また後日投稿したいと思います。
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