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オスタニア共和国に海外旅行、スパイファミリー殺人事件!(ショートショート)

オスタニア共和国への海外旅行記。スパイファミリーのような偽装家族が登場するショートショートです。優しい目でご覧ください!

偽装ファミリー。現実にそんな集団があったら近寄るのを遠慮したい。しかし、巻き込まれざるを得ない理由があった。

私は「ママ」から誘いを受け、コードネーム「グランパ」となった。高齢なわけではない。「子供」が若すぎるのだ。

アンネは20歳の女子、柔術家だ。地元でワルだったと本人が言うだけあり、強い太り方をしていて、口が悪い。

親の顔が見てみたい。コードネーム「パパ」は、証券マン。冴えない風貌をしているが、大企業勤務だけあって金がある。「ママ」は売れない芸能人。

巻き込まれたと言っても、ときどき飲み会に参加すればいいくらいに思っていた。ところが、あろうことか遠方の旅行に誘われる。

行先は、まさかのオスタニア共和国!
私が苦手とする場所……。

参加者は、パパ、ママ、娘のアンネ、息子のライオネル、娘の友達のカオリ。おたがいをファミリーと呼ぶ異常者たちだ。

私は正気を保ったスパイ。この旅行はあまりにも危険(苦痛)すぎる。

工作の末、コードネーム「叔父さん」を巻き込むことに成功した。彼もまたアンチ・ファミリー。

パパが借りたワゴン車で、娘のアンネはなぜか原付で、7人はオスタニアに向けて出発した。

ワゴン車の後部座席にて、ミュージシャン崩れの長男ライオネルが「じじい、じいい」と品のない絡み方をする。
(くっ、この異常者が……)
ママが「こら、ライオネル。ちゃんと『じいじ』と呼びなさい」と言い、パパが「はっはっは」と笑う。
(この異常者どもが……)

コードネーム「叔父さん」がさっそくいい働きをする。車内で酒をあおりはじめた。そして「メアリー……」と、ここにいない女性の名を呼び続ける物体となった。

これで私も便乗して酒で意識を飛ばせる。
「メアリーは魅力的な女性だよな」

ママの目が鈍く光る。
ワゴンの前を走るアンネの原付が蛇行運転をはじめる。
他の乗用車をあおるアンネを見て、ハンドルを握るパパが「はっはっは」と笑う。
アンネの友達のカオリは、ライオネルを見つめ、ライオネルは、スマホのエロ画像を見つめる。

「おい、じじい、これ見てみろよ。でけえ、最高だよな」
「はいはい」と私はいなす。

ママの目が鈍く光る。
カオリの目も鈍く光る。
ハンドルを握るパパが「はっはっは」と笑う。

密かに進行するオペレーション《リアルファミリー》(※ 作戦名)

ファミリーには、秘密の中核組織「はじまり」がいる。

◇ ◇ ◇

穏やかな天候に守られ、オスタニア旅行はつつがなく進行した。

パパのリサーチは鉄壁。観光地を効率よく回り、パパの会社が契約するロッジへと向かう。

途中、牧場に立ち寄ったとき、ライオネルがこう漏らした。「ファミリーなんて気持ち悪いよな。俺、誘われたから、無理やりきたんだぜ」

おまえもファミリーのふりを!
こいつは「はじまり」じゃないのか。

そしてロッジにて――。
翌朝、ひとりの人間が死亡する。

それは比喩としての死。

オスタニアは不思議な場所だ。

ウエスタニアから強い想いを持ったグループが訪れると、翌日、それが叶うだろう人間の肌ツヤがよくなり(だから人気の観光地なのだ)、叶わない人間は、ひたいが、肌ツヤを通り越し、光る。

その現象は、磁場の影響によるものと説明されている。

死亡者の名を明かす前に、グループの目的を明らかにしよう。彼らの強い想いとは?

彼らはオフ会を通じて知り合った人々だ。人気アイドルグループを担いではいるが、実態は出会いを探しにきた人たち。つまり、彼らの目的はパートナーを探すこと。

ひと月後、カオリは狙っていたライオネルと付き合うことができる。が、ライオネルはアンネと浮気をする。彼は「でかい」女が好きだ。

いざござはともかく、3人は死亡者リストから除外される。

叔父さんは、想ってるメアリーがウエスタニアにいるため、判定は無効。死亡者にはならない。

オペレーション《リアルファミリー》を明かそう!

中核組織「はじまり」は、アンネ、友人のカオリ、そしてパパ。

ファミリーとは、パパをママとくっつけるための目的型組織だった。

アンネは「パパならぜったい大丈夫だよー」と言った。「わたしたちがサポートするから」

パパはファミリー最大の出資者となった。今回のワゴンも自前。

しかしこの計画はそもそもが破綻している。ママは、彼氏をコードネーム「グランパ」としてファミリーにねじ込んだのだから。

芸能人の端くれだけあって我が強い。外見で足切りもする。

「ぜったいに大丈夫だと思ったのにごめんね……」
帰りのワゴンで助手席に座ったカオリが言う。

パパはハンドルを握りながら「はっはっは」と笑う。

目の前では、アンネが原付で蛇行運転し、大型車をあおっている。

ここはオスタニアの領域。国境まで1時間かかる。

パパの額は、朝から光り続けている。

「はっはっは!」パパの笑い声が大きくなる。

光が輝きを増す。

はっはっはっはっはっは!


光は強力なヘッドライトとなり、光に包まれたアンネは前の大型車に激突した。(1999字)

今回は、ショートショート作家のよしまるさんの企画に参加せていただきました(旅のショートストーリー)

素敵な企画をありがとうございます!
読んでくれてありがとう!
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