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うっとりと、眠りと

がたがた、と音がしたあと
がちゃり、とドアが開く。
午前一時。

のそのそと身体を起こして、右手を上げる。
「おかえり」と言うべきなのはわかっているけれど、声が出ない。
また、ソファーで眠っていたようだ。

……眠っていたようだ、なんて。
ずいぶん他人事みたいな言い方はやめたほうがいい。

ソファーで眠っていた。
だって、眠かったから、
たぶん、10時半くらいから。

わたしの半分は、昼寝でできていると思う。

だから、「やっちまったなあ」なんて、いちいち思わない。
わたしは昼寝を愛し
アラームを強く憎んでいる。
ただ、それだけのことだった。

ようやく「おかえり」と声を上げ、
いくつか言葉を交わしたあとに、コンタクトレンズを外した。

眠いときと
おなかのすいているときの不機嫌さを、家だとうまく隠せない。
もやもやした頭で、おやすみを告げずにベッドに倒れた。

少しずつ、目が覚めてゆくのがわかる。

昼寝のあと、そういう夜がある。
そんなことは、百年も前から知っている。
「昼寝すると、夜寝れなくなるよ〜」ってやつ。

いろんなことを頭がめぐって、
そして何かが気がかりになって、スマートフォンを覗き込む。
あ、やっぱりアレも、と
どうして電気を消して部屋って、いろんなことを思い出すんだろう。

5分を2度、繰り返せば10分
10分を2度で、20分。
なぜだか、時計の針はぐんぐんと進んでゆく。

朝のアラームまで、あと3時間半。

「3時間半しかない」と思っていた。
ついこのあいだまで。
どうしよう、3時間半しか寝れない。
まあさっきまで昼寝してたしいいか、とも思うけれど、昼寝は別腹なのだ。
夜だってまとめて寝るべきだ。

“寝るべき”?
わたしは問い返した。

どうして寝るべきなんだろうと思ったら、
一般的に言えば、「朝起きるのがつらいから」が挙がるだろう。
でもこれは、わたしには関係ない。
わたしは、10分の昼寝だって、10時間の睡眠だって、起きるときは等しくつらい。

じゃあ、あとはなんだろう。
仕事中に眠くなる?
そうしたら、トイレで少し目を閉じて、冷たい水で手を洗って、エスカップを飲めばいい。
あとは、隣の席の子に話しかけたりする。
少しつらいけど、なんとかなる。
あと、急ぎの仕事が発生したり、忙しいときって不思議と眠くない。
だから、仕事中に眠いときは、ぼやぼやしていてもなんとかなる。と思う。

で、もし朝寝坊してしまっても
今の会社には、出勤時間までにタイムカードを押す、という風習がないので、問題ない。
「出勤」と書いてある人が、何時に来るかみんなが知らない。
いつも何時くらいにくる、みたいなのはあるけれど。
だから、10分や20分
もしかしたら1時間くらいは遅くいっても、誰も気にしないかもしれない。

そしてもし、
もし、何時間も寝過ごしてしまったら…

「すいません!!!寝坊しました!!!」

先日、オフィスに響いた声を思い出す。
ちょうど、朝の全体会議の日に不在で、何度か電話をかけた。
電話をかけた理由も「寝てるならいいいけど、事故ならやばいから電話しとこ」っていう感じで
結果、寝ていたというはなし。

「事故じゃなくてよかったね」と言って、このはなしは終わった。

いろいろ考えたけれど、
睡眠時間が短くて、直接的に困ることってあんまりなかった。

朝はどうせ眠いし、
少し遅刻しても気づかれないし、
最悪、半日寝過ごしてしまっても、笑って許される。

じゃあ、それじゃあ

夏用の、お気に入りのシーツに寝返りを打つ。
ユニクロの、エアリズムシーツ。
さらさらしていて気持ちがいい。
ふたつある枕のうちの、ひとつを強く抱きしめる。
(枕ふたつ暮らしを推奨しているのだけれど、このはなしはまた今度)

また寝返りを打つ。
そして、うっとりする。

ああ、もし眠れなかったとしても
ベッドの上でごろごろする時間が、あと3時間半も続くのか。

それは、とろけるほど甘い夢のようだった。
ベッドの上に、合法的に3時間半もいていいだなんて…

わたしの半分は、昼寝でできている。
これからもアラームを憎み、ソファーに沈みながら暮らすだろう。

そして眠れない夜には、うっとりと寝返りを打つ。

ああ、なんとすばらしい暮らしだろうか。

このエッセイは、朝に書いている。
今日も無事に過ごして、へらりと笑って、はやくうとうとしたいなあ。などと思っている。





※now playing




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