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鬼滅のUX(鬼滅の刃を超える作品は存在しない)

「鬼滅の刃」ほど面白いマンガはもう現れない。
それは、断言してもいいくらいだ。

作品だけの完成度で考えると、きっと他にも良い作品はたくさんある。
実際、鬼滅の刃は序盤の設定が甘いと思うし、最近、アニメを観た友人はイマイチだからもう観ないという。


それでも、『「鬼滅の刃」ほど面白いマンガはもう現れない』と言い切れる。体験が、それを唯一無二の存在に押し上げたのだ。

鬼滅の刃がブームになったのは、コロナ禍の全盛期。国民にステイホームが課され、これまでにないくらい世の中にエンタメが求められていた。

そんななか、Yahoo!ニュースなどで面白いマンガがあると話題になる。わたしは近所のセブンイレブンで1~3巻を見つけた。店長の仕入れセンスだろう。わたしはニュースに踊らされるのが嫌いので、そのときは買わなかった。のちにこの選択を後悔する。

まもなく、「どこの書店にも売っていない現象」がはじまる。電子書籍はなく、紙の書籍のみの販売だった。本が売り切れになるくらい面白いならぜひ読みたい。

しかし、本当に品切れのようで、近所のセブンからも姿が消えていた。もうすぐ年末年始の連休がはじまってしまう。もっと欲しくなる。懲りずに近所のセブンにいくと、1~2巻が置いてあった。さすが店長!

正直、1~2巻は、そこまで面白いと思わなかった。期待値が上がり過ぎていたのだ。だが、そこまで話題になっているのなら、この先にきっと何かあるのだろうと、つなぎの期待感は残った。

が、「近所のセブン」マジックが切れた。店長! 3巻まで置いていたときに買えばよかった。どこの書店に行っても本当に置いてない。たまに見つけても、10巻と15巻のように、パラパラ置いてあるから、欲しい巻に当たらない。

ようやく3巻を書店で見つけた。人々は、こうやって鬼滅の刃をパズルのように集めていくことになる。

このシチュエーションで放出されるのが、脳内物質のドーパミンだ。
「あるかもしれない」の期待感。

旅行は、旅行前のほうが楽しく感じられるのは、このドーパミンが関係している。「あるかもしれない」の期待感こそが、狩猟採集民の時代から人間を突き動かしている原動力だ。

3巻は面白かった。内容が期待値に追いついた。言うまでなく、作品に十分な魅力が備わっているからこそ、「鬼滅の刃」現象が起きたのだ。

4巻のことは今でもよく覚えている。年末の帰省のとき、新幹線に乗り換えるために大宮駅にいた。ちょうど通りかかった駅構内の小さな書店を、期待せずに覗いてみると、自分の探していた4巻だけがポツンと置かれていた。

これこそ奇跡! わたしは宝物のようにそれを読んだ。

期待値は、超えなかった……。
しかし、わたしは鬼滅の刃を追いかける快感(ドーパミン)を知ってしまっていた。この先、探さないという選択肢はない。

ほどなくして、大きな書店ではじめて多くの巻がそろっているのを発見した。狩猟採集民の時代なら、「食料大発見!」ということになるだろう。

5~10巻までを買った。そこで止めてしまった。品不足が解消されたものと思ってしまったのだ。鬼滅の刃はまた書店から姿を消す。また探し求める。ずっとこんな調子だった。

途中からは、作品が期待値を裏切ることはなかった。最後まで面白いまま完結してくれた。

期待しながら探し、見つけられず絶望し、発見して喜び、また絶望して……。

この体験が、鬼滅の刃を10倍面白くしてくれた。内容だけなら、鬼滅の刃よりも面白い作品はあるだろう。だけど、10倍ということになると、「鬼滅の刃ほど面白い作品はもう現れない」が現実味を帯びるのである。

こればかりは、この体験を、このUX(顧客体験)を、リアルタイムで経験した人間にしかわからない。

(おまけのストーリー)
わたしがほとんどの巻を集めたころ。ある大きな書店で、ほぼ全巻が揃っているという幸運な事態が起きた。

親子連れで来ていた小さな女の子が「うわー!」と喜んでいた。
その後、「……1巻だけ、ないよ」

すごく切なくなったのを覚えている。わたしの1巻をあげたいくらいだった。


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焔ふぁい|FIREの精霊 クリエイターであり続けたいー! が、整体に行かないと死ぬ。ポンコツゆえ、ポンコツゆえ、300円よろしくお願いしまーーす!