おつかい
あ! と思った。
同居人とスーパーに来て、すべての会計が終わったときだった。
ビールだの牛乳だの、重たいものを散々買い込んだあと、ということだ。
煙草を買い忘れた。
先に、煙草を買いに行かなければいけなかったのだ。
うちは、スーパーより煙草の自動販売機の方が遠い。
そして、同居人のお気に入りの煙草は、自動販売機にしか売っていないのだ。
さきほど煙草を切らしたと言っていたことを思い出し、
「買ってきてあげるよ」と告げた。
わたしの煙草はまだ残っているけど、自分の「いつものやつ」の方が良いだろうし
家まで戻って、そのあと買いに行くのもバカらしいし
牛乳と、500ml缶6本セットのビールを持って歩くのも、大変バカらしい。
わたしは、そんなに重たいものを持ちたくない。
「いいの?」と笑いながら、1000円札と小銭とタスポを渡されたあと、
「2箱と、残ったお金でジュース買ってきていいよ」と言われた。
おつかいである。
「よし、任せろ!」という勇ましい気持ちで、預かったものをポケットに詰め込み、歩き始めた。
小さい頃、うんと子供だったときだけど
「おつかい」をするのが夢だった。
ほんとうに、信じられないくらい田舎に住んでいたので
(隣の家に回覧板を置きに行ったら、玄関に猿が座っていたことがあった)
近所に、おつかいに行けるようなお店がなかったのだ。
あるのは、駄菓子屋と
ほんの少しの日用品を置いてあるお店だけだった。
そしてその2軒は、家から2分くらいのところにあったので、行ったとしても、おつかいという感覚ではなかった。
それ以外で、歩いて行けるお店はなかったので、わたしはおつかいをしたことがなかった。
一度だけ母が、日用品を置いてあるほうのお店に、マヨネーズを買いに行かせてくれたことがあった気がする。
なので、おつかいについては、ずっと初心者だ。
今でもどきどきする。
おとなになってから、友達の家に行く前に頼まれたものを買っていく。
というのが、今でも続く唯一のおつかいで
それもちょっと、どきどきしてしまう。
ちゃんと言われたものを買えるのか。
頼まれた品は、お店にあるのか。
ないときは、代替品を買うべきなのだろうか。
行き慣れたお店でも、少しそわそわしてしまう。
おつかいは、特別だ。
今日は、行き慣れた自販機までの道を、のそのそと歩く。
一緒に煙草を買ったことがあるので、たくさんある自販機のどのあたりに、その煙草があるかは知っている。
自分の記憶と同じ場所に例の煙草を見つけて、ほっとした。
頼まれたように、きちんと2箱。
買って、左右のポケットに押し込む。
「残ったお金でジュースを買っていい」というのも
また、純然たるおつかいをしている気持ちになって、良い気分だった。
残ったお金は、150円。
よし、あれが買える。
実は、目をつけていたけど、なかなか買う機会がなかった「狙っていたジュース」のボタンを押して
ポケットはもう煙草でいっぱいになってしまったので
缶ジュース1本
確かこれは炭酸だから、揺らさないように両手でかかえて、
来た道をもう一度、気をつけながら歩き始めた。
ちなみに、今日買ったジュースはこちら。
沖矢さんでした。(コナンキャラがランダムに印刷してあるジュース)

おつかいと散歩はたのしかったし、
なんとなく人の役に立てたような気持ちになるし、
冷蔵庫を開けると、沖矢さんが待っていてくれるので
今日も、なかなか楽しいおつかいをしたな、と思う。
photo by amano yasuhiro
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