明滅の先
あのときはどうかしていた、と思う。
でも、振り返ってみれば
「あのときはどうかしていた」というのを繰り返すことそれが
人生そのものかもしれない。と思う。
*
それはそれとして、やはりどうかしていたと思う。
患っている病のせいで、1週間ほど38度の熱を出し続けていた。
いま思い出しても、ふつうではない経験だったと思う。
遊びに行けたのは奇跡だった。
その高熱はいつ襲いかかってくるのか、検討がつかなかったから。
それでも12月の終わり、わたしは池袋にいた。
プラネタリウムを見て、ポケモンセンターに行った。
ポケモンセンターで、なにかどうしても欲しいものがあったと思うのだけれど、もう思い出せない。
もしかしたらいつもの「池袋に来たし、とりあえず寄っとく?」みたいなノリだったのかもしれない。
覚えているのは、ジラーチのことだった。
あの夜わたしは、ジラーチのマスコットキーホルダーを買ってもらった。
ぬいぐるみはもう部屋にたくさんある。
「買ってあげるよ」と言われたけど、そうすべきかもわからなかった。
カバンに付けたら落としちゃうかもしれない。
きっと落とす。そしてそれはとても悲しい。
でも、ジラーチが気になっていた。
星を抱えたジラーチ。
そうして、最後には買ってもらった。
それは星と七夕を模したポケモンで、「ねがいごとポケモン」と分類されている。
わたしはあの夜、ジラーチに願ったんだ。
どうか、身体が元気に動くようになりますように。
もとに戻る、という言葉が適切かもわからない。
病が消え去っても、あのころよりひとつ年齢を重ねてしまったわけだし
元々がどれくらい健康で、動ける身体だったか。
それが年齢に見合って適切だったのか。
もうなにもわからない。
でも、すがるように
ジラーチに、願っていた。
*
冬と春を越えて、梅雨が訪れた夜
わたしは、カバンにつけたジラーチをぎゅっと握っていた。
まだ落としたりせず、ずっとカバンにくっついている。
「かわいいね」なんて言ってもらえてよかったね。
あれから、身体はもう一度ぐんと悪くなった。
また1週間ほど仕事に行けない日々を過ごして、いまに至っている。
今日はようやく、久し振りに友達に会ってきたところ。
ジラーチ、これからも頼むよ。
身体、よくなるといいね。
*
*
*
身体がよくなったらどうしよう、と時々思う。
これは今までの経験則で、「元気になったらアレコレしよう」と考えないようにしている。
いままで何度も前向きな妄想をして、結局元気にはなれなくて、「やっぱりむりじゃねぇか」と紫煙と一緒に吐き出してきた。
そんな思いはもうしたくない。
「○○になったらアレコレしよう」ってときには、自分の手で実現可能な目標を入れておくのがいいと思う。
*
身体が元気だったら、何を願っただろう。
今日は、そんなことを考えている。
*
そして、答えがないことに気づいた。
「気づいたんだ なぜ迷うか 地図がないからじゃない オレに無いのは目的地なんだ」
いまでも、竹本くんの言葉にぐっとくる。
十余年経っても、きっちりと首を絞めてくる。
今宵はまた、今までにない強い力で握られたと思う。
たぶん、手を。もしくは、腕を
そしてそれは”どこか”を経て
目的地の存在を、明滅させていたような気がしている。
*
いまはもう少し眠ろう、と思う。
焦ったり調子に乗ったりを繰り返して、身体を悪くさせたことにもう気づいている。
霧はもうだいぶ薄くなったのに、晴れない。
晴れなければ走れない身体なのだ。
だからいまは、眠る。
でもあまり遠くならない未来で
わたしは、ジラーチに次の願いごとをしようと思っている。
それは願いごとではなくて、他愛のないおしゃべりの果てにあるのかもしれない。
掲げたあとにも、少しずつ濃さを変えてゆくものかもしれない。
言葉にすると安っぽく、曖昧なものになるかもしれない。
それでもわたしは
目的地に、印をつけたい思っている。
※now playing
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