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ルフィは、ウソップを許したのに

どうしても許せないことに、傷つき続けていた。
気を抜くとそのことを考えてしまって、ほんとうはすべてを手放してしまいたかった。

すべてを手放す、
それは”なかったことにする”という、許すとはちょっと違ったゴールだった。

ということは、やっぱり許したくなかったんだと思う。
でも苦しいから、手放す。
そして、気づいてしまった。

ああ、わたしは自分がらくになりたいから、という理由で
許すことなど、到底できないのだ。と、

それがもし、心から「らくになりたい」と願って、叫んでいるならばその舵を止めない。
でもわたしはその直前で、プライドが仁王立ちして首を振っている。
そんなことは許されない、と。
そしてわたしのその腕を見つめながら、「その通りだ」と頷いている。

裏切りというのは、他社とのあいだに生まれるし、期待から生まれる。
そんなことはわかっている。
そんなふうにならないよう、細心の注意を払っていたし、わたし恵まれていた。
歳を重ねれば重ねるほど、他人の言動に振り回される回数はぐんと減り、わたしの人生はいたって穏やかだった。

これは久しぶりの痛みで、対応する方法を忘れてしまったうえに、わたしのプライドはぐんぐんと成長していた。
少し前までは「プライドなんか、」と唇を尖らせておとなぶってみたけれど
いまでは「プライドより大切なものはない」と言い切れるようになってしまった。
正確に言えば、プライドより大切なのは仲間だけれど、近年はプライドを縦にして仲間を傷つけるような案件は発生していないので、「プライドよりも大切なものはない」という言い方が流行っている。

とにかく、何度考えても許せない。
それなのに、と思う。

ルフィは許したのに、と思う。

漫画「ONE PEACE」の35巻以降のネタバレを含みます
って、35巻が出たの2004年だったわ…
いつの話してるのって感じだけど、読みたくない方はここまで
ワンピース知らないひとでも、読める感じになっているといいなと思っています。

ルフィは、ウソップを許した。
意見を違えて、いやでもあれはたまらない、
同じものを大切だと思っているのに、愛のあるふたつの回答が異なってしまい、結果的にウソップは「おれはこの一味をやめる」と言って、船を降りた。

それを、十代の「子供のケンカ」と言ってしまうわけにはいかない。
彼らは、言葉通り命を賭け、同じ船に乗る仲間だ。
「やめる」という言葉はそんなに易くない。
それは、「今すぐこの船から降りろ」と言いかけたルフィを、サンジが本気で蹴り飛ばしたことからも理解できる。

ふざけていてもルフィは船長で
船長はふざけて「降りろ」なんて言ってはいけなくて
それでもウソップは「やめる」と言って降りたのに。

それでも、ルフィは許した。
もちろん、ルフィはウソップのことを嫌いになったわけではないし、
サンジに蹴り飛ばされたシーンでもすぐに「ごめん」と謝っていた。

わたしだって許したい。
ずっと怒っているのは疲れるし、何事もなかったようにしてしまいたい。
でも、できない。
わたしは、ルフィみたいにできない。

そしてわたしは、ルフィみたいにできないのではなくて
ルフィのは状況が異なるんだ、と言い聞かせてみることにした。


1.ウソップは初犯だった

ウソップが船を降りたのは35巻のことで、かつてナミが諸々の事情で船を降りたことはあったけれど
それ以外では、クルーが「船を降りる」「一味を辞める」って言ったのは初めてだった。
ウソップは「うそつき」ってキャラクターだけど、うそでも言っていない。

最初の1回だったら、許してもいいんじゃないか。
間違いは誰にもある。わたしも間違える。
大切なものを天秤にかけるようなことがあったら、なおさら。

好きなものを同時に選べなかったとしても
それは、片方を嫌いになったってわけじゃないから
なかなか苦しい。
ウソップの気持ちも、うそじゃなかったから、間違いとも言い切れないから切ないんだよなァ…

とにかく初犯だった。
大きく意見が食い違うことも、「降りる」と言ってしまったことも、初めてだった。

二度目だったら決断は違ったと思う。
そしてわたしは、三度目だったから許せないんだ。と気づいた。

だって、本当に悪いと思ってたら二度目はないでしょう。
二度目があったということは、「悪いことをした」という自覚がなくて
悪いことをした自覚がないってことは、同じことを繰り返してしまうかもしれないってことで
なかなか容易くは許せないのだ。と思ってしまう。


2.ウソップは「おれが悪かった」と言った

「ごめん」という言葉は、なかなか難しいなァ。と思う。
この世からなくなったら困る言葉なんだけど
「本気で謝ってない」っていう言い回しが存在するように、思ってなくても言葉だけ都合よく吐き出されちゃったりするし
わたしもやっちゃうんだけど、「自分の気持ちを軽くするため」に使われたりする。
なんだろう、うまい例が見当たらないんだけど。

許されたいと思うのは悪いことじゃなくて
でも、「許されたい」というのは、ひとつの覚悟なのではないだろうか。

こんなこと言うと重すぎる?
もちろん、ライトに「ごめん」を使うこともある。たくさんある。

でも、「ごめん」のあとに「大丈夫だよ」を期待していることはないか?
それはやっぱり卑怯だし、「大丈夫」を言ったほうの負担が大きくない?
こっちは、1回謝ったしいいだろ、反省のポーズ。みたいな。

その場しのぎじゃない「ごめん」には、やっぱり覚悟がいるのだと思う。
「ごめん」のあとに、相手とも関係を築いていく。
やり直すことが本当に叶うかわからないけれど、今までの傷も背負って一緒にいたいだなんて、なかなかじゃないか。
わたしは恋人に泣きながら「ごめん」と言うたびに、この人と一緒にいないほうがいいんじゃないかなあ。この人のためにも。なんて勝手に思っていたりした…

ワンピースの物語に於いては、ゾロが舵を取ったのが格好良かったな。

おれァ あいつから頭下げてくるまで認めねェぞ!

ゾロだって、ウソップのことが嫌いだったわけじゃない。
船に戻ってきてほしいと思っている。
でも、馴れ合いで、なかったことにして船に戻すのはいけない。
だから、ウソップが頭を下げてくるまで船に戻ることは認めない。
そしてそれを、みんな理解した。

ウソップはやっぱり「なかったこと」にしようとして船に乗り込もうとしたんだけど、
最後の最後に「ごめん」と頭を下げる。「もう一度船に乗せてくれ」と頼む。
正確には「許して欲しい」という言葉は使っておらず、「一味を抜けると言ったのを取り消して欲しい」と言うのだけれど、それもまたウソップらしくて良い。
あのシーンは泣けたよね。

そしてわたしは、「たぶん相手が許されようとしていない」ということを見抜いたんだと思う。
見抜いた、というと見当違いかもしれないけれど
結局のところ、そう受け止めてしまった感覚がすべてだから仕方がない。
「とりあえず、ごめんって言っとこ」なんて言ったら相手を馬鹿にするみたいだけどーーー
「悪いと思っていることを伝えておこう」っていうのが近い感じだったかな。

許して欲しい、と言われたら許せたかもしれない。
まあ、わからないけれど

少なくとも「許されたい」という覚悟のないやつを
わたしは、許せないのだと思う。


(わたしは、ルフィになれなかった)

わたしがルフィになれないのは当然だけれど、腕伸びないし。

でも、きちんと理由があることに安堵している。
そして、理由を探そうとして、えらかったなぁ。などと思っている。
もう少し前の自分なら「わたしはルフィになれない。だめなやつだ。ぐすん」と思っていたと思う。

最近のわたしは、考えることを覚えたのだ。
それは、落ち込むこととは違う。
落ち込んで、落ち込みを重ねて、それは洗っていないパンツを積み重ねていくようでーーー
不思議と、汚れたパンツが100枚溜まったときには100日経つと、最初のパンツはきれいになったんじゃないか。と錯覚する。
いや汚いままだろ、とその通りなんだけれど、不思議と。

そんなふうに何かから逃れるように生きてきてしまったけれど、最近のわたしはちょっと違う。
パンツを洗う。
なにより、汚れたパンツを溜めない。
そして、なぜ汚れたか考える。

考えることを相手に強要することはできないけれど、大切な友達には考えて欲しいな、って思う。
少なくともわたしは、被害妄想時代とか、パンツ溜めてた時代よりも、いまのほうがよほど幸福で生産的な日々を送っている。

生産性、というのは人生で大切にしている言葉だ。
エラーが発生したときも、落ち込む前に、エラーに対応するルートと、再発を防止するルートを手早く組み立てられるようになった。
めそめそ泣いていたほうが、かわいかったかもしれないけれど。
かわいいだけでやっていける時代はもう終わったのだ。

わたしがルフィにはなれなかった、という事実は変わらないし
ルフィになるべきでないのはわかっているけれど、憧れてもいる。
あと、巻を進めるごとにウソップに共感してしまう。あいつがいちばん人間っぽい。
(あと、チョッパーのかわいさに驚きながら、やっぱりニコ・ロビンが好きなのに、一番格好良いのはボンちゃんだと思っている)

わたしも、船長なんだ。
舵取りを間違えたくないなあ、と思う。

みんなが自分の人生の船長だ、というような言い回しがあるけれど、わたしは別にみんなが船長じゃなくてもいいと思う。
わたしは他人に指図されるのが嫌いなだけで、船長の元でチカラを発揮するタイプの人もいると思う。
ていうか、いないと船が回らん。

だからみんな、”正しい船”に乗って欲しい。
舵をどう取るかはご自由に、と思うけれど
どうか、誰かのせいにしすぎず、そこを”あなたの船”として
良い旅が続けがいいなあ。と思っている。

残念ながらわたしはの航海は、もうしばらく「許さないこと」と続けていくことになりそう。
もう少し経ったら、「ばかみたいな意地張ってたなあ」って、なかったことにしちゃうかもしれない。
でも、そのときの自分を責めないで
でも、いまのプライドだって忘れたくないから

ここに置いて、次の目的地を目指そうと思っている。



※now playing



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