うっとりと、眠りと
がたがた、と音がしたあと
がちゃり、とドアが開く。
午前一時。
のそのそと身体を起こして、右手を上げる。
「おかえり」と言うべきなのはわかっているけれど、声が出ない。
また、ソファーで眠っていたようだ。
……眠っていたようだ、なんて。
ずいぶん他人事みたいな言い方はやめたほうがいい。
ソファーで眠っていた。
だって、眠かったから、
たぶん、10時半くらいから。
*
わたしの半分は、昼寝でできていると思う。
だから、「やっちまったなあ」なんて、いちいち思わない。
わたしは昼寝を愛し
アラームを強く憎んでいる。
ただ、それだけのことだった。
*
ようやく「おかえり」と声を上げ、
いくつか言葉を交わしたあとに、コンタクトレンズを外した。
眠いときと
おなかのすいているときの不機嫌さを、家だとうまく隠せない。
もやもやした頭で、おやすみを告げずにベッドに倒れた。
*
少しずつ、目が覚めてゆくのがわかる。
昼寝のあと、そういう夜がある。
そんなことは、百年も前から知っている。
「昼寝すると、夜寝れなくなるよ〜」ってやつ。
いろんなことを頭がめぐって、
そして何かが気がかりになって、スマートフォンを覗き込む。
あ、やっぱりアレも、と
どうして電気を消して部屋って、いろんなことを思い出すんだろう。
5分を2度、繰り返せば10分
10分を2度で、20分。
なぜだか、時計の針はぐんぐんと進んでゆく。
朝のアラームまで、あと3時間半。
*
「3時間半しかない」と思っていた。
ついこのあいだまで。
どうしよう、3時間半しか寝れない。
まあさっきまで昼寝してたしいいか、とも思うけれど、昼寝は別腹なのだ。
夜だってまとめて寝るべきだ。
“寝るべき”?
わたしは問い返した。
どうして寝るべきなんだろうと思ったら、
一般的に言えば、「朝起きるのがつらいから」が挙がるだろう。
でもこれは、わたしには関係ない。
わたしは、10分の昼寝だって、10時間の睡眠だって、起きるときは等しくつらい。
じゃあ、あとはなんだろう。
仕事中に眠くなる?
そうしたら、トイレで少し目を閉じて、冷たい水で手を洗って、エスカップを飲めばいい。
あとは、隣の席の子に話しかけたりする。
少しつらいけど、なんとかなる。
あと、急ぎの仕事が発生したり、忙しいときって不思議と眠くない。
だから、仕事中に眠いときは、ぼやぼやしていてもなんとかなる。と思う。
で、もし朝寝坊してしまっても
今の会社には、出勤時間までにタイムカードを押す、という風習がないので、問題ない。
「出勤」と書いてある人が、何時に来るかみんなが知らない。
いつも何時くらいにくる、みたいなのはあるけれど。
だから、10分や20分
もしかしたら1時間くらいは遅くいっても、誰も気にしないかもしれない。
そしてもし、
もし、何時間も寝過ごしてしまったら…
「すいません!!!寝坊しました!!!」
先日、オフィスに響いた声を思い出す。
ちょうど、朝の全体会議の日に不在で、何度か電話をかけた。
電話をかけた理由も「寝てるならいいいけど、事故ならやばいから電話しとこ」っていう感じで
結果、寝ていたというはなし。
「事故じゃなくてよかったね」と言って、このはなしは終わった。
*
いろいろ考えたけれど、
睡眠時間が短くて、直接的に困ることってあんまりなかった。
朝はどうせ眠いし、
少し遅刻しても気づかれないし、
最悪、半日寝過ごしてしまっても、笑って許される。
じゃあ、それじゃあ
*
夏用の、お気に入りのシーツに寝返りを打つ。
ユニクロの、エアリズムシーツ。
さらさらしていて気持ちがいい。
ふたつある枕のうちの、ひとつを強く抱きしめる。
(枕ふたつ暮らしを推奨しているのだけれど、このはなしはまた今度)
また寝返りを打つ。
そして、うっとりする。
ああ、もし眠れなかったとしても
ベッドの上でごろごろする時間が、あと3時間半も続くのか。
それは、とろけるほど甘い夢のようだった。
ベッドの上に、合法的に3時間半もいていいだなんて…
*
わたしの半分は、昼寝でできている。
これからもアラームを憎み、ソファーに沈みながら暮らすだろう。
そして眠れない夜には、うっとりと寝返りを打つ。
ああ、なんとすばらしい暮らしだろうか。
このエッセイは、朝に書いている。
今日も無事に過ごして、へらりと笑って、はやくうとうとしたいなあ。などと思っている。
※now playing
いいなと思ったら応援しよう!
スタバに行きます。500円以上のサポートで、ご希望の方には郵便でお手紙のお届けも◎