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ポケモンGOと、コーヒーになりたい

ワケもなく、散歩をした。

しいていえば、ポケモンGOかな。
最近、ルートの攻略にハマっている。
指定された2箇所を結ぶ”ルート”を歩くと、ご褒美がもらえる。
なんだかそれは嬉しく、それだけで何かの理由になるような気がして

ルートは駅までの迂回で、10分と少しで終わった。
せっかくだから向こう側の百均に行ってマスクを買って、駅の反対側に行ったついでに時計の電池を替えてもらった。
時計が止まってから、もう3週間くらい経つのに、時計屋さんに行ったら「5分くらいでできますよ」って言われて驚いてたのに、2分後には「終わりましたよ」って言われて驚いて、もうわたしの情緒はグチャグチャだったのに、値段を聞いたら1000円(税込み)で、いろいろすべてが呆気なかった。
有り難くも勝手に「返してくれよ、わたしのセンチメンタル」みたいな気持ちになる。
こっちとしては、意を決した、みたいな気分だったのに。

腑抜けたわたしはお気に入りのカフェをスルーして、ドトールに寄ろうか少し考える。
「しっかり休む」と「サボっているだけ」の区別はいつも難しい。
主治医に「エネルギーはあるんだよなぁ」と言われたのが、今でもぼんやり響いている。
わたしの身体に持て余るエネルギーを抱え、結果的にサボっているような日々を送るわたしを、ポケモンGOとポケモンスリープは、いつでも肯定してくれる。
散歩をしても、たくさん寝ても褒めてくれるので有り難い。

今日は、頭痛がひどかったので帰ることにした。
世の中には、頭痛と戦いながら頑張っている人がたくさんいるのに、わたしは軟弱だなあと思う。
でもまあ、今日もポケモンは可愛いし、ジガルデ・セルも手に入ったからそれでいいか。
ポケモンGOは、色違いのイーブイを相棒にして、ニンフィアに進化させるために日々頑張っている。わたしの人生はそれでいい。だって、今日もポケモンは可愛い。

それからまたルートを逆に歩いたけれど、ジガルデ・セルは手に入らなかった。
もらえるのは、日に1回だけなのだろうか。
ググれば一発なのだろうけれど、もうしばらく「ジガルデ・セルの秘密」と同居しながら暮らそうと思う。
っていうか、セルを集めていれば、いつかプニちゃんに出会えると信じていてもいいのだろうか。たぶん、そうだと思うのだけれど。
よくわからないって、ちょっと面白い。


節約期間に入っているので、基本的には要るものしか買わないようにしているのだけれど、コンビ二の明かりに惹かれる。
一度過ぎ去って、振り返る。

ああ、やっぱりコーヒーを飲みたい。

コーヒーは家にある。たくさんある。
インスタントコーヒーも、ドリップコーヒーも、
冷蔵庫には缶コーヒーも、アイスコーヒーもある。

だけど、コーヒーを飲みたい。
”誰かが”淹れてくれたコーヒーを飲みたい。

それは、コンビニのマシンでも構わないし、誰かが淹れてくれるならばインスタントコーヒーでも構わなかった。
とにかくそういう気分だったので、コーヒーを買うことにした。
そういうコーヒーは、ひとくちでも充分な効果を発揮すると思ったのでSサイズにしようと決めていたのに、一瞬”S”の文字が見当たらず、何を血迷ったのか「M……いや、Lサイズで」と口走っていた。
そういえばわたしの人生って、ずっと血迷っている。

紙のカップは熱くて、カバンに忍ばせていたスリーブをつけようと思ったけれど、後の祭りだった。
カバンとコーヒーで塞がれた両手、
コーヒーを持った右手は、じんじんと熱くなる。


ああ、わたしは誰かの淹れたコーヒーになりたかったのかもしれない。


あるいは、誰かにコーヒーを淹れたかったのかもしれない。
そんなことを思った。
たぶん、そうなのだと思う。
わたしは、誰かの淹れたコーヒーになって、ほんのわずかに、幻でも刹那でも構わないから、誰かの右手を温めて、灯したかった。
夏ならばアイスコーヒーになって、「まあいいか」とか「なんとかなる」とか「生き返った」とか、そういう液体になりたかった。

ああ、わたしはコーヒーになりたかったんだ。と思ったら、すべて納得できた。


家に帰って、Lサイズのコーヒーを、スターバックスのタンブラーに移した。
トールサイズで、ぴったりだった。
飲んでみたら、あまりの普通さにびっくりした。
コンビニコーヒーって、もっと美味しいかと思っていたけれど、あれは友達と飲んでいたからだったり、夏のアイスコーヒーだったりしたからかなァ。
いや、ふつうに美味しいんだけどね。

まあ、実際はそんなもんだ。
今は、冷めて普通の味のコーヒーを飲んでいるけれど
やっぱりいまでも「わたしはコーヒーになりたいんだ」と思っているし、これからどんなコーヒーを飲んでも、それは変わらないような気がしている。



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